メルカリに替わる?楽天”ラクマ”×Fablic”フリル”フリマアプリ概況報告会

ECのミカタ編集部

(写真左)楽天(株) C2C事業部 ジェネラルマネージャー 井上 貴文氏
(写真右)(株)Fablic 代表取締役CEO 堀井 翔太氏

本日11月24日(木)、楽天クリムゾンハウスにて、フリマアプリ「ラクマ」を運営する楽天(株)と「フリル」を運営する(株)Fablicによる概況報告会が行われた。今年9月に、楽天によるFablic買収が発表されてからおよそ2ヶ月、Fablicの楽天グループ参画で何が変わったのか、今後統合が進められるのか、C2C市場にどのような変化があるのか、気になる点が明らかになった。

日本初のフリマアプリというフリルの強み

 まず、Fablicおよびフリルについて(株)Fablic 代表取締役CEO 堀井 翔太氏より説明があった。フリルは日本初のフリマアプリとして2012年にスタートした。4周年を目前にして、累計600万ダウンロード、何よりユーザーの92%がそのサービスに満足しているという、ユーザー満足度No.1の強みを持つ。

 フリルがスタートした頃の市場はまだスマホ黎明期で、LINEが流行り始めたばかり、Instagramがリリースされたばかりという状況だった。その中で、当時流行っていたブログメディアなどで、人気ブロガーが自撮りしたコーディネートの服を販売もするという動きがあったという。mixi、Twitterなどにも同様の動きが広がっていたそうだ。

 その頃、C2C市場としてオークションサイトはあったものの、前述のような商品の売り手、買い手は10〜20代の女性がメインで、オークションサイトで取引するためのPCを持っていなかったり、課金したくなかったり、取引の手順が面倒などの理由で、オークションサイトは利用されにくい状況にあった。そこでモバイルからも簡単に出品、購入ができる仕組みを作ったのが、フリルだ。

 フリルの大きな強みの一つが、こういったチャンスのある市場を見つけ、そこで受け入れられるプロダクトを実現できてしまう技術力だ。ただ、2016年現在、非常に多くのフリマアプリが登場しており、その中で勝ち抜くには、差別化と資本力が課題になっていたという。その課題を解決するために、Fablicは楽天グループ傘下に入った。

 その後、10月から販売手数料無料をスタート。同時にTVCMも放映し、積極的なプロモーションを行っている。その結果もあって、この10月の出品数は178%UP、取扱高も166%UPと、それまでも右肩上がりの成長ではあったものの、さらに大きく成長率を伸ばしている。差別化という点で、この販売手数料無料化は大きなインパクトがあった。

 また、商品を出品して購入するという仕組み自体にはそれほど大きな差は出しにくいが、決済や配送という面ではまだまだ改善の余地があると考えているとのこと。その辺りも、楽天と共に動くことにより可能性が広がっていくだろう。特に楽天のFintechの分野、そして楽天市場でのECのノウハウに関して、力を借りていきたいとのことだ。

フリマアプリは楽天市場と相性抜群!No.1の座を目指す

 次に、楽天(株)の中のラクマと今後のC2C市場の戦略について、楽天(株) C2C事業部 ジェネラルマネージャー 井上 貴文氏より説明があった。ラクマはフリマアプリの中では比較的新しく、2014年11月にサービス開始、当初より販売手数料無料を謳っていた。これは、楽天グループの中にあるサービスだからこそ実現できたことではないだろうか。

 サービス開始以来右肩上がりの成長を続けており、累計ダウンロード数は2016年11月時点で400万ダウンロードとなる。この数字は初公開となる。楽天グループのフリマアプリとしては、フリルと合わせて1000万ダウンロードを超えることとなり、勢いが感じられる。サービス開始からしばらくは自然流入によるユーザー増に比重を置いていたそうだが、今年の3月からはモデルの本田翼を起用したTVCMを放映し、積極的なプロモーションへと移行していた。

 楽天らしい点で言えば、楽天技術研究所のディープラーニング技術を活用した「もしコレ!」というサービスで、出品画像から自動でカテゴリーをレコメンドするというサービスがある。これは非常に好評で、95%以上のユーザーが「もしコレ!」で推奨されたカテゴリを採用しており、精度の高さが分かる。また、アプリだけでなくウェブ経由でのサービス利用ニーズにも応えており、ウェブ経由の利用は20%と、一定数のニーズがあることが分かる。

 さらに、フリマアプリは楽天市場と相性が良い、C2CとB2Cは共存共栄の関係になり得るという結果も出ている。それは、ラクマユーザーの25%超が楽天新規会員となっており、ラクマを利用したことのあるユーザーは、楽天市場での購買額も+31.0%となっているのだ。

 そして今回、Fablic買収に至った背景として、Fablicの技術力はもちろんのこと、ラクマとフリルでは売れている商材にかなり違いがあり、ユーザー層にも違いがあるということがある。そのため、食い合うことなく、相互送客が実現するのだ。具体的には、ラクマは20〜30代、主婦や男性の利用も多いのに対し、ラクマのユーザー層はより若く10〜20代、学生も多い。そして、ラクマではキッズ・ベビー商材、エンタメ・ホビー商材がよく売れるのに対し、フリルではファッション商材、コスメ美容商材がメインだ。

 こういった背景から、ラクマとフリルは補完しあえる関係性にあり、この違いを活かしながら、フリマアプリ市場No.1を目指していくという。

ラクマとフリルの統合はあるか?メルカリ超えを目指し…

 ラクマもフリルも、現在は成長のフェーズと捉え、より多くのユーザーに使ってもらうことを目指している。ユーザーを増やす余地はまだまだあると考えているそうだ。将来的に必要な段階が来れば統合も前向きに捉えているが、現時点ではそれぞれの得意な点を活かした併用展開をしていくとのこと。

 手数料無料はもちろん、楽天のサービスをフリルで利用できることで、もっと売れる状況を作ることができると考えているそうだ。特にクーポンはすぐ使えるという点でユーザーの反応が非常に良いそうだ。

 また、前述の通り、決済と物流の分野ではまだまだ改善の余地が大きいとのこと。楽天の持つサービス圏やノウハウに、フリルの技術力が合わさることで、できることの幅は広がるだろう。楽天市場
と相性が良いことから、この点でも今後の連携が進みそうだ。

 さらに、ラクマは台湾にも進出しており、こちらも順調な伸びを見せているとのこと。海外に関しては、この台湾での足固めをしっかりと行い、その後、多国展開についても検討していきたいそうだ。

 ラクマとフリルが共に楽天傘下となることで、楽天サービスの共有や手数料無料化など、少しずつ動きが出てきていた。このタイミングでの概況報告会で、両社が順調な成長にあることも見えてきた。今すぐ大きな変化があるわけではないが、今後、楽天としてC2C市場にも積極的な施策を打っていきたいという表れではないだろうか。

 日本のフリマアプリ市場では、やはりまだメルカリが圧倒的なシェアを誇っているようだが、こういった勢いのある動きで、その勢力図が変化しないとも限らない。実際に両社は、メルカリに替わるフリマアプリNo.1の位置を目指している。そして、ラクマと楽天市場の相性が良いというように、C2C市場の動きはB2C-EC市場にとってもチャンスとなり得るようだ。


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