今、EC運営に悩んでいる時に実践したいただ1つのこと

大城 浩司

去る3月18日に、弊社、ICA株式会社のECに集客するサービス「メディアを今すぐはじめるならQuickMedia」の開始について「ECのミカタ」さんに取り上げて頂きました。

そのサービスを通じて私達が提案するメディアECは、プッシュ型のマーケティングで飽和になった時代を切り抜ける大きな一手です。

今回いただいたコラム執筆の機会では、複数回に渡り私とリアル店舗・ ECの関わりの歴史から、私がなぜこのサービスを始めたのか、また、なぜ今の時代「メディアEC」が必要なのかをお話ししていきたいと思います。

私は2001年6月に楽天株式会社様に入社させて頂いて、以降2013年6月までの約12年間、楽天株式会社様で主に楽天市場、Koboなどのサービスを手掛けてまいりました。特に楽天市場様での12年間においては、インテリア日用品雑貨、家電エンタメ、グルメ、ファッションなど全カテゴリーの本部長を歴任しながら、商品カテゴリー強化のため「あす楽」「中古事業」「商品価格ナビ」などの新サービスや現在のスーパーSALEの原型である買回り企画、「お買い物マラソン」の立ち上げを担当させて頂きました。
   
私がどのような経緯を経て、このようなEC戦略立案や事業成長実現に至ったのか、第1回目では、私のこれまでの経歴と、このサービスを始めるに至ったきっかけについてお話ししたいと思います。
   
私は沖縄県出身です。中継貿易で栄えた琉球王国の流れをひいていたかは定かではありませんが、、幼少のころから何故か「沖縄はもっと栄えるはず」「俺が何とかする」という気持ちがあり、小学生から新聞配達をしながら新聞を読み漁り、世の中の流れというものをつかんでいたように思います。

「商売が世界を平和にする!」という信念のようなものを持っていた私は、大学卒業後は貿易会社への就職を目指していましたが、まずはお客様に近い「小売で修行だ!」と考え、大手ショッピグセンターに就職し、商品出しや棚割り、経理、お店の経営などに携わりました。

リストラに倒産の危機、苦しみ抜いたリアル店舗時代

入社直後は毎日品出しや接客に追われ、店内を走り回っていた私ですが、「常に人の先を行き、世の中を驚かせてやろう」などと考えているなか、問屋さんから「日本一安いビデオテープ5本パック」の商談を持ちかけられ、新入社員の私が勢い余って2万パックも仕入れてしまい、倉庫は山のようなビデオデープで溢れかえりました。呆れ返った当時の私の上司に激昂されたことを、昨日のことに憶えています。

「在庫を減らさないとまずい!」

その一心で、大手カメラ系量販店を始めとする他店の価格調査から日々の販売データを分析し、1ヶ月で売り切るプライスと棚割りを考え、当時配属された店舗の全て棚のスペースを確保しビデオテープで埋め尽くし、なんとか2ヶ月で売り切ることができましたが、そのような仕入れの失敗から始まった小売デビューでした。

そういった現場を駆け巡り、売上を追いかけた20代でしたが、程なく昇格して迎えた、売場面積5,000坪、年商400億円の店舗の責任者の時代は従業員・アルバイトの教育から交差比率(粗利益率×商品回転率)や毎月の損益に苦しんだ時代でした。

大安売り中心のビジネスを営んでいくうちに「安売りだけの商売は長く続かない。商圏を無限に開拓できる場所が欲しい」そう痛感し、楽天株式会社様へ、そしてECの世界に入ったのでした。

しかしここで学んだことは大きく、販売データの分析や競合調査の重要性、ひたすらリアルでお客様の流れや棚割りを考え続けた12年間は、その後ECの世界でUI設計やジャンル戦略を進める上で大きく生きてきました。

楽天様との出会いにより大きく成長できた

楽天株式会社様へは、2001年6月、まだ中目黒に本社があった時代に入社しました。現在は1万人を超える企業様ですが、入社当時の私でちょうど200番台の社員番号だったと記憶しております。店舗様にご出店を提案する営業開発部を務めたあと、2001年10月よりECコンサルタントとして従事させて頂きました。当時の楽天様は会社としてサーバーに投資する資金的な余裕が少なく、夜中にお買い物ができなくなっている状態を、店舗様へお詫びを申し上げる毎日でした。

それから多くの店舗様から多くのお叱りを頂いた従量課金導入という大きな変化を経て、サーバーへの負荷が軽減された結果、お買い物が中断されることは無くなりました。こうした努力の結果、安心して店舗運営をして頂ける環境が整い、お客様が快適にお買い物できるようになった事が、現在の楽天市場ができるターニングポイントだったように感じます。

