アマゾン、オンライン広告市場に本格参入の準備

競争激化するアマゾンとグーグル

通販大手のアマゾンと検索エンジンを代表するグーグルの競争が激化している。小売りと検索で住み分けてきた両社だが、競争激化で互いの得意領域を侵食。顧客の囲い込みを目指して多角化を進めた結果、真っ向から対立しつつある。

アマゾンが誕生した頃、「本は書店で開いてみて、それから買うかどうか、判断するものだ。したがって事業としては成功しないだろう」などと言われたものだ。しかし、それははるか過去の話となった。多忙な現代人の多くは、内容を確認せずにアマゾンに本を注文し、その中から自分にとって有用なものをチョイスするようになった。
しかも、アマゾンの事業はすでに「書店」の域を超えている。

2007年にアマゾンが発表したタブレット「キンドル」の機能は着々と進化し、単なる「読書用端末」ではなく、多様な機能を持つものになっている。これに対抗して、グーグルは自社開発タブレット「ネクサス」を投入。ここでも両社はぶつかった。

今年4月には、米アマゾンはインターネット経由で配信された映像をテレビで再生する機器を実現させた。グーグルの「クロームキャスト」に対抗するもので、「クロームキャスト」の3倍の処理能力があるという。

さらにアマゾンとグーグルはクラウド事業でもぶつかり合う。グーグルが企業向けデータ保管などのサービスで最大85%の値引きを発表すると、アマゾンも間髪入れずに値下げで対抗。
現在、アマゾンはAndroidに対抗して、スマホへの進出も計画しているともいわれる。「住み分け」など、昔話になってしまった。

このアマゾンとグーグルの競争に拍車をかけているのが、アマゾンの広告市場への参入だ。

広告事業へ進出するアマゾン

広告事業はインターネット小売りに比べて、うまみが大きい。グーグルにとっては、収入の柱ともいえる部分だ。

この分野に切り込むための「財産」をアマゾンは持っていた。インターネット小売り世界最大手として、消費者の買い物行動に関するデータという宝の山を抱えていたからだ。

アマゾンがなぜ広告に長い間手をつけてこなかったのか、その理由はわからない。まずは通販にリソースを集中していたのかもしれないし、十分な準備ができるまで、あえて手をつけなかった可能性もある。もしかしたら自社の持つ情報の「価値」に気づいていなかったのかもしれない。ともあれ、眠れる巨人が目を覚ましたことは、確かである。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、アマゾンが現在おもにグーグルが提供している自社ページ上の広告を自社のものに変えるつもりだという類推を発表した。アマゾンは現在グーグルから広告をもっとも多く購入している企業のひとつであり、切り替えが実現すれば、グーグルにとっては大きな収益減となる。

通販の巨人がインターネット広告にまで事業を広げることで、IT業界の地図はまた大きく塗り替えられつつある。