AI=人工知能の未来〜EC訪問者が閲覧した商品をリスト化

石郷“145”マナブ

忘れかけてた、商品への衝動を取り戻す「Interest Widget」

「あれ?さっきまでスマホで見てた、お気に入りの商品ってどこへ行ったっけ?」

 こんな経験、ないだろうか?実は、スマートフォンは使いやすい反面、その仕様によって、過去の履歴が見づらいというデメリットがある。過去じっくり見て、興味深く眺めていたその商品が、必要に応じて、サッとすぐに取り出せたら…。そんなことがAIでできてしまう新機能の話である。それが、Emotion Intelligence株式会社(以下、Emin)が、つい先ほど発表した、自動お買い物リスト作成機能「Interest Widget」である。

 今日は発表に合わせて、急遽、Eminの代表取締役 音田 康一郎氏に話を伺った。

 まずこの新サービスを考える上で、まず押さえておきたいのが、同社の「ZenClerk」というサービスだ。これはこの音田社長の気づきによって生まれた技術で、こんなエピソードからなる。友人がショッピングサイトを見ている時、そのマウスの動きを後ろから見ていたところ、ふと、どういう動きをするかで、大体買う商品が予測できる、と考えた事にある。

 その動向を機械学習させ、成長させていくことで、見る側の興味関心が高まるタイミングで、クーポンを表示する、ということが可能となり、お客様の高まる気持ちを取りこぼすことなく、購入に導くことができるようになる、それをサービスにしたのが、ZenClerkだった。

  これは、ある意味画期的だった。お客様へのアプローチと言えば、たいていが、年齢や性別といったものだったからだ。その点でこの技術は、そういうデータの扱い方とは一線を画していて、人の感情に即しているように見えることから、それをEmotion I/Oと呼んでいるのだ。クーポンを出すシステムZenClerkは、Emotion I/Oを活用して、商業化したサービスだと言えよう。

「Interest Widget」は、どこが画期的なのか?

「Interest Widget」は、どこが画期的なのか?

 さて、今回の「Interest Widget」は、どんなものか。上の写真を見て欲しい。スマホが3つ並んでいるが、右端のスマホを見ると、スマホ画面の左下に、オレンジ色で模様が入った○のバッヂがあるのがわかるだろうか。
 
 このバッヂこそが「Interest Widget」へと導くものであり、これをタップすると、その閲覧者が、そのサイトに訪問して、数多くの商品を見る中で、特に、興味を強く感じたものが、その興味の度合いに合わせて表示されるというものなのだ。

 その表示されるものも、閲覧している時間などといった単純なものではない。この興味という部分に使われているのが、Emotion I/Oのアルゴリズムなのだ。つまり、Emotion I/Oの技術を使えば、ZenClerkで取り入れられているように、お客様がどの商品について、深い関心を持って閲覧していたかが特定されやすくなる。ここが単なるレコメンドとも、大きく違う点なのだ。

関心度の高さは、「じっくり度」に反映される

関心度の高さは、「じっくり度」に反映される

 上記の写真のように、関心度の高かった商品はこちら、という具合に見せることができる。

 関心度の高い商品については商品の写真に「じっくり度」が表示。例えば、80%という具合に、その度合いで、順位をつけて、興味関心の高かった商品を、埋もれることなく浮かび上がらせるものなのである。しかも、お客様が全く見たこともない商品をレコメンドする、というわけでもなく、そのお客様がかつて、深い関心を持って実際に商品を眺めたものに限定されているので、確実に、それが購買に近づきやすいというわけだ。

 お客様は、探し回ることなく、本当に自分が欲しいものが表示され、興味を持った中で関心の高かったものだから、あの時、感じた高いモチベーションそのままに、あの時の感情が蘇って、購買行為を途絶えさせない。

Interest WidgetをZenClerkと併用で、相乗効果。CVR315%に!

Interest WidgetをZenClerkと併用で、相乗効果。CVR315%に!

 その効果のほどは。アパレルECサイトで、試験的に「Interest Widget」を取り入れたところ、導入後、CVRが144%となったとか。驚いたことに、「Interest Widget」を、クーポンを表示させる機能「ZenClerk」と併用した際には、CVR315%を記録したというのだ。感情をつかむそのテクノロジーは、「Interest Widget」で買い物を助け、「ZenClerk」で購入へ。気になるコスト面も、初期費用は20万円。そして、サーバーへのアクセス数に合わせて、今に限り、最安で30000円からで、投入できるそうだ。

 今まで大体、「AI」をはじめとする技術は、リアルな世界と変わらぬ世の中をネットで再現しようとしている風であったように僕は思う。しかし、今回、この技術を聞く限りにおいては、リアルでできないアプローチを、実現。僕らのものを買うという何気ない行為は、様々な形態で実現されるようになってきたのかもしれない。

 お客様の気持ちに近い、本当の真実は、リアルだけではなく、ネット通販にこそ、あるのかもしれない。そんな未来を感じさせた新機能の発表であった。期待したい。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ の執筆記事