化粧品EC市場は2020年に前年比20.6%増の3,757億円に【富士経済調査】

ECのミカタ編集部

総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済(東京都中央区日本橋小伝馬町 社長 清口 正夫 03-3664-5811)は、拡大している国内の化粧品EC市場を調査した。その結果を「新型コロナウイルスを契機に拡大する化粧品EC市場の現状と将来展望」にまとめている。ここではその概要についてポイントを絞って見ていく。

調査概要

今回の調査では、富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用している。

メーカーが自社通販サイトまたはECプラットフォームのメーカー公式店舗を通じて直接消費者に販売する形態(DtoC)を対象とし、ECプラットフォームが運営するモールや流通企業が運営するECを通じて販売する形態は対象外としている。また、国内で販売される商品を対象とし、越境ECや海外で販売される商品は対象外としている。

国内の化粧品EC市場

国内の化粧品EC市場

◆国内の化粧品全体市場、2020年は2桁減

国内の化粧品全体市場はインバウンド需要やエイジングケア志向の高まりから機能性を重視した、単価の高い商品を選択する消費者の増加を受けて2019年まで拡大を続けてきた。しかし、2020年はインバウンド需要の消失や実店舗の臨時休業、また、消費者もメイクアップなどでは使用機会が減少し、市場は前年比二桁減となった。

◆2021年は前年比3.3%増を見込む

2021年は前年に比べ商業施設の営業状況が改善していることや、外出機会も徐々に増えており、前年比3.3%増が見込まれる。一方、化粧品通販市場は参入のし易さもあってプレーヤーが増えている。また、楽天市場やAmazon.co.jpといったECプラットフォームが好調で、利便性やポイント還元などによって需要を取り込んでおり、市場は拡大している。

◆特に化粧品ECは拡大

特に化粧品ECは、近年のデジタル化の加速を受けて重点チャネルの1つに位置付けられており、制度品系メーカー(直接小売店と契約して商品を販売する、制度品システムを採用するメーカー)や百貨店系メーカー(百貨店における対面のカウンセリング販売を主体に展開するメーカー)といった実店舗販売を主体にしてきたメーカーでも新規顧客の獲得を目的に展開を強化していることから、市場が拡大している。

◆化粧品EC市場は2020年に前年比20.6%増の3,757億円に

化粧品EC市場は2020年に前年比20.6%増の3,757億円となった。また、化粧品全体市場に占める割合は前年比4.0ポイント上昇し13.7%となった。
新型コロナの感染拡大による緊急事態宣言の発出で百貨店や直営店、バラエティショップなどの実店舗が臨時休業を強いられたことから、百貨店系メーカーやライフスタイル系メーカーを中心にウェブ広告やライブコマースが強化され、ECがその需要の受け皿になった。

メーカー形態別の化粧品EC市場

メーカー形態別の化粧品EC市場

◆カウンセリング系メーカーは特にECへ注力

ECの実績が最も大きいのがECをメインチャネルの1つとする通信販売系メーカーで、次いで大きいのが百貨店・カウンセリング系メーカーである。百貨店・カウンセリング系メーカーは、百貨店の店舗数が減少していることからECに注力している。

◆EC化率が最も高いのが通信販売系メーカー

2020年は臨時休業を強いられた緊急事態宣言中にEC強化の動きが顕著になり、解除後も肌測定ツールやメイクアップシミュレーションなどをECサイトで展開したりし、大幅に実績を伸ばした。 EC化率が最も高いのが通信販売系メーカーで、2020年に46.8%となった。

◆総じてEC化率が高まった

スマートフォンの普及やコスト圧縮を目的に、カタログ発行部数やインフォマーシャルの投下量を減らしてECに注力するメーカーが増加しており、EC化率の上昇が続いている。百貨店や直営店といった実店舗をメインチャネルとしていた百貨店・カウンセリング系メーカーやライフスタイル系メーカーも前年比11.5ポイント増の17.9%、同6.5ポイント増の17.5%と、それぞれEC化率が高まった。

コロナ後でもEC化は進む

化粧品市場においては、実店舗も展開してきた通信販売系メーカーでは実店舗からECへのシフトを打ち出すところも見られたようだ。2021年は外出機会が徐々に増えているが、在宅率が高い状態が続いており、EC利用が増加していることから、市場は続伸するとみられるとしている。

また2022年以降新型コロナの流行が落ち着けば、百貨店・カウンセリング系メーカーについては、カウンターでの肌測定やタッチアップを求める消費者が実店舗に回帰するため、EC化率の伸びが一時的に停滞することも考えられそうだ。

一方、ライフスタイル系メーカーについては、新規性の高い新興ブランドなどが人気となる傾向があり、こうしたブランドでは直営店や配荷店舗数にも限りがあることから、ECを利用する消費者も多く、EC化率が引き続き高まるとみられる。

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