「お客ではなく、作り手を増やす」 西野亮廣氏登壇【日本イーコマース学会 イベントレポート】
4月9日に、一般社団法人 日本イーコマース学会はEC業界初の学会設立を記念して、「そのうちamazonに駆逐されて終わってしまう」というテーマで、第1回日本イーコマース学会シンポジウムを開催した。シンポジウムに特別ゲストとして登壇したのはお笑い芸人キングコング西野亮廣氏(以下、西野氏)。自身の著書『えんとつ町のプペル』の販売戦略を語った。
人が挑戦を止める要因は、お金と広告
講演冒頭、西野氏が言うには、人が挑戦を止めてしまうものにはお金と広告の2つがあると言う。
「僕たちが挑戦をとめてしまうものはいったいなにか。一つはお金です。僕たちはお金がなく、資金繰りが出来なくなると挑戦を辞めてしまいます。2つ目は広告です。例えば、ケーキ屋をオープンしたら、どうやって集客するのか、人に見つけてもらうのか。そして、ほとんどの人が広告でつまづいてしまいます」。
ネットショップ運営においても重要な、「お金と広告」。店舗の開業資金から、仕入代金、サーバー管理費や人件費、物流費などお金がないと、ネットショップは運営出来ない。
また、ネットショップはあるだけで人が来ない。まだ、自分のネットショップを知らない人に知ってもらうための広告が必要である。西野氏のこの指摘は、ネットショップ運営においても挑戦を辞めてしまわないために、重要な点である。
お客を増やすよりも、作り手を増やす
では、お金と広告をどのように活用すればいいのか。西野氏は「3年前といまでは、お金も広告も変わっている。一緒じゃない」と言う。
えんとつ町のプペルを制作するための資金集めにはクラウドファンディングを活用。しかし、クラウドファンディングを活用して5,000万円を集めたものの、実質200万円の赤字がでたという。
何故、赤字が生まれたのか。クラウドファンディングにはいくつかの仕組みがあるが、今回、活用したのは購入型といわれるものであり、支援頂いた人にお礼品を送るための原価や送料がかかるという。そのため、赤字になったのだが、そのことを分かっていてもクラウドファンディングを実施したのは何故か。
「(クラウドファンディングで)欲しかったのは、お金ではなく支援者。例えば、僕とお姉さんが二人で商品を作ったらこの商品は最低2冊売れる。何故なら、僕とお姉さんが購入するから。であるとすれば仮説として、2人で作った本が2冊売れるのであれば10万人で作れば10万部売れるのではないか、と定義したわけです。つまり、今まで僕らは売ろう売ろうとしてきていたが、作り手を増やせばいい。そうすれば、作り手が消費者になる。だから、えんとつ町のプペルは1万人で作ったから、予約段階で1万部売れることが確定していた。」
そして、この1万人が、家族や知人に自分が作った本だとおすすめすることが、売れていくのである。
更に、えんとつ町のプペルは著作権をフリーにしたという。その結果、西野氏が知らないところで勝手に作り手が増えてきているという。(実例として、滋賀県でえんとつ町のプペルのラベルが貼られた電車が走っていたという。)
作り手を増やし、お客に情報発信をしてもらう。ネットショップ運営においても、「UGC( User Generated Contents)」や「コミュニティ」など、インターネット・SNSの普及によりお客の声を聞くことの重要性は言われている。今回の西野氏の講演では、ネットショップ運営の話ではないが「作ったものをどうやって届けたい人に届けるのか」という視点で、参考になるのではないだろうか。