楽天株式会社様入社当時、EC初心者だった私は、研修時にHTMLタグの右も左も分からず、当時経営陣の方々を始めとする大勢の前でのRMSを使ってのデモ店舗発表会では、リンクタグのリンクミスにより、全然違うサンプルページに飛んでしまったことで、赤っ恥をかいた事も今では良い思い出です。

その後、ECCとしてインテリア雑貨、総合通販、スポーツ、オートパーツなどの本部長を勤めたカテゴリーは、売上がゼロに近かったペットなどインテリア雑貨、花・ガーデニングジャンルにおいて、各業界規模の売上シェア5%を取るという目標に基づいたMD戦略の展開を実行いたしました。現在でも強豪他社ネットサービスを上回るマーケットに成長していると思います。

その中でも記憶に残っているのはフラワージャンルの施策です。現在では数多くの店舗様に支持頂いている母の日特集を売上規模が小さいころから、大手ショッピングモールさんや大手コンビニさんに対抗戦略をたて、日本一の「母の日」花関連の販売スポットに育成できたことは当時の大きな自信になりました。

その後、商品カテゴリー強化のために、家電エンタメ、グルメ、ファッションなどすべてのカテゴリーの本部長を歴任した後、「あす楽」「中古事業」「商品価格ナビ」などの新サービスを立ち上げ、現在のスーパーSALEの原型である「お買い物マラソン」企画を立ち上げ、買い回り施策が当たり当時の流通総額ギネスを更新した時には、その新しい可能性に、仲間と一緒になって興奮したことは今でも記憶に残っています。

程なくして、楽天市場事業から離れ、電子書籍koboを担当した時に、ネットサービスの次のフェーズはコンテンツ(書籍に限らず)が世の中を激変させると強く痛感しました。これまでのECや物販にはとらわれない、そして世界と店舗さんと共に戦えるメディアサービスを本格的に立ち上げたいと考えた私は、後ろ髪ひかれる思いで楽天株式会社様での仕事にピリオドを打つ事を決意しました。

すでに世界は「メディアEC」のスタイルが当たり前!

そんな2013年夏、次世代のネットサービス・ECの模索をしていた時に運命的な出会いがありました。それは、かわいい女性が時刻をお知らせする「美人時計」のサービスを展開されていた早 剛史氏(弊社社外取締役)との出会いです。

その早氏と過去から現在までのメディアの流れなどをディスカッションしていた所、BuzzFeedなどのキュレーションメディア、まとめニュースサイトが台頭しており、現在女性に絶大なる人気の『mery』を知りました。当時、『mery』は概ね月間1,000万PV程のサイトであり、メディアとして集客をしつつ広告収益を上げ、且つメディア記事の流れでEC需要を取り込んでおりました。一般的なメディアにバーナー広告などでのECへ流し込む集客方法と異なり、コラム記事の流れでシームレスにECに繋げていく『mery』のサービスモデルを知った私に衝撃が走りました。

キュレーション型メディアに関わらず、ユーザー興味関心の強いコンテンツを入口に集客しサービスに繋げていく。次世代のECはこのメディア型ECの形になる!と楽天市場に入社したとき以上に興奮したのを今でも覚えております。

当時のEC事業者はメールマガジンにより顧客と対話しリスト獲得で潜在顧客を囲い込みを行っておりましたが、その成功パターンが私の中で変わる瞬間でした。※「メルマガの終焉?」については、次回以降に詳しく記載いたします。

また、海外に目をむけるとアメリカでは『thrillist』( https://www.thrillist.com/ )などのamazonやebayとはポジションが違い、メディアを主体とした「広告販売」プラス「ECサービス」が既に立ち上がっており、最近注目を集めている中国に目を向けると『RED』( http://www.xiaohongshu.com/ )などのユーザー参加型のキュレーション型メディアEC、越境ECのプラットフォームが大きな成果を上げていくのでした。

国内、国外の事例から確信を得た私は、メディアの立ち上げによって次世代のあたらしいECができる!そう思い、2013年夏、「メディアEC」の未来を確信しました。


著者

大城 浩司 (Koji Ohshiro)

沖縄生まれ。4百億、5千坪のリアル店舗を担当後、2001年に楽天に入社。営業本部長としインテリア雑貨事業などを数千億円の規模に育成後、家電事業の立直し、あす楽・中古事業などの新サービスの創設など楽天市場の発展に貢献。退社後、2014年ICA.incを創立。2016年5月10日、新会社株式会社KABUKI(カブキ)にて出店料無料のメディアecモール『kabukiペディア』を発表。

・kabukiペディア_HP:http://kabukipedir.com/
・QuickMedia_HP: http://quickmedia.jp/