ヤマト運輸が物流システムを大改革、「止めない物流」の衝撃

着々と進む「超速革命」への準備

物流最大手のヤマトホールディングス(ヤマト運輸)では木川眞社長が「宅急便誕生以来」と語るほどの大改革が進んでいる。それは巨大物流拠点を24時間稼働させ続ける「止めない物流」だ。
「止めない物流」は、インターネット通販市場が急拡大する中で、増え続ける荷物に対抗するために構想された。裏を返せば、このまま行くと配送が追いつかなくなることが予想されており、背景に強い危機感があることを意味する。

ヤマト運輸の従来の物流モデルは、日中に集めた荷物をその都市の「ターミナル」と呼ばれる大型拠点間へ集約し、そこから夜間に全国各地のターミナルへ輸送。さらに営業所へ送って、近隣の企業や個人宅などへ届けるというものだ。
しかし、朝到着した大量の荷物を仕分けて各営業所に送る作業が過酷で、ボトルネックとなっている。

この問題を打破するために打ち出したのが、物流のスピードアップと高品質、ローコストの3つの要素の掛け算で物流の改革を目指す「バリュー・ネットワーキング」構想だ。

本構想ではターミナルと呼ばれる大型拠点が物流の核となる。それは次のような位置づけだ。

<すでに稼働しているターミナル>
◎東京:羽田クロノゲート(関東の物流拠点であるとともに、世界への玄関口の役割を果たす。2013年10月稼働開始)
◎神奈川:厚木ゲートウェイ(関東の物流拠点のひとつ。2013年8月稼働開始)
◎ 沖縄:沖縄国際交流ハブ(那覇市にあり、日本とアジア各国を結ぶ。)

<今後、開設予定のターミナル>
◎ 愛知:ゲートウェイ(名称未定。2016年竣工予定)
◎ 大阪:ゲートウェイ(名称未定。2016年竣工予定)

愛知と大阪のゲートウェイが完成すれば、東京—中京—大阪の3大都市圏内では、当日輸送も可能になる。

王者と組んだ王者、ヤマト運輸とアマゾン

ヤマト運輸の動きはEC業界にも大きな影響を与えている。
一例を挙げれば、ヤマト運輸の厚木ゲートウェイの稼働開始と時期を合わせて、アマゾンは小田原市に「アマゾン小田原フルフィルメントセンター」をオープンさせた。それ以前の主力であった「アマゾン市川フルフィルメントセンター」の約3倍の規模を誇る巨大施設だ。

ヤマト運輸とアマゾンの2つの施設の開設時期が近いこと、両施設の距離が約40kmしか離れていないところから見て、両者で互恵関係を結んでいることが想像される。実際、報道によると、荷物はある程度アマゾンで仕分けされてからヤマトに持ち込まれ、全国に発送されているという。

今後はほかの大手ECとの間でも、同様の動きが見られるかもしれない。

しかし、ヤマト運輸の「バリュー・ネットワーキング」構想は、まだ全貌を現していない。
中京と大阪の都市圏にゲートウェイが完成し、東京と結ばれたとき、本当の「超速革命」が実現する。

そのときの「止めない物流」は、衝撃的なものとなるだろう。