【第三回】ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ
【テラオ株式会社 ヨナーイ佐々木のEC内緒話~どん底から這い上がった男の成功運営ノウハウ】
オリジナルの日本酒と型番の自転車グッズ。どちらでも無駄なお金をかけずに成果を上げた著者のノウハウを全10回でお届けします。
今回は月商100万円~500万円時代のお話。そして、月に単独で5000万円の売上を上げたヒット商品の開発秘話です。
☆バックナンバー
・第一回「27歳職歴なし無職(借金有り)からの出発」
https://ecnomikata.com/column/9195/
・第二回「パソコンを持たないネットショップ店長誕生」
https://ecnomikata.com/column/9380/
・第三回「思わぬヒット商品、誕生。」
https://ecnomikata.com/column/9596/
・第四回「強みを生かすとヒットが生まれる。」
https://ecnomikata.com/column/9886/
素振りと走り込みで達成した月商100万円。
他の人の3倍もの期間を費やして、ようやくオープンした「あさびらき十一代目 源三屋」。しかし、その初月(2004年3月)の売上は191,060円。はい、1ヶ月間の合計でです(笑)。
さすがに自分の人件費すら稼げていないのは解っていましたので、コリャまずいぞ、と。
とにかく最初は楽天の担当ECコンサルタントさんに、こちらから電話をかけては「次は何をしたら良いですか?」と聞きまくり。ご提案頂いたプレゼント企画を行い、商品ページを作りこみ、メルマガを一生懸命に書いて、サンクスメールやフォローメールを自分なりの文章でしっかりと送り続ける。
少し余裕が出てきてからはお中元やお歳暮のページを見よう見まねで作ったり。主に楽天の担当ECコンサルタントさんに「これをしっかりやりましょう」と言われたことばかりを愚直に。でも少し自分なりにアレンジして楽しく続けていました。
でも、もう何よりも「自分がインターネットのお店」を運営しているのが楽しくて楽しくて、夜遅くまでどころか自前でやっと買った中古のPC(よりにもよって、フリーズしまくるWindows Meでした)で「今晩のメルマガはササキの自宅よりお送りしております」とか、もう完全に深夜ラジオのノリでしたね(笑)。
そんな感じで、いわば素振りと走り込み的な事をひたすら続けながら、あれこれ試しているうちに、何となく反応が良いときと悪いときの差が解り始めてきました。少しずつ売り上げも増えていき、7か月目には一つの目安と言われた月商100万円をあっさりと超えてしまいました。
今にして思えば「この順番」ってすごく大事だったなと思います。当時の私はロクな売り上げも作れていない平社員でしたので、当然のことながら広告やポイントの販促経費を先行投資なんてできません。そしてメーカーの直出店ですから価格を下げることもできなかったのです。ですからまずは「お金をかけずにできること」を徹底的にやるしかありませんでした。
とにかくこの期間は試行錯誤の数が尋常ではなかったと思います。
だから、きれいではないながらも「売れるページ(ページで訴求すべきポイント)」のコツが徐々にわかりだし、お客さんがちゃんと開封して読んでくれるメルマガの書き方を思いつき、コンセプトに掲げた「近所の酒屋らしい」メールテンプレートを作れたのです。
これは持論ですが「お金を使わずに月商100万円を達成するまで」にやるべきことには、その売り上げが1,000万円になろうが3,000万円になろうが通用する「基礎的なノウハウの極意」が詰まっています。
ここをショートカットして、広告費や安売りで簡単に売り上げを大きくしてしまった人は、それが通用しなくなった瞬間に行き詰ります。
「なかなか月に100万円売れないんだよねー」という方は、かなりの高確率で「どうやったらネットで売れますか?」と簡単に「(よくある)正解」聞いてしまいがち。
でも、誰かに聞いただけで実践できるような「簡単で上手いヒットの打ち方」があったとして、それって皆が知ってたらあっという間に通用しなくなりますよね?やはり自分の商いの正解は自分で手さぐりから掴み取るしかありません。
先日にピート・ローズを抜き去り歴代最多安打記録の偉業を達成した、あのイチロー選手ですらこんなことを言っています。
『考える労力を惜しむと前に進むことを止めてしまうことになります。』
『しっかりと準備もしていないのに目標を語る資格はない。』
『小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道』
『少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事。』
『僕は天才ではありません。なぜかというと自分が、どうしてヒットを打てるかを説明できるからです。』
誰かに簡単なヒットの打ち方を教わる前に、自分で徹底的に素振りや走り込みしましょうよ!
私たちは所詮は凡人なのですから、せめて天才や大企業より努力したり必死に考えたりしないで、相手と伍して戦える道理があるわけがありません。
どこよりも自分らしいページを作りましょう。一生懸命にメルマガ書きましょう。自分だけのメールテンプレートを作りましょう。
「ここまでやるんだ!」と徹底するか「その手があったか!」しか中小企業がECで認められる方法なんてありません。
皆もやっているようなことをサボってコピペだけで済ませていてはいけないのです。
お金やリソースが無いのは恵まれた武器です。
知恵と努力を最大限有効に使おうとしていますか?
