【徹底解説】アパレルEC最前線
近年ZOZOTOWNなどのアパレルEC特化モールだけでなく、総合ECモールもアパレルECに力を入れています。とはいえ、モールを活用しながらも自社ECを成長させていくことも重要な課題です。
アパレルECの現状
経済産業省が発表している「我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」の平成29年(2017年)版によると、平成29年のBtoC-EC市場規模は16.5兆円で前年比9.1%増となり、右肩上がりの成長を続けています
BtoC-ECのEC化率は5.79%なので、今後、EC化率とともに市場規模がさらに伸びる余地は十分にあるでしょう。しかし、世界のBtoC-ECのEC化率と比べると、日本のEC化率はまだ低い状態です。国内外問わず販売の機会を伸ばしていけるよう、各分野のEC化を進めていきたいところです。
BtoC-ECの中でもアパレルECに焦点を当てると、その市場規模は約1兆6,454億円、前年比7.6%増となっており、物販系分野のBtoC-ECではもっとも大きな市場規模を誇ります。また、売上上位の企業の多くは、前年度からの売上増を見込んでいます。アパレルECのEC化率は11.54%で、BtoC-EC市場全体に比べると高いですが、まだECに対応していないところも多いことがわかり、引き続き成長の余地があると言えるでしょう。
アパレルECの特徴のひとつが、女性ユーザーが多いことです。特に30代女性による購入が多く、今後は、20代~30代男性、40代以上の女性ユーザーの利用拡大も期待されています。さらに、アパレルECは、他のカテゴリーに比べ、スマートフォン経由の利用が多いのも特徴です。BtoC-EC市場自体もスマートフォン経由の利用が増加傾向にありますが、アパレルECにおいては、その市場規模の50%以上がスマートフォン経由とも推計されています。
伸びしろの要因
アパレルEC市場のニーズや可能性を見込んで、BtoC-ECの中でもアパレルに特化したEC支援サービスが増加しつつあります。そのことが、アパレルEC市場のさらなる成長を支える要因といえるでしょう。
物流面では、アパレルECに欠かせない検品、ニーズの多い流通加工、ささげ(撮影・採寸・原稿)業務をひとつの物流倉庫において一気通貫で行うサービスのメリットが大きくなっています。こういったサービスは以前からありましたが、配送コストが増大するなかで、いかに物流業務を効率化し、避けられるはずのミスをなくすかということが、より重要視されているのではないでしょうか。
同じく物流面で、在庫を一元管理できるサービスも増えています。アパレルECでは、最初に実店舗があり、そこからECに参入するというケースが多く見られます。また、これはアパレルECに限りませんが、AmazonやYahoo!ショッピング、楽天市場など、複数のモールに出店して多くのユーザーにアプローチしつつ、自社ECでコアなファンを醸成するという多店舗展開が、EC運営のひとつのスタンダードとなりつつあります。しかし多店舗展開をする際に、在庫管理が店舗ごとになっていると、業務が煩雑化し、手間と時間がかかることはもちろん、在庫の偏りによる売り逃しや、欠品なのに受注してしまうことなどが起きてしまいます。そういったことが起きないよう、一元化により効率的に在庫管理ができるサービスが増えているのです。
ECサイトにおける商品の見せ方も進化しつつあります。アパレルECでは、商材の特徴としてSKUが多くなる傾向がありますが、それらを的確に検索し、見やすく表示するためのサービスが登場しています。スマートフォン利用が多いので、スマートフォンの限られた画面の中で、ユーザーの求める商品や選択肢を見やすく表示することが、これまで以上に求められているのです。
見せ方という点では、SNSの普及により、ユーザー発信の情報が好まれるという傾向もあるでしょう。アパレルECでは、ユーザーが自分の好きな「インフルエンサー」のコーディネートを参考にして商品を購入する、という購買行動が増えています。そのため、インフルエンサーを活用したサービスなども登場しています。また、アパレルジャンルにおいて影響力の大きいSNSといえばインスタグラムです。このインスタグラムにECの機能が追加されたことも、見逃せません。
アパレルECでは長い間、試着ができない、サイズ感がわからないという課題がありましたが、これを解決する採寸サービスもいくつか登場しています。同サービスはデータが貯まることで精度が増していくので、今後どこまで正確なサービスを提供できるかが楽しみなところです。
アパレルECの課題
BtoC-EC市場の中でも成長の可能性の大きいアパレルEC。それを支えるさまざまなサービスが登場していますが、EC事業者にそういった新たなサービスの認知が進んでいないという課題があります。
現時点でそれなりに売上が伸びており、日々の業務や販促・マーケティング施策に追われていると、なかなか新たなサービスを導入する時間やきっかけがないというのはよくある話です。しかし、EC市場は変化のスピードが非常に速く、そのなかで成長を続けるためには、つねに新たな情報を収集し、対応することが求められます。今回の特集では、アパレルECの最新情報とそれに対応するサービスを紹介しています。他の多くの事業者がまだ着手していないときこそ差をつけるチャンスです。
アパレルECの課題としてもうひとつ挙げられるのが、返品についてです。ア
パレルECでは実店舗のように試着ができないため、実際に商品を身に着けたときのサイズ感がわかりにくいという課題がずっとありました。前段の通り、それを解決するサービスも登場しているわけですが、もっと簡単な解決法として、気軽に返品を受け付けるというやり方があります。実際にアメリカや中国など海外では、サイズが合わなかったら返品・交換するということが気軽にできるEC店舗が多いようです。EC事業者としては、返品交換は手間もコストもかかるので避けたいところかもしれません。しかし、そういった手間のかかる返品対応を任せることのできる物流サービスも登場しています。サイズを試して気軽に返品交換ができるEC店舗が増えれば、消費者がアパレルECを利用する機会はさらに増えるのではないでしょうか。
以上のような課題はありますが、それに対応する新サービスも順次登場しており、全体的に見れば、アパレルECはやはり右肩上がりの成長を続けていると言えるでしょう。
アパレル業界の未来にECは必要不可欠な存在
冒頭で説明した通り、アパレルECは物販系分野のBtoC-ECの中でもっとも大きな市場規模であるとはいえ、EC化率はまだ11. 54%にとどまっています。しかし、EC市場の拡大や消費者行動の変化などを踏まえると、現在ECに注力していない企業は、マーケティング戦略として早急にECに取り組むべきでしょう。
実店舗とEC店舗の両方を運営しているアパレル企業の事例を見ると、実店舗のみを運営するより、顧客との接触回数が多くなることがわかります。具体的には、ECサイトで商品を見て興味を持った顧客が、実際の商品を確かめるために店舗を訪れる、あるいは実店舗では購入に至らなかったが後からECで購入する、という消費者の行動が見られます。
接触頻度が多くなることにより、リピーター育成にもつながります。ECに参入することは、ただ販売チャネルが増えるだけでなく、Webマーケティング戦略として重要なのです。
一方、EC店舗のみを運営しているアパレル企業の場合、新しく実店舗を作るというのは現実的ではないと思います。そこで、実店舗に比べて接触回数が少ない部分を補うべく、UI・UXの面で差別化を図ると良いでしょう。
Web接客と呼ばれる、実店舗を訪れているときのように、個々のニーズに応じたおすすめ商品やクーポンなどの案内や、チャットなどですぐに問い合わせができるといった施策も効果的です。