【メルカリ調査】リユースECは新品市場の活性化にも寄与する可能性 フリマアプリでの売却比率が10%上がれば、フリマアプリ利用者が新品に支払える上限金額も上昇

ECのミカタ編集部

メルカリ総合研究所(運営:株式会社メルカリ)は、慶應義塾大学大学院経営管理研究科 山本晶准教授と共同で、20代〜30代のフリマアプリ利用者・非利用者1,648名を対象に、フリマアプリで売れる価格が新品の購買意思決定に与える影響を調査し、その結果を公表した。ここではその概要についてポイントを絞って見て行く。

調査概要

2020年2月にメルカリ総合研究所と国際大学グローバル・コミュニケーション・センター講師山口真一氏が共同で実施した調査では、フリマアプリ利用により、年間約484億円に及ぶ新品への消費喚起効果があることがわかったという。この結果をふまえ、「フリマアプリで売れる価格が新品購入にどのような影響を及ぼすか」を明らかにすべく新たに調査を実施した。

今回の調査は、「メルカリ」での取引量が多い「ジーンズ」ならびに「タブレット端末」の買い物シーンを想定。「新品価格」「売却比率(新品価格に占めるフリマアプリで売れる価格の割合)」「売却日数(フリマアプリ出品後に何日で売れるか)」「すでに保有しているアイテムとのフィット」の4つの要因の組み合わせが、一次流通市場における新品の購入にどのような影響を及ぼすかを分析している。

調査時期:2020年3月11日(水)〜2020年3月12日(木)

調査方法:インターネット調査

分析手法:コンジョイント分析

調査対象:全国、20代~30代の男女、1,648名
     フリマアプリ購入のみ利用経験あり412名
     フリマアプリ出品のみ利用経験あり412名
     フリマアプリ購入・出品両方の利用経験あり412名
     フリマアプリ利用経験なし412名

その他 :ジーンズ及びタブレット端末の2商材で調査を実施
     調査対象者における2商材の基本情報は以下の通り
     ●ジーンズ平均所有数3.8本・支払意思額 平均8,577円
     ●タブレット端末平均所有数0.6台・支払意思額 平均27,462円

出品経験者は、新品購入を検討する際に価格の影響を受けにくい

出品経験者は、新品購入を検討する際に価格の影響を受けにくい

コンジョイント分析により「ジーンズ」「タブレット端末」の販売価格別の部分効用値を算出したものだ。0を起点に、グラフが上に伸びるほど購入意向が高まり、下に伸びるほど購入意向が低下する。

フリマアプリ出品経験者・非利用者別にグラフを見ると、以下のことを示しているとしている。

ジーンズの価格が、5,000円の場合、フリマアプリ出品経験者は非利用者に比べ購入意向が上がらない

20,000円の場合、フリマアプリ出品経験者は非利用者に比べ購入意向が低下しない

※ジーンズのグラフを例として記載

以上のことから、フリマアプリ出品経験者は非利用者と比べて販売価格の影響を受けにくいことがわかった。

出品経験者は、新品購入時に高価でもフリマで売れやすいアイテムを選ぶ

出品経験者は、新品購入時に高価でもフリマで売れやすいアイテムを選ぶ

フリマアプリ出品経験者は、『新品価格の30%・5日で売却可能』な5,000円のジーンズより、『新品価格の50%・3日で売却可能』である10,000円のジーンズを購入したいと思うことがわかったとしている。

コンジョイント分析では、購入意向が高まる属性とその水準の組み合わせを導き出すことが可能だ。「既に保有しているアパレルとのフィット」という属性は、「高」「中」「低」3つの水準で調査をしたが、ここでは「中」の場合のみ(手持ちのアパレルとのフィット感は中程度感じる商品)を抽出し、「価格」「売却比率」「売却日数」の3属性において購入意向の高まる水準の組み合わせを分析。

組み合わせ別に、フリマアプリ出品経験者の購入しやすさをスコアリングすると以下のような結果となった。スコアが大きくなるほど購入しやすいことを示している。

新品価格の30%・5日で売却可能な5,000円のジーンズのスコア→10.10
新品価格の50%・3日で売却可能な10,000円のジーンズのスコア→10.12

売却可能な価格の比率がより高く、フリマアプリでより早く売却できる場合、販売価格が高いジーンズのほうがフリマアプリ出品経験者に購入されやすくなることを示している。

出品経験者は、売却比率が10%上昇すると新品に支払う上限金額も上昇する

出品経験者は、売却比率が10%上昇すると新品に支払う上限金額も上昇する

フリマアプリ出品経験者は、売却比率が10%上昇すると、新品ジーンズに支払える上限金額が約2,000円、タブレット端末では約2,400円上昇することがわかったとしている。

リユースECは新品市場の活性化にも寄与か

調査に際して慶應義塾大学大学院経営管理研究科 山本 晶 准教授は、次のように述べている。

「一般論として、中古品が新品と代替関係にある場合は、二次流通市場は一次流通市場にとって脅威となります。しかし今回の調査結果からは、二次流通市場の存在が一次流通市場における顧客単価の上昇という意味でプラスの影響があることが明らかになりました。実は健全な二次流通市場の存在が一次流通市場に好影響をもたらす場合があることは、メジャーリーグのチケットの研究などでも検証されています。二次流通市場の存在は、消費者に自らが購入した商品を使用しない場合は「出品する」という新しい選択肢を提供しています。今回の調査では、特に出品経験のある消費者がこの新しい選択肢のメリットを享受し、一次流通市場でより高価格な商品を選択する傾向がみられました。

スマートフォンを用いてフリマアプリを活用する消費者は、二次流通市場における価格や使用後の販売可能性を把握したうえで、一次流通市場での購入を検討することが可能です。二次流通市場で出品するという選択肢を持つ消費者は、自ら商品を利用して得られる効用だけでなく、二次流通市場での売却から得られる効用も享受することができます。こうした売却益を含めると、消費者が支払う事実上の価格は、一次流通の販売価格より低くなる可能性があります。

また、一次流通で購入した商品を消費者が十分に使いこなせない場合、消費者にとっては損失となりますが、二次流通市場で売却できればこうした損失の可能性を低下することができます。こうした効果により、二次流通市場の存在は一次流通市場における購買のハードルを低下させ、購買を後押しし、新品に支払える上限金額を上昇させると考えられます。二次流通での売却可能性や売却益を含めた購買意思決定は、以前から自動車や住宅といった製品カテゴリーで行われてきました。今回、ジーンズやタブレットのような製品カテゴリーで二次流通での売却を含めた意思決定が確認されたのはフリマアプリの登場による消費行動の変化と言えます」

このように、一般的にリユースECにおいては、中古アイテムの売買という閉じた市場であり、より安価に購入できることから、新製品市場と相対するものだとの認識されていることが多いかと思われるが、それとは裏腹に、一定の条件下ではるものの、むしろ後者の活性化に寄与し得ることを示唆する興味深い調査となったようだ。

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