EC事業者は消費者へ何を提供すべきか?オンラインショッピングに関する最新動向調査【SAP調べ】
ドイツ発で、ヨーロッパでもトップクラスのソフトウェア会社であるSAPは、日本を含むアジア太平洋地域で生活する20,000人を超える方々を対象に、普段のオンラインショッピングにおけるカートの利用や、購入をクリックする動機について調査した「2018年 SAP 消費者動向調査レポート」を公表した。
今回の意識調査では、日本、オーストラリア、シンガポール、タイ、インド、韓国、中国、香港などのアジア太平洋地域で実施しており、日本では1,000人を超える消費者に対して調査を行ったという。以降、その気になる調査の概要についてみていこう。
日本の消費者はオンラインでなにを買う?
調査によると、日本の消費者がオンラインで購入する商品は、「衣服、アクセサリー、靴などのファッション(76%)」、「食料雑貨品および消費財(70%)」、「航空券、ホテル、ツアーなどの旅行(57%)」ということが明らかとなったそうだ。その一方で、「家具(38%)」、「保険や金融ローンなどの金融商品(14%)」はやや低めの購入率であり、オンラインで購入されやすい商品との差が浮き彫りとなっているとしている。
また、日本の消費者がオンラインショッピングに求めることとして、「簡単な交換/返品手続き(40%)」、「商品比較ツール(38%)」、「実店舗(32%)」という結果となった。これによると、日本の消費者の約3分の1がオンラインで商品を購入する前に、リアル店舗へ訪問したいと考えていることから、実店舗の根強さが証明された一方で、企業側にはECとリアル店舗の商品情報が統合化された、オムニチャネルの必要性が示唆されていると同社では分析する。
「購入」ボタンをクリックする動機は?
次に、日本人がオンライン上で「購入」ボタンをクリックする動機として、「割引/プロモーション通知(37%)」に次いで、「在庫わずかの通知(33%)」であることが明らかとなった。また、カートを放棄する理由については、「配送料(51%)」、「他のブランド/ウェブサイトの商品との価格を比較するために使用した(40%)」、「商品が在庫切れだった(28%)」という結果となった。このカートを放棄する理由については、アジア太平洋地域全体においても、「配送料(54%)」が一番の理由としてあがっており、世界中の消費者に意識されていることがわかったとしている。
EC事業者は、日本の消費者へ何を提供すべきか?
今回の調査を踏まえ、SAP Customer Experienceは、優れたオンラインショッピングの体験を日本の消費者に提供するために、以下3つの提案をしている。
◆1.
リアルタイム在庫管理:消費者の4分の1以上が、在庫切れを理由にカート内の商品を削除する一方で、3分の1が「在庫わずかの通知」を動機として、オンライン上で商品を購入している。これらを踏まえて、企業側はリアルタイム在庫管理システムを導入し、バックオーダーに対応しつつ、消費者に対して商品の配送スケジュールを正確に明示し、手配を行うことが重要だ。
◆2.
送料の明示:消費者の半分以上が、カート内の商品を削除した理由に、予想以上に配送料が高かったためと回答している。この問題に対して、カート内の画面や購入画面で配送料を表示するだけでなく、トップページや商品ページなどに配送料を明記することで、購入前にコストを把握できる環境を整えることが重要だ。
◆3.
返品・交換ポリシー:他国と同じように、日本の消費者がオンラインショッピングに最も求めることとして、「簡単な交換/返品手続き」をあげている。多くの消費者がオンラインで安心して買い物をするためには、企業側において、より柔軟な商品の交換・返品に関するポリシーを公開することが必要だ。
また、当該レポートについて、SAP Customer Experience ソリューション 事業本部長である高山勇喜氏は、以下のように述べている。
「今回の調査では、消費者が商品の購入に至る動機やカート内の商品を削除する理由など、消費者のオンラインショッピングでの購入体験に関するインサイトを深く掘り下げました。これにより、企業やマーケティング担当者は、消費者の購入体験を阻害する原因を取り除くことが可能となり、商品割引やプロモーションのみに頼らない、コンバージョンを促すための施策を打つことができるようになります。充実したカスタマーエクスペリエンスの提供に向け、企業はリアルタイム在庫管理やECとリアル店舗との連携強化などのオムニチャネル化を促進することで、顧客に理想的なサービスを提供でき、自社ビジネスにもより良い結果をもたらすことが可能となります」
ECビジネスの成功に近道はない?
前述のように、今回のSAPによる調査では、日本をはじめとしたアジアのユーザーのオンラインでの消費動向が明らかとなったようだ。特に日本の消費者がオンラインで最も購入する商品は「ファッション(76%)」、オンラインショッピングで最も求めることは「簡単な交換/返品手続き(40%)」、「割引/プロモーション」の次に購入の動機となるのは「在庫わずかの通知(33%)」という各ポイントが浮き彫りとなった。
同社の高山氏が述べているように、こうしたポイントを踏まえた上で、消費者が購入に至るまでの各ハードルを取り除くことが、コンバージョン向上への近道だと言えるだろう。プロモーションなども大事だが、オムニチャンネル化の推進とあわせ、買い物体験の向上と、それらを通したユーザーとのロイヤリティ醸成が、長い目で見てECビジネスを成功に導くことになることを示唆する内容となったとも言える。
EC事業の成功に近道は無いのかも知れない。消費者目線で一歩一歩、施策を重ねていくことが、目的地に近づく最も有効な方法ともなりそうだ。