◆大切なポイント
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・ヒットの上手な打ち方は、素振りや走り込みをひたすらにやった後に自然と自分で体得するもの。順番を間違えてはダメ。
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売れない理由、ではなく買ってもらえない理由で考える。
出店から1年ほどが経過した頃に、私の頭の中にちょっとした疑問が湧いていました。
「なぜ、あさ開の日本酒をもっとネットで買ってもらえないのだろう?」
日本酒を飲む人は、ネット通販を利用する中に一定数いるはずなのに、どちらかというとリアルでばかり購入していて、なかなかネットでは日本酒を、ましてやあさ開のようなマイナーな銘柄を、買っては頂けていない事に気が付いていたんですが、それがどうしてか解らなかったんですね。
スーパーで売っている量と価格だけをアピールする日本酒モドキや一升瓶で何万円もする名前だけのお酒(ごめんなさい)なんかより、名人とまで言われるウチの杜氏が、一生懸命に醸したお酒の方がはるかに遥かに美味しくてお得なはずなのに(この辺りが解っていなかった訳ですね…)
そこで私は、ネットでとにかく「その人たちがネットで日本酒(あさ開)を買わない理由」を考えてみることにしました。
1.ネットだと送料が余計にかかる
2.お酒は嗜好品、自分の好みと合わなかったらいやだ
3.そもそもあさ開を知らないから美味しいかどうかわからない
4.お店の人の「これおいしいですよ!」は信用できない
5.いつものスーパーで買う銘柄と比べると割高にみえる
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(-_-;) なるほど。
つまりお客さんからすれば「美味しいかどうかも解らない岩手の無名な銘柄を、割高に見える価格でしかも余計な送料をかけて、見ず知らずの私のいうことを信用して買ってください!」と言われているようなもの。そりゃ買うわけがない。
そこで。
1.送料込みにしてみよう
2.お客さんの失敗のリスクを下げるために、甘口や辛口などタイプの違うお酒を少容量で何種類か入れてみよう。気に入らなくて残しちゃったとしてもダメージ少ないし。
3.しっかりとお酒を造っている杜氏が全国的に名人と言われる職人で、全国新酒鑑評会で日本で一番金賞を獲得している蔵であることを伝えよう
4.自分たちの評価じゃなくて、日本酒コンテストや有名グルメ雑誌で「おいしい」と第三者評価を得たお酒をチョイス
5.コミコミ価格で3,000円。1本あたり600円と訴求するなら飲み屋さんで頼むよりは割安に見えるかな?
あ、そうだ!ちょうど「新規の入り口になるお試しセットを作りましょう!」って言われてたし、これを入り口商材にしよう!
と考え、商品化したのが「あさ開 人気のお酒飲み比べセット300ml×5本セット 送料込税込3,000円(当時)」。
中身の元々は飲食店さんの業務用として従来から販売をしていたものばかりの、特に目新しくはないお酒を組み合わせただけ。
まだ普通の6本入れの段ボールにお酒が5本入っただけの(1本分スペースが余っていました)、味も素っ気もない何とも色気のないセットでしたね(笑)。
「この中で気に入ったお酒があったら、割安な720mlや1800mlで買ってくれる人もきっといらっしゃるだろう。」
最初の期待値としてはその程度でした。
ただ、それまで元々あったあさ開の既存のお酒を何とかネットで売ろうと足掻いていた私に、「源三屋オリジナルの企画やセット」としての新たな道筋が見えた瞬間でした。
今考えると、単純にそれぞれの小売価格に送料などを加算しただけなので、利益はしっかりありましたし、割と価格も高めの「お試しセット」なのですが、意図したとおり「買わない理由」がなくなった事から、広告費もポイントも値引きも無い状態ながら少しずつ確実に売れだしていきました。
◆大切なポイント
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・店舗目線の「なぜ売れないか?」ではなく、お客さん目線で「どうして買う気にならないのか?」で考えてみましょう。
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仮説と対話がヒットを生み出す。
出店から1年が過ぎ、飲み比べセットも安定的に売れるようになったおかげで、この頃の月商は100万円を安定的に上回るようになり、少しですが月に数万円の広告費を何とか捻出できるようになりました。
そこで次に私が考えたのが「この限られた広告費をどう使うか?」でした。まず考えたのは「絶対に外さない広告はどこか?」ということ。なんせ予算が無いのです(笑)。
普通に考えれば「ネットに日本酒を買いに来た日本酒好きが見るであろう場所」に露出する広告なのでしょうが、恐らくそこでは他のお酒と比較してまだ知名度も実績もないあさ開のお酒はまだ見向きもされまい。
