荷主とは?省エネ法における荷主制度の背景や遵守すべき義務を紹介
荷物の発送者を意味する「荷主」。省エネ法においてはEC事業者も荷主に定義され、基準の遵守や数値目標が努力義務として示されている他、特定の条件に該当する荷主には「中長期計画の作成」などが義務付けられている。荷主の意味や範囲、省エネに向けた取り組みについて知りたいと考える担当者もいるのではないだろうか。
今回は、荷主が示す範囲や省エネ法における荷主の取り扱い、定められた義務、関連する法律などについて紹介する。基本的な知識をおさえ、自社の取り組みを見直すきっかけとしてほしい。
目次
●荷主とは?
●省エネ法における荷主の取り扱い
●省エネ法に定められた荷主の義務
●省エネ法と荷主に関する法律の紹介
●まとめ
荷主とは?
荷主とは、自らの貨物を輸送業者に輸送させるもののこと。ここでは、「省エネ法」における荷主の定義について詳しくみていこう。
「一号荷主」とは
「一号荷主」とは、改正省エネ法第105条の第1号で定義されているもののこと。貨物輸送業者との契約により、貨物を輸送させている事業者を指すが、他の事業者により実質的に貨物の輸送方法が決定されている場合を除く。
「貨物輸送業者との契約」を誰が行うかにより、「荷送(荷物を送る)側」が荷主になることもあれば、「荷受(荷物を受け取る)側」が荷主になることもある。
「二号荷主」とは
「二号荷主」とは、改正省エネ法第105条の第2号で定義されている荷主のこと。貨物輸送業者との契約がなくとも、貨物輸送事業者に貨物を輸送させている事業者との契約等において、当該貨物の輸送方法等を実質的に決定している事業者が該当する。
この「輸送の方法等を実質的に決定している」とは、「輸送方法と金額」「受取日時」「受取場所」の全てを決める場合を指す。例として、実際に貨物輸送事業者との契約を行っているのは「仲介事業者」であっても、「発注元事業者」が貨物の輸送方法などを実質的に決定して仲介業者に指示する場合、発注元事業者が荷主となる。
「準荷主」とは
「準荷主」とは、自らの事業に関して貨物輸送事業者が輸送する貨物を受け取ったり引き渡したりするもので、当該貨物の受け取りまたは引き渡しを行う日時や場所を指示することができるもののこと。
例として、荷送側が輸送契約を結んでいる「荷主」で、貨物の輸送契約に一定の幅が許容されている場合(例:午前中に先方の工場へ配送)、その日時や場所を具体的に指示(例:10時に工場内のA倉庫前)できる荷受側は「準荷主」となる。
省エネ法における荷主の取り扱い
ここでは、省エネ法の概要や、改正によって拡大した荷主の範囲について紹介する。
省エネ法の概要
1979年に制定された省エネ法は、正式には「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」といい、工場等の設置者や輸送事業者、荷主に対して、省エネに向けた取り組みを実施する際の目安・判断基準を示し、経済的・社会的環境に応じた燃料資源の有効活用・確保を図ることを目的としている。
なお、省エネ法における「エネルギー」の対象となるものは、以下の通りだ。
【対象となるもの】
●燃料(ガソリン、重油、可燃性天然ガス、石炭 など)
●熱(蒸気、温水、冷水など上記に示す燃料を熱源とするもの)
●電気(上記に示す燃料を起源とするもの)
【非対象となるもの】
●廃棄物からの回収エネルギー
●非化石エネルギー(風力、太陽光)
荷主制度の背景
省エネ法では、直接エネルギーを使用する主体(輸送事業者など)でない「荷主」に対しても、省エネルギー対策を求めることとしている。これは、鉄道や運搬車両の利用が荷主による指示によって初めて可能であることに由来するもので、貨物輸送業者と荷主の連携を促すことで省エネルギー対策が効率的に推進されることが期待されている。
改正省エネ法により、EC事業者も「荷主」の対象に
2018年に施行された改正省エネ法では、「連携省エネルギー計画の認定(企業連携による省エネの促進)」や「認定管理統括事業者の認定(グループ企業単位の省エネの促進)」とともに、「荷主の定義の見直しと準荷主の位置づけ」が行われた。
