単純な検索機能・レコメンド機能ではない商品検索、つまり商品提案をいかにECに実装できるか

山崎 徳之

今回は前回の続きで、「単純な検索機能・レコメンド機能ではない商品検索、つまり商品提案をいかにECに実装できるか」について考えてみます。

そもそも商品提案というのはなんでしょうか。まずここについて考える必要があります。それは、顕在か潜在かを問わず、「ユーザーのニーズにマッチする商品を提案すること」です。顕在というのは「ユーザーがこれを買いたいと認識しているもの」で、潜在というのは「ユーザーは気づいていないけれど知ったら買いたいと思うもの」です。

つまり商品提案に必要なことは、ユーザーのニーズを探ることであるといえます。ユーザーのニーズがわかれば、あとは商品知識があれば良い商品提案はできるといえます。商品知識が薄いマーチャントというのはそもそも論外です。

さて店舗の接客の場合、ユーザーのニーズのヒントというのは主に会話から得られます。また過去の買い物からわかることもあります。初めて行った店舗では通り一遍の無難な商品を提案されることが多いですし、馴染みの店舗ではよりニッチで自分のニーズのツボをついた商品を提案されることが多いでしょう。

ではECにおいてはなにがユーザーのニーズをキャッチするためのヒントになるでしょうか。端的にいってしまえばそれは「ユーザーからの入力」です。ただ一口にユーザーからの入力といっても、それはページ遷移であったり、購入履歴であったり、検索条件であったりします。サインアップしたときのデモグラ情報などもあるかもしれませんし、サイトに流入したときのリファラの情報かもしれません。これらは基本的には全て重要です。使えるものは使えるだけ使うほうが良いと言えます。

ただし、その使い方を間違えると、おかしな商品提案になってしまうこともあり得るので注意が必要です。例えばページ遷移や商品詳細ページへのアクセスを、購入履歴と同等に扱ったとしたら、それはユーザーのニーズの把握という意味では適切とはいえないということはすぐにわかります。商品詳細ページを表示したのに購入しなかった商品は、むしろネガティブな評価をするべきケースもあるかもしれません。

いずれにしても、正しく使うのであれば、ユーザーからの入力というのは強力な情報源です。そしてその中でも比較的重要なのが、購入履歴と検索条件の2つです。まず購入履歴というのは、以前にそれを買ったのですから、ユーザーとしてはかなりポジティブな行動の結果であると言えます。

もちろんそれが古い履歴であれば今とニーズは違っている可能性はありますし、失敗の買い物であった可能性もありますが、それでもページ遷移に比べればかなり重要な情報源です。Amazonにおけるレコメンド、「Aを買っている人はBも買っている」という機能が特に当初うまく機能したのは、それだけ購入履歴が重要な情報であったためです。そしてAmazonの場合、当初は販売している品目が主に本やCDやDVDでした。いまは洋服や食品も扱っていますが、本やCDやDVDというのは「Aを買っている人はBも買っている」というロジックがハマりやすいのです。

世の中のたいていのレコメンドエンジンは、単純な相関ロジックだけを搭載しているだけであったりもしますが、それでも商品カテゴリによってはうまく機能することもあるのはそれだけ購入履歴というのが役立つ情報であることがあるためです。そしてそれと並ぶ、もしくはそれを上回るくらい重要な情報が、検索条件です。

検索条件こそ、「その時の」ユーザーのニーズを把握するためにもっとも貴重な情報なのです。店舗接客で店員に伝える要望というのは、ECにおいては検索条件の入力そのものであるといえます。

次回は、この「検索条件からユーザーニーズを把握する」というECにおける商品提案の本質について、具体的な例を挙げながら考えてみたいと思います。


著者

山崎 徳之 (Noriyuki Yamazaki )

青山学院大学卒業後、アスキー、So-netなどでネットワーク・サーバエンジニアを経験。オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)のデータホテルを構築・運営の後、海外においてVoIPベンチャーを創業。2006年6月に株式会社ゼロスタートコミュニケーションズ(現株式会社ゼロスタート)を設立、代表取締役就任(現任)。EC向け商品検索やレコメンドエンジンの「ZERO ZONE」シリーズを開発・販売している。

http://zero-start.jp/