UGCは、Instagram・Xだけではない!今熱い”テキストレビュー”の重要性

村岡 弥真人

ユーザーの手によって生成されたコンテンツの総称である「UGC」。これまでUGCと言えば、InstagramやX(旧Twitter)などSNS上に投稿されたコンテンツが注目を集めていましたが、昨今ECサイトやレビューサイトなどに投稿されるテキストレビューの再評価が進んでいます。今回は、テキストレビューが再評価される理由や、実際にEC事業者でどのような活用が進んでいるのかについて解説します。

UGCの進化とテキストレビューの再評価

かねてより、ユーザーによるクチコミは購買に与える影響が大きい要素であるとして、企業から重視されてきました。Amazonや楽天などのECモールでは古くからレビュー機能が搭載されており、ユーザーの購入意欲の促進に大きな影響を与えると言われています。

SNSが台頭してからは、InstagramやXなどSNSに投稿されるUGCに注目が集まり、EC企業のデジタルマーケティングにおいて重要な役割を担ってきました。SNS上で生活者やインフルエンサーが投稿したUGCが拡散されることで商品の「認知向上」につながったり、生活者が商品に関する情報をSNSで検索するようになったことからUGCが「購入の意思決定」につながったりと、消費行動の中で大切な情報源となっています。

我々が提供するUGC活用サービス「Letro」においても、2016年のローンチ当初からInstagram上に投稿されたUGCの活用を支援してきました。ECサイトやLPにUGCを掲載することで、CVRが平均して1.2倍改善していることからも、Instagram上に投稿されたUGCが購買の意思決定に大きな影響を与えることは明らかとなっています。ところが、2023年ごろからUGC活用のトレンドに変化が起き、EC企業が自社で収集したテキストレビューが再評価されるようになってきました。

2022年8月にLetroが実施した「生活者のUGCに対する意識調査 2022」では、10~60代の男女1100人を対象に「商品やサービスの購入時にどの程度UGCを信頼するか」というアンケート調査したところ、64.6%の方が「UGCを信頼する」と回答しました。さらに、購入決定に最も影響を与えるUGCの形式について聞いたところ、49.4%の方が「テキスト」と答えたことから、生活者もテキストレビューを重視していることが明らかとなっています。

2021年頃から「TikTok売れ」という言葉が注目されているように、生活者が商品と出会う場面においては「写真や動画」などビジュアルがきっかけとなる傾向にありますが、実際に購入を検討する際にはテキスト情報の影響力が高く、「商品との出会いのきっかけは写真や動画でも、いざ購入しようというときにはテキストで情報を読みたい」という消費者心理がうかがえます。

また、テキストレビューが再度見直されているもう一つの理由に「汎用性の高さ」があります。写真や動画などのビジュアルを重視したUGCの場合、食品や化粧品、ファッションアイテムといった視覚的に魅力的な商品に有効です。また、こうした商品は、生活者がSNSへUGCを投稿するハードルも低いこともポイントとなります。

一方で、健康食品やサプリメント、薄毛・ニキビ・体臭などの改善にアプローチする「コンプレックス商材」といった実用性を重視する商品については、個人の悩みやセンシティブな問題に関連していることからもSNSへの投稿のハードルが高い傾向にあります。さらに、視覚的情報だけでは商品の魅力や、商品を使用したことによる変化や効果を十分に伝えることが難しいことからもテキストレビューが評価されているのです。

EC企業がテキストレビュー活用で押さえるべきポイント

1. テキストレビューが生成される仕組みを構築する
生活者の購買意欲を後押しするためには、商品利用体験を自分事化できるような「具体性がありわかりやすいUGC」が求められています。そのため多様化する生活者に対して、個々人にマッチしたテキストレビューが閲覧できる状態を作る必要があり、多種多様なテキストレビューが生成されるための仕組みの構築が必須です。こうした仕組みを整えるには、次の2つの仕組みが有効です。

①ギフティングキャンペーン
商品サンプルの配布などといったギフティングキャンペーンは、テキストレビューの生成に大変有効です。インセンティブを設けることでより効率的にUGC生成を促すことができるため、「商品発売に合わせてテキストレビューを大量に生成したい」といった方におススメです。SNS上にUGCの投稿を依頼する際には、重視すべきは「質」となりますので、投稿者のフォロワー数にとらわれすぎないよう気をつけましょう。また、景品表示法に違反しないように依頼の仕方や表示方法に十分に注意しましょう。

②CRMで既存顧客にUGC投稿を依頼
既存顧客へのアプローチも有効です。CRMを活用して「購入者に対してn日後に投稿の依頼をする」などのテキストレビューが生成される機会を設計することで半永久的に自動生成することができます。また、「初回購入者のUGC」「長期愛用者のUGC」など、生成したいテキストレビューに合わせて投稿の依頼先を変えるなど、緻密なCRM設計も欠かせません。

2.テキストレビューの成果を効果計測する
テキストレビューは「とりあえず掲載しておけばいい」というものではありません。サイトのどの位置に掲載するのか、どのテキストレビューを選ぶのかによって成果が変わってきます。そのため、数値を計測してテキストレビューの成果を把握し、最適化していくことが大切です。

こうした打ち手を実現するには、まず数値計測のための仕組み作りが欠かせません。無料で利用できるA/Bテストツールは複数存在しますので、自社のノウハウやリソースに合わせて、適切なツールを選択すると良いでしょう。

3. 成果に合わせてテキストレビューの運用をする
運用型広告と同様、テキストレビューについても運用を行うことで獲得成果を維持・向上させることができます。前述のとおり単にテキストレビューをサイトなどに掲載するだけでは購買を後押しすることは難しいと言えます。生活者が何を求めているのかを想定し、そのインサイトに合致する流れの中で適切なUGCを掲載し、成果に合わせて最適化し続けることが必要です。

Letroの実績からも、UGCを更新しなかった場合、時間の経過とともに改善率が低下していくことが明らかとなっています。3社の平均CVRを調査した際に、掲載初月を1とした場合、3ヵ月目には0.7倍にまで低下していました。一方で、UGCの運用を行うことで8割以上のEC事業者がCVR1.2倍以上の改善に成功しています。

まとめ

今回は、テキストレビューの重要性について解説しました。Letroの支援実績からも、これまでSNS上に投稿されたUGCの活用にとどまっていた企業が、テキストレビューに着手することでCVRが大きく改善した実績が多数存在します。「UGC=SNS投稿」という考えから脱却し、自社の商品・サービスの特性やターゲットを見極めて最適なUGCを選択してみてください。次回は、UGC活用の成果維持・向上には欠かせない「UGCの運用法」について解説します。


著者

村岡 弥真人

大手ガラスメーカー勤務を経て2012年にアライドアーキテクツ入社。2014年よりSNS広告に特化した広告代理事業を立ち上げ、自社最大の事業まで事業拡大を行う。2016年にUGC Centric Creative Platform "Letro"の提供を開始、Facebook及びInstagramのオフィシャルパートナーに。2017年より自社プロダクト事業全体の統括を行い、ベトナムの開発子会社2社の経営も兼任。2018年CPOに就任。2021年取締役就任。