そこで楽天の担当ECコンサルタントさんと相談しながら、楽天市場の上位会員さんであるほどポイントがお得になる「会員ランク別ポイント優待広告」に目を付けました。すなわち「既に高い頻度で日常的に楽天市場でお買いものをしているお客さん」にアプローチをして、その中から「日本酒を買う人」に出会った方が、後々にメルマガなどでの接客で、当初からの目的である「ファン=生涯顧客」になってもらいやすいのでは?という仮説を立てました。
日本酒好きのお客さんにネット通販を利用してもらうよりも、ネット通販好きのお客さんに日本酒を好きになってもらう方が早いしマーケットも広がるのではないか?と仮説を立てたわけですね。
ちょうど「AのショップとBのショップの中から1店舗ずつ購入で500ポイントプレゼント」というメール広告があり、非常に表示も小さいBの枠でしたが5万円で取れたので購入。
満を持して飲み比べセットを掲載してみることにしました。
ちょうど酒蔵に十数年前のノベルティで不良在庫と化していた、陶器のグラスが数百個あったので、どうせ使い道もないし…と許可をもらっておまけにオマケに付けることにしました。
2005年5月12日、そのメール広告の配信日。
それまでは1日に数件、どんなに多くても20件ほどだった源三屋の注文がいきなり100件ほどに跳ね上がりました。
当時はまだ一人で運営していましたし、受注ソフトどころか宅急便の送り状すら手書きしていた時代です。これはマズイ!受注と出荷が追い付かない!と生まれて初めて会社に泊まり込み、必死で受注していているうちに、あることに気が付きました。
かなりの数の方が翌月の6月18-19日の週末土日のお届けを希望されているのです。
そして「包装できますか?」「メッセージカードは付けられますか?」のお問い合わせも多数。
なんだろ?この日に何かあったっけ?
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そうか!父の日だ!
恥ずかしながら、メーカーである私たちには、杜氏はまだこの父の日のマーケットの大きさが全く見えていませんでした。母の日と比較すると地味な父の日に、まさか日本酒がこんなに売れるなんて想像すらしていなかったのです。
奇しくも。
私が考えて飲み比べセットで対応していた「お客さんがネットであさ開の日本酒を買わない理由」は、自分でも意図せずにそのまま「自分では日本酒を飲まないけれど、お酒好きのお父さんや旦那さんへの父の日ギフトを送りたい方」の「日本酒の事が全く解らないから何を選んでよいかわからない」を解消する理由になっていたのです。
そこに気が付いてからは早かったです(笑)。
こんなダンボール箱じゃなくてセット箱に入れたら見栄えが良くなる!と既製品のセット箱を急きょ取寄せし、合わせて包装とメッセージカード(恐ろしいことに手書きしてました…)に対応できることをページに記載。
楽天の担当ECコンサルタントさんに電話して、予算を伝えながら父の日特集の中の一番安い広告を購入する手配をしました。
もともと業務用として持っていた商品でしたが、必死で考えて「見せ方・売り方」を考えた結果、お客さんとの接点が増えて、自分たちですら気が付いていなかった需要にお応えすることができ。
その結果として、2005年の5月6月は月商500万円を連続で越えることができました。
おかげで連日会社に泊まり込む羽目になりましたが(笑)。
あれから10年。
毎年、商品とオペレーションの改善を重ねることで、飲み比べセットは売れ続け、昨年2015年の父の日前の1ヶ月間には約12,000セットものご注文をいただくようになり、単体で月に5000万円以上もの売り上げを作ってくれる商品にまで成長しました。
◆大切なポイント
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・どの広告が当たるのか?と正解を探すのではなく、どういうお客さんと出会いたいか?自分たちの商品が役立てそうか?で仮説を立てて検証する。
・お客さんときちんと対話しお困りごとに応え続けると潜在的なマーケットに気が付ける。それに対応するだけで十二分に商品は買ってもらえる。
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最後に余談ですが…問題です。
この10年間にお父さんのお名前入りのお酒ブームなどもあり、さらに他の日本酒ショップさんがこぞって、300mlの飲み比べセットを、しかもあさ開より安い価格で販売するようになりました(笑)。
それでも、日本酒ではあさ開の飲み比べセットが、価格は高くても父の日ギフトとして一番売れ続けています。
どうしてなのでしょうか?
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正解は次回のコラムの冒頭で(笑)!
とは言え。これでは「日本酒ファンを増やした」事には全然なっていませんし、ネットに出店した目的である「生涯顧客との出会い」を果たしたことにはなりませんよね?
第四回は、引き続きネットで売れた商品開発の具体的な事例をご紹介する予定ですが、より「自分たちの当り前」を「お客さんの特別」に価値創造する事例をいくつかお話しいたします。
どうぞお楽しみにー。
※次回は7月8日(金)頃の更新予定です
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