ゆうこすに学ぶ!ライブコマース攻略の糸口〜インスタ、Twitterと同様に“共感”を抱かせるその秘訣

石郷“145”マナブ

ライブコマースとは?

 皆さんはライブコマースをご存知でしょうか? 「ライブコマース」とは、インフルエンサーが発信し、リアルタイムで視聴者とやり取りをしながら、商品を購入していくというものです。

 中国では既に、ショッピングモール「淘宝(タオバオ)」が提供する『淘宝直播(タオバオ ライブ)』というライブコマースで、2時間で3億円の売り上げがあったという話も聞かれるほど。それだけライブコマースは、ポテンシャルが高いことを意味しています。

 ただ、それを今までのテレビ通販と一緒でしょ?などと思っていたら大きな間違いだと思います。その理由は、例えばLINEを思い浮かべてみればわかります。LINEはメッセンジャーアプリにおいて、場所を選ばずリアルタイムでスマホ上、直感的に会話のような交流を可能にしました。そんな今だからこそ、今度はスマホ上、インタラクティブ性を持った“動画”の時代が来ると考えるのは、自然な流れだと思うのです。

スマホ上での新しい買い物体験

 ECにも、その波が来ていることを実感するべきです。そこで「ゆうこす」こと菅本裕子さんの協力で『Live Shop!』というECアプリの現場に潜入しました。

 菅本さんは、日本のライブコマースでは第一人者で人気があるだけではなく、また、誰から言われることなく、その地位を自らの手によって引き寄せた張本人でもあります。

 HKT48メンバーという栄光の肩書きを持ちながらも卒業し、仕事を失い、現実を知った中で、彼女なりに自分の将来を見つめた時、ツイキャスなどの動画配信やインスタグラムなどのSNSに居場所を見つけたのです。

 男女問わず全員に「可愛い」「いいね」と思われたい、女性として当たり前の心理を、わざわざ人前で言うべきではないと思う過去がありました。でも、むしろ人より強いその心理を、自分が率先して言っていく中に、自分らしさを見つけ、その発信地がSNSだったのです。

 考えあっての発信だから、彼女の姿勢は多くの女性に受け入れられました。それが、今の彼女の原点となり、ファンをつかんできたのです。そんな彼女の「Liveコマース」で、勢いを感じて欲しいです。

ゆうこすに直撃!〜購入者側の不安を取り除き続ける、それが動画配信の役目

ゆうこすに直撃!〜購入者側の不安を取り除き続ける、それが動画配信の役目

―自分の今を確立した「SNS」では、自分をどう表現してきましたか?

 私のインスタは、ファッションであれば、コーデの意図とかを入れますし、(写真ばかり注目されがちなインスタなのに)2000文字くらい情報を入れて、ちゃんと見て意味のあるものを心掛けています。

 モテるための情報が得られるフリーペーパーを作っている感覚です。だから、ただの自撮りとかランチとかは絶対にあげないです。

―人気を維持していくために何かしているんですか?

 人って基本的には飽きたりする。なので、いろんなものに挑戦して、変化しています。去年はモテる情報を発信していましたが、今はSNSで夢を叶えるというメッセージを送るようになり、最近は、東洋経済オンラインで連載を持ち、女の子以外にも発信しています。そしたら、こんなところでも「ゆうこす」は頑張っているんだと応援する気になるし、力も与えられます。

―そんなゆうこすさんにとって動画ってどんな存在なんですか?

  私のような、人前に出る仕事って「いかに可愛いか」「いかに歌が上手か」だけじゃ終われない時代だって思うんです。どう覚えてもらえるか、どうやって一緒になって頑張っていこうみたいな気持ちになれるか、だと思います。そういう気持ちになってもらうためには、自分の「今、この瞬間」のことを正直に伝えていかなければならない。それをするには、ライブ配信は最適なツールだと思います。

―ライブ配信で買ってもらうということについては、どう思う?

 生配信で物販売をし始めたのは2年前なんです。きっかけは買い物って不安だろうなと思って、そこで自然と取り入れたのが、ツイキャスのライブ配信だったんです。

 2年前にやっていたことは「スカートに履き替えてみて」とか言われて、履き替えてみて「これも合うわー」とか言ったりするんです。つまり、私にとって、購入者側の不安を取り除くのが動画配信だと思うんです。それで、背中を押すということができます。

―今まででいう芸能人とは違いますね。優れた販売員といった風です。
 Liveコマースって販売員次第なんです。揚げ足取りな人もいるはずですし「それどうなんですか?」と言いがかりをつけられる時もある。生なので失敗はすぐ修正しなければ後々に影響するのでその場の対応力が高くないとリスクが大きいのかなと思います。

―Liveコマースでの未来を想い、自ら意識する事はありますか?
 売れるほどネット上で売ってくれと言われることが増えてくると思います。でも私は、絶対にしません。生配信だからこそ、その商品のいいところを伝えて、それを信じて売れるわけだし、気安く語れないと思います。

 私のものを見たり、買ったりするというのは、ネット上で流れます。そこで、その人の情報の信頼度が高くないと、出る意味がないと思うので、そこは嘘偽りなく、やっていきたいと思います。

ライブコマース舞台裏 潜入〜にぎやかなライブ直前風景

ライブコマース舞台裏 潜入〜にぎやかなライブ直前風景

 ここは、『Live Shop!』というライブコマースを運営するCandeeのスタジオ。毎日、色々なインフルエンサーがこの場で、ライブ配信し、さまざまな商品が売られていくのです。

 「1分前でーす」番組開始が近づくと、スタジオで、スタッフが声を張り上げました。すると、スタジオの扉が開いて、ゆうこすさんが現れました。「よろしくおねがいします」と撮影スタッフに声をかけて気遣うと、「ぎりぎり〜めっちゃギリギリなんだけど〜」とスマホにも話しかけて、席に着きます。

さあ番組スタート!

