【連載コラム第1回】媒体技術で考えるネット広告 〜2016年ネット広告のトレンドキーワードとクリエイティブ戦略〜

安藤達也

【連載コラム】2016年ネット広告のトレンドキーワードとクリエイティブ戦略
(第1回)媒体技術で考えるネット広告

媒体のテクノロジーによる広告クリエイティブの評価

2007年にサイバーエージェントに入社して以来、広告代理事業部にて、様々な業界のプロモーション戦略の立案とクリエイティブワークを経験してきましたが、「インターネット広告において、企業とユーザーの間にある媒体のテクノロジー(アルゴリズム)の存在を無視することはできない」と痛感してきました。特に、近年拡大する運用型広告では、広告クリエイティブの質を媒体に評価されるため、その評価基準を無視するとほとんど広告が配信されないというような状態になってしまいます。例えるなら、想い人(ユーザー)にラブレターを手渡したいのに、媒体というおせっかいな人が間に入ってきて「あなたのラブレターは質が悪いから、渡さないように配慮しておいたよ!」という具合です。

媒体はたいてい、とっても賢い仲人

しかし、それぞれの媒体で考え方(思想)は違うものの、たいていの場合、実は彼らはとても賢くて親切な存在です。届けたい人ではない人に間違ってラブレターを出してしまったり、その文章やデザインがまったく響かないものだったりするのを、できるだけ早く、場合によっては未然に防いでくれるのです。それらの判断はすべてテクノロジー(アルゴリズム)をもとに行われているので、その数理的・統計的な判断の基準を理解し、技術特性を捉えた上でラブレターを書く必要があるのです。ちゃんとラブレターを届けて、その恋を成功させるには、まず優秀な仲人と仲良くならないといけないということです。ユーザーに「どこで、何を、どう伝えるか」を考えるのは広告プランニングの基本ですが、「どこで」というのは、その面の特性だけでなく、その判断のアルゴリズムを捉えていく必要があるということです。

媒体×技術×業界を知り、ユーザーを知り、出会い方を考える

媒体やその技術、業界を深く理解した上で、ユーザーを考え、出会い方を考える。これがネット広告の基本です。特にダイレクトマーケティングでは、その媒体技術を捉えることは大前提と言って良いと思います。
サイバーエージェントには、様々な媒体、技術の研究者や業界(業種)のエキスパートがたくさんいます。このコラムでは数回にわたり、今年注目されているネット広告のトレンドキーワードについて、最新の媒体技術の考察や業界ナレッジを交えながら、具体的な出会い方(クリエイティブ)についてお伝えしていきたいと思っています。

2016年 ネット広告のトレンド

2015年のネット広告のトレンドを大まかとまとめると、特に「インフィード広告」、「動画広告」、「データフィード広告」が注目された1年だったと思います。
近年のキュレーションメディアやSNSの拡大に加え、Yahoo! JAPANのTOP画面のUI変更とインフィード広告のリリース。また、Netflixの日本参入やYouTubeの有料サービス開始など、パブリッシャー側のサービス拡大の動きと、Twitter やInstagramなどのSNSでも動画投稿が可能になったことによる動画視聴機会の増加。そして、Criteoの動的リターゲティング広告やGoogleの商品リスト広告などのデータフィード型の広告商品への注目度の高まりなどが挙げられます。

2016年のネット広告のトレンドは、これら2015年の成長トレンドの延長線上にあるように思います。すなわち、「インフィード広告」「動画広告」「データ活用」です。大きくは、スマホデバイスの定着化と運用型広告の拡大という潮流の中で生まれている変化と捉えることもできます。そして、さらに今年以降加速していくと考えられるのが「グローバル対応」「ブランディング」の流れではないでしょうか。

第2回以降では、これらの5つのトレンドキーワードについて、ECという業界を掛け合わせる形で、できる限り具体的にお話したいと思います。


著者

安藤達也 (Tatsuya Ando)

株式会社 サイバーエージェント
クリエイティブソリューション局 局長
1983年 兵庫県生まれ。同志社大学卒。  2007年 株式会社サイバーエージェントに入社。インターネット広告事業本部クリエイティブ局にてコピーライター、プランナーとして活躍後、同社大阪オフィスのクリエイティブテクノロジー局の立ち上げに従事。国内外の幅広いクライアントのWebマーケティング戦略の立案と実行を担当。その後、クリエイティブソリューション局局長に就任。現在に至る。