独占!eBayアジア責任者パク氏直撃 ジオシス日本事業を買収した理由

石郷“145”マナブ

 ECのショッピングモールは新たな局面を迎えた。それはeBay Inc.が越境ECではなく、日本のEC市場への参入を発表したのだ。彼らが目をつけたのはジオシス合同会社だ。ジオシスはこれまでアジアを拠点にEC事業を行ってきたが、そのうち日本事業のみをeBayに譲るとした。つまり、ジオシスが育ててきた「Qoo10」はeBayによって運営され、eBayはこれによって日本事業への本格参入としたのである。

 今回、特別にeBayアジア太平洋地域シニアバイスプレジデントのジュマン・パク氏にインタビューを試み、このような買収に至った背景についてお話を伺ったので、Qoo10に出品している人のみならず、モールに出店している全ての人に読んでもらいたいと思う。彼らが日本のEC市場に何を見たのか。

 もともとここの背景を語る上で、欠かせないのがGmarket社の存在だ。Gmarket社は韓国のECを牽引する存在であったが、2009年にeBayにより子会社化され、eBay Korea社に。実はその際、eBayはGmarket社の創業者Young Bae Ku氏とジョイントベンチャーを立ち上げ、これがジオシス合同会社である。

 ジオシス合同会社は、日本だけでなくインドネシア、シンガポールなどといったアジア各国でオンラインショップの事業を行っているが、そんな中eBayはアジア地域のビジネスを発展させていく中で、eBay自ら日本に注力しようという考えに至った。そこでeBayはジオシスのCEO Young Bae Ku氏と話し、日本のみをeBayに譲り受ける事とした。そして、Young Bae Ku氏は改めて日本以外のアジアの新興市場の事業に注力する方向で取り決めを成立したのだ。

アジアで成長が見込める国

 パク氏は開口一番「eBayは韓国やオーストラリアでは非常に強い事業を展開していて、アジアは大変魅力的ですが、数多くの国があり、現時点では日本以外のアジア新興市場については国内ビジネスを構築するための拠点を作ろうという考えには至りませんでした。なので、日本事業のみをジオシスから買収し、eBayが事業を行うことにして、残りの地域はジオシス社に任せようということになりました」と説明してくれた。

 その中でもどうして日本に注目したのかについて確認すると「日本のEC市場規模は世界中でも大きく受け止められていますし、今後、3年先くらいを考えると日本の伸びが一番際立っており、成長率も高く維持されているので、これからも有望な市場と捉えています」と話した。続けて「既に日本では『Qoo10』が成功を収めているし、彼らは日本で事業をやっているので日本のマーケットに対しての理解度も高く、何より日本で既にプラットフォームになっている現実はとても大きいです」と話してくれた。

 その上で、「既にeBayは日本ではクロスボーダービジネス、つまり越境ECでは事業をやってきているので、ここから日本の事業者のニーズとか日本のお客様の行動や嗜好なども理解できる」と加えた。

Qoo10の出品者にeBayの存在はプラスか、それとも

 では事業者にはどんなメリットがあるのだろう。これについて氏は「Qoo10は順調ですが成長し切れている訳ではなく、まだまだ伸び代があると考えていて、具体的には今はファッション、美容系等が中心となっている商品のラインナップですが、今後eBayが参画することで幅広くなっていき、売り場が活性化して、他のジャンルで出品することについても必ずやメリットが出てきます」と話している。

 このメリットがもたらされるのは新規に限った話ではなく、既存の事業者もそうで、それが技術革新だと説明している。「技術革新はeBayが世界で投入しているソリューションを活用したもので、より高度な環境が整います。これらが出品者をより幅広い提案を実現させることを後押しし、出品者の持つ可能性を最大化していきます」とパク氏は言う。

出品者にとってのメリットはいかに?

 技術革新についてパク氏はこうも話している。「ユーザーのインターフェースは日本人仕様として向上し、バックヤードではテキストやイメージの検索などの機能をアップさせ、かつデータマイニングやAIの活用で利便性が向上します」

 その上で「まずは国内のフィールドでは売上をあげることを意識しつつ、将来的にはQoo10の既存の事業者がグローバルな展開をしていくことを視野に入れています。eBayには全世界1億7000万人のバイヤーがいるので、現地の人にもプロモートしていくことができると考えています」とあらゆる垣根を超えたプラットホームとして「Qoo10」は改めて脚光を集める事になりそうだ。

 更に、テクノロジー面だけではなく「手数料、フィーなど経済的にも魅力のあるパッケージプランも用意して、新規の事業者を集めていく」とeBayがEC事業に入るのが遅れた分、そうした部分でも取り返す強い意気込みでのぞむ。こうした動きは、出品者数にも少なからず影響しそうな予感。

ではどれだけ成長するのか?

 パク氏によれば「ECのマーケットの成長率よりも高い成長率を見込める」として、その背景には「既存のショッピングモールなどで既にオンラインショップを運営されている方を軸に増やしていき、扱っている商品の品揃えを増やすべく、カテゴリーの充実も図っていく」としています。ネットのショッピングモールは多様化の方向へと確実に向かっているように思う。

 いくら事業者側の環境が変わろうとも買う側にとってのメリットがなければならない。その点「日本の固有のプラットフォームを用意して立ち上げていますので、日本の消費者のニーズに徹底的に答えやすく、また先ほど挙げた世界中で支持されているグローバルテクノロジーをフルに使って、お客様の満足度も向上できると考えています」としており、これまでのQoo10に見られたようなエンタメ性や気持ちを盛り立てる仕掛けはテクノロジーの向上を伴って、より価値のある売り場へと進化していきそうに思う。

 思うに冒頭に書いたのだが、eBayは元から韓国でEC市場を牽引するGmarketの子会社化(現在はeBay Korea)で韓国EC市場を代表する存在となっており、ここでの成功事例をジオシス(の日本事業)が育んでローカライズした「Qoo10」で生かしていくというのだから手堅いと思う。席巻とまではいかなくても、日本のEC市場にそれなりの存在感を示すことにはなりそうな予感もある。

ショッピングモールの進化はどこまで

 そして、これまで「楽天市場」「Yahoo!ショッピング」「Amazon」そして「Wowma!」とかなり大きくショッピングモールの存在感がかなり増している中で、Qoo10が新たにeBayという世界的企業の魂を取り入れる事は、それに太刀打できるような戦力を備えるという意味では妥当な判断であるようにも思う。

 日本のショッピングモールは国内、海外を巻き込み戦国時代へ。しかし、買う側にとってはそれだけ多様化が進み、ショッピングの幅が広がり、ECそのものを身近にするだろう。

 また新しいECの事業者を生み出し、新しい価値観で商品が販売され、今よりもっと感動的な売り場が生まれるのだとするなら、それは大いに歓迎したい。そして、今や最初から海外も商品展開の視野に入れた、いよいよ完全なるボーダレスの時代が当たり前になるのだろうか。そういう点でも、この新生「Qoo10」には期待したいところである。日本を活性化させ、世界へ発信する企業はここから巣立っていくのか。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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