 スマホに向かって彼女は何をしているのか。彼女はインスタグラムでライブ配信をしているのです。インスタグラムにはLive機能があります。彼女はここを活用して、自らのフォロワーに対して、まもなく番組が始まることを、リアルタイムで呼びかけています。

 『Live Shop!』はスマホアプリで、インスタグラムを見ていたフォロワーは、そのゆうこすさんの呼びかけとともに、一気に『Live Shop!』アプリへと移動して来ます。

 威勢のいい声で、「こんばんわ〜〜菅本裕子です!」。番組をスタートさせると、「今週もこんな感じで、インスタライブをしながらのスタートなんですけど…」とあいさつもそこそこに「今日も楽しくみんなで、おしゃべりしていきましょう」と切り出し、視聴者との女子会を楽しむような感じでスタートするのです。

 その間、『Live Shop!』のアプリでは、「来たよー」など、ファンからのコメントがリアルタイムで映し出されます。「インスタグラムの生配信見てた」というコメントもあって、インスタグラムとの連携が奏功していることもここでうかがうことができます。

 ゆうこすさんは 「今週のテーマなのですが、オフィスコーデを提案していこうかな、と思っています」と説明に入ると、「会社で堂々とぶりっ子に!秋のオフィスコーデ」と文字がスマホに映し出されます。

 商品を売り込むというよりは、リアルタイムで自らコーディネートを提案する風です。また、(オフィスコーデがテーマなのに)「ゆうこす、就職したことないんだけどね」と笑いを取るなどして、お高くとまることなく、身近な印象を受けます。

 そして、この日のテーマはこの四つ。「会社で堂々とぶりっ子に!秋のオフィスコーデ」、「疲れ切った体を癒す!男子に言えないボディケア」、「モテすぎる◯◯~オフィス編~」、「男子禁制!秘密の恋愛アンケート」という具合。商品を売り込むのではなく、ショッピングはライブ動画を楽しませるコンテンツの一つとして位置付けているのがまたよいのかもしれません。

 そして、彼女はスマホをスタッフに渡すと、立ち上がり、今日のコーデの説明を始めます。彼女が着ている服はすべて彼女が選んだもので、だから、説明も自然です。

 そこで彼女は「やっぱり女の子だし、職場でも可愛くモテたいですよね、最近はオフィスっぽい私服で行っている方も多いんじゃないかな、って思うんですけど」と自分なりの見解を添えて、自らカメラを意識して、話し始めます。

近くで話しているかのような感覚に

近くで話しているかのような感覚に

 そして、とにかく彼女は、いろんなユーザーのさまざまな声を軽快に拾って、一つ一つに答えていきます。自分の着ているトップスについて、「ピエロっぽい、フリルっぽい襟がちょーかわいくないですか?」と選んだ理由を説明。そのブランドを知るユーザーがそのブランドのことを「大好き」とコメントすると、すかさず、彼女はそれに答えます。名前を呼びかけながら「このブランド、大好きだって!!!かわいーよね」と説明中もかけあいは続きます。まさに職人芸です。

 「ワイドパンツは、グレーだけど、ピンクの細い線が入っていて、ほんのちょっとのピンクの線で、女の子らしさが出ますよね」と感想を述べると、着た時のイメージも添え、このパンツが、ベルト付きであることを強調します。そして、「絶対インして着てほしいんですよ、ここ(根元の部分)がプリーツっぽくなっていて、インしたら(それが出てくるので)可愛いんです」と提案も忘れません。

 そのほかにも、自らの自宅の写真も持ち込んで、スクラブの紹介。チョコレートの香りがすることを実感してもらうために、その場にいたスタッフに、香りを確認してもらうなど、まわりをまきこみます。ありとあらゆる要素で、ライブコマースの利点をフルに活かし、1時間に及ぶ番組を飽きさせません。

 これらの商品は、すべてLiveの最中に、スマホ画面のカートボタンを押せば、購入できることになっています。今回取材で伺った『Live Shop!』というアプリでは、予め限定数を決めて、番組終了10分前で締め切り。誰が購入できたのかは、終了5分前に発表されることになっています。

 ゆうこすさんは、終始、早口で、ものすごい量の情報を喋り続けている、ということを感じましたが、それは、一人でも多くの人のコメントに答えようとする彼女なりのファンへの想いなのだな、と納得しました。通常、500前後が普通といわれるコメント数で、ゆうこすさんは2000前後が通常だといわれる所以がわかりました。

 ゆうこすさんと、ファンとが作り上げた番組は、ある意味、まるでセールのような熱狂ぶりでした。この熱狂ぶりこそが、ライブコマースの真骨頂。だから、今までのテレビ通販やECとも違っていると思うのです。こうしたECが日本で、近い将来、受け入れられる日は、きっと近い。

[EC業界大図鑑 2018年版の記事を再構成]

 ECノウハウ


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

石郷“145”マナブ の執筆記事