これまでは貨物の所有権のないネット小売事業者は荷主の対象とされていなかったが、近年のネット通販事情の拡大に伴う小口配送や再配達の増加によりエネルギー使用量が増加したことを受け、EC事業者をなどを含めた輸送の方法等を決定している事業者を、貨物の所有権に関わらず規制の対象とすることとした。ただし、貨物輸送事業者との契約がなく、輸送の方法等を決定していないモール事業者やCtoCの仲介事業者は対象外とされている。
省エネ法に定められた荷主の義務
省エネ法では、すべての荷主に対する努力義務と、特定荷主に対する義務を定めている。それぞれについて詳しくみていこう。
荷主の判断基準
省エネ法では、荷主に対し、国が定めた「貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送に係るエネルギーの使用の合理化に関する荷主の判断の基準」(通称「荷主の判断基準」)を遵守するとともに、エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減する努力義務を示している。
具体的な内容は以下の通りだ。
【エネルギーの使用の合理化の基準】
(1)共通的な取り組み
●取組方針の作成とその効果等の把握
●輸送効率向上のための措置
●準荷主との連携
(2)主に企業向けの大口貨物の配送効率向上の取組
(3)主に消費者向けの小口貨物の配送効率向上の取組
【エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置】
(1)共通的な取り組み
●取組方針の作成とその効果等の把握
●関連インフラの整備
●貨物輸送事業者等との連携
●環境に配慮した製品開発及び生産体制整備
(2)主に企業向けの大口貨物の配送効率向上の取組
(3)主に消費者向けの小口貨物の配送効率向上の取組
特定荷主の義務内容
「特定荷主」とは、貨物輸送量が3,000万トンキロ以上の荷主のこと。すべての荷主は、自らの貨物輸送量を把握し、年度の輸送量が3,000万トンキロを超えた場合は、特定荷主として「貨物の輸送量届書」を管轄地域の経済産業局長あてに提出しなければならない。
また、「荷主の判断基準」がすべての荷主の「努力義務」であるのに対し、特定荷主は必ず年に1回、「中長期計画の作成・提出」と「定期の報告」を、主務大臣(経済産業大臣及び事業所轄大臣)に行わなければならないことに注意が必要だ。
省エネ法と荷主に関する法律の紹介
貨物の輸送に係るエネルギー使用量の算定方法は、平成18年経済産業省告示第66号「貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送に係るエネルギーの使用量の算定の方法」において、「燃料法」「燃費法」「トンキロ法」の3つの方法が定められている。それぞれの特徴は以下の通りだ。
●燃料法:燃料使用量からエネルギー使用量を算定。車両の燃料使用量が把握できる場合に使用する。
●燃費法:燃費と輸送距離からエネルギー使用量を算定。車両の燃費と輸送距離が把握できる場合に使用する
●改良トンキロ法:トラックにおける積載率と車両の燃料種類、最大積載量別の輸送トンキロからエネルギー使用量を算定。
●従来トンキロ法:船舶・鉄道・航空機など、輸送機関別に輸送トンキロからエネルギー使用量を算定。
詳しくは、経済産業省 資源エネルギー庁のポータルサイトなどを参考にしよう。
参考:経済産業省 資源エネルギー庁『法制度・ガイドライン等』
まとめ
改正省エネ法によってEC事業者も荷主に含まれるようになったため、該当する企業は「荷主の判断基準」を遵守することや、エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減することが努力義務として課されることとなる。貨物輸送量が3,000万トンキロ以上の事業者は「特定荷主」となり、義務が発生することにも注意が必要だ。経済的・社会的環境に配慮するためにも、自社の省エネ対策を見直してみてはいかがだろうか。
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