宅配クライシス、再考。 これからのEC物流

ECのミカタ編集部

社会問題として大きくクローズアップされた“宅配クライシス”。その間、物流企業のたゆまぬ努力により、様々な業務効率化の施策が実施されています。最近でこそ、マスメディアを賑わすことはなくなりましたが、決して問題が解消されたわけではありません。今なお、根強く残る宅配クライシス問題。解決にはEC事業者、物流企業双方の更なる取り組みが必要になるでしょう。

増加の一途をたどる荷量 値上げだけでは解決しない 宅配クライシス

国土交通省の調査によれば、平成29年度の宅配便取扱個数は42億5133万個で、前年度の40億1,900万個と比しても、105.8%という伸びを示しました。

宅配便個数の増加はまさにうなぎ上りで、昨今のEC市場の活況を見ても、増加することはあっても、減ることは考えにくい状況です。その一方で、宅配業者ではドライバー不足が課題となっており、宅配料金の値上げによって、収益改善を図り、それを原資として人材の確保や設備投資を行いました。EC事業者にとっては、経営を圧迫しかねないほどの大幅値上げでしたが、それでも十分な状況改善に至っていないのが現状です。

宅配便取扱個数の推移(国土交通省調べ)

(注1)平成19年度からゆうパック(日本郵便㈱)の実績が調査の対象となっている。

(注2)日本郵便㈱については、航空等利用運送事業に係る宅配便も含めトラック運送として集計している。

(注3)①平成28年10月より宅配便取扱個数に含めることとした日本郵便㈱が取扱う「ゆうパケット」を除くとともに、②佐川急便㈱においては決算期の変更があったため、平成29 年度は平成29年3月21日~平成30年3月31日(376日分)で集計しているが、従前の決算期どおり平成29年3月21日~平成30年3月20日(365日分)で集計すると、全体の宅配便取扱個数の合計は、39億5,133万個、対前年度比101.1%となった。

出所:国土交通省「平成29年度宅配便等取扱個数の調査及び集計方法」

ロジスティクス全体の 効率化が必須の時代

配送料の値上げがあったとしても、EC事業者としては配送料金の値上げ分をすべて消費者に転嫁するわけにもいきません。むしろ、競争が激化するEC業界においては、受注からお届けまでの時間を短縮するなど、消費者の利便性向上や商品を開梱する時の顧客体験向上などで、競争力を高める必要があります。ただこの状況に、物流支援を行う企業が何も対策を行なっていないわけではありません。いかにEC事業者のコストを抑えつつ、価値の高いサービスを提供できるか日進月歩で進化していることをご存知でしょうか。

たとえば、EC事業者が倉庫をシェアリングすることにより、床代をはじめとする物流コストを低減するロジスティクス事業者などを活用するのも有効な手段です。

また、これまでは発送数の少ないEC事業者はアウトソースが難しい状況でしたが、小規模やスタートアップのEC事業者を支援するサービスも増えています。

また、配送シーンのみならず、倉庫業務も人手に頼るのが一般的で、こちらでも人手不足は深刻です。しかし最新の自動化設備などを導入している倉庫なら、人員は最小限に抑えることができるので、人手に頼ることなく、安定的にコストを削減できます。

いま、EC事業者に求められるのは、物流企業の最新動向を把握しながら、ECの仕組み全体を見直して、質を向上させながらも宅配クライシスに対応することなのです。

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