アパレル業界のライブコマース事例。ライブコマースの種類や成功させるポイント

ECのミカタ編集部

ECサイトとライブ配信を掛け合わせた新たな購買方法として注目される「ライブコマース」。ファッションアイテムとも相性が良いことから、導入したいと考えるアパレル企業の担当者もいるのではないだろうか。

今回は、アパレル業界におけるライブコマースの活用事例や実際に活用する際に知っておきたいライブコマースの種類などを紹介していく。自社でライブコマースを導入する際の参考にしてもらいたい。

目次

●アパレル業界におけるライブコマース
●ライブコマースを取り入れたアパレルブランドの事例紹介
●アパレル業界におけるライブコマースの種類
●ライブコマースを成功させるポイント
●まとめ

アパレル業界におけるライブコマース

ライブコマースとは、ライブ配信で商品のアピールを行い、消費者とリアルタイムに交流しながら商品の販売ができる新たな購買方法だ。近年、アパレル業界でもライブコマースを取り入れた販売手法が広がりつつある。まずは、アパレル業界の現状とライブコマースの接客方法について確認しておこう。

アパレル業界の現状とライブコマースが注目される背景


新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、人の動きに制限がかかるなど日常生活が一変している。接客業が主となるアパレル業界においては、閉店や減収が続き、販売戦略の見直しを迫られている企業も多いだろう。そうした中、急速に拡大し人気を集めているのが「ライブコマース」だ。

ライブコマースによる販売は、自宅にいながらも店舗で接客を受けているような安心感を消費者に与えることができる。消費者の質問に、配信者がリアルタイムに回答できるなど、双方向のやり取りが実現できることから、消費者は満足感を持って購入に至るケースが少なくない。

ECサイトによる販売の場合、画像や紹介文だけでは購入に不安感のある消費者も多く、ライブコマースの導入はますます増えていくことが予想される。

ライブコマースの接客方法


ライブコマースの接客方法は「1対N」「1対1」の2種類がある。

「1対N」とは、1回のライブ配信で複数の視聴者に周知する方法だ。一度に多くの視聴者に対して配信ができるため、効率的に売上を伸ばすことも可能である。一方で、配信側の集客力やトーク力、視聴者を惹きつけるようなエンターテインメント性などが、コンテンツの魅力を左右する。

SNSのフォロワーが多い自社のスタッフがいる場合や、自社商品に詳しいインフルエンサーなどを起用できる場合には、短時間で大きな売上効果を期待できる「1対N」の導入がおすすめだ。

一方「1対1」は、実店舗での接客に近い方法と言える。一人ひとりのニーズに合わせた提案が可能で、地道で丁寧な対応が求められるが、特別感のある対応のため顧客満足度は高めやすい。満足度の高さから、購入率や顧客単価アップにつながる事例もある。

ライブコマースを始めたいが、誰がどのように配信したら良いか分からない場合には、「1対1」から始めてみるのもおすすめだ。売上が大きいスタッフを配信者として起用すれば、効率的に売り上げを伸ばすことも可能だろう。


ライブコマースを取り入れたアパレルブランドの事例紹介

実際に、ライブコマースを活用しているアパレル企業の活用事例を見ていこう。

ユナイテッドアローズ


株式会社ユナイテッドアローズは、紳士服・婦人服および雑貨等の企画・仕入および販売を行っている会社だ。2020年8月から自社の通販サイト「ユナイテッドアローズオンラインストア」で購入が可能なライブコマース「STYLING GUIDE」を始めた。ライブ配信時に、ワンクリックでショッピングページに移行できるため、視聴中でも商品購入までがスムーズに行える点が魅力だ。

ユニクロ/ジーユー


日本の代表的ファストファッションブランドである、ユニクロやジーユーにおいてもライブコマースが取り入れられている。ユニクロが「UNIQLO LIVE STATION」、ジーユーが「GU LIVE STATION」という名称で、ECサイトとアプリにおいてライブコマースを開始。有名スタイリストやファッションモデルが登場し、最新アイテムのコーディネートのポイントなどをライブで解説している。

ベイクルーズ


全43ブランドを取り扱うベイクルーズは、2020年5月から自社のECサイトにおいてライブコマースを開始。店頭でファッションアドバイザーとして活躍しているスタッフや、商品知識があるスタッフを配信者として抜擢している。そうすることで、消費者からの質問にすぐに回答できる体制の整備や、スタイリングの提案も交えたアイテム紹介を展開している。

関連記事:ベイクルーズのライブコマース運営とは 最大9000人の視聴者を集める集客力

LIVE SHOPPING


「LIVE SHOPPING」は、宝島社の全11誌の女性ファッション雑誌の編集者がプロデュースするライブコマースのコンテンツだ。ファッション雑誌のコンテンツを活かした、ライブコマース・サービスは業界初のため話題となっている。

関連記事:宝島社とライブコマースのTAGsAPIが提携 EC事業者は複数チャネルでの配信が可能に

SHIPS


SHIPSは、2020年5月にライブコマース「SHIPS SHOPPING TV」をスタートさせた。自社のブランドだけではなく、他社のブランドも取り入れたコーディネートの提案を行うことで、女性からの支持も高い。集客方法は、インスタグラムによる配信とメール会員への告知で、視聴者数を伸ばしている。

nano UNIVERSE


国内で1300店舗を展開する総合アパレル企業TSIの傘下であるnano UNIVERSEもライブコマースを配信している。AKBメンバーとのコラボ企画や着回し術を学べる内容が人気となっている。

スーツのAOKI


東京オリンピックのオフィシャルサポーターでもあった株式会社スーツのAOKIは、2020年にライブコマースを開始した。コロナ禍におけるリモートワークが増加傾向にある中、「パジャマスーツ」1着で仕事や旅行、散歩、リモート、買い物、カフェ、昼寝、ゴルフと8つの場面を着まわせると注目が集まった。


アパレル業界におけるライブコマースの種類

実際にライブコマースを取り入れたい場合、どのような配信ができるのか気になる担当者もいるだろう。ライブコマースは、「SNS型」「Saas型」「ECモール型」の3種類がある。アパレル業界においての主流は「SNS型」と「Saas型」となるため、今回はこの2つについて解説していこう。

SNS型


SNS型のライブコマースとは、SNSに設定されているライブ配信機能を活用した形態となる。InstagramやFacebookのアカウントを持っていれば、無料で始めることができ、フォロワーへのアプローチがしやすいといったメリットがある。消費者とのコミュニケーションツールとしてライブ配信を活用する他、消費者も手軽に視聴しやすいことから活用しているアパレル企業も少なくない。

関連記事:Instagramで作り上げる顧客との“絆”。 今、EC事業者が知っておくべき最新活用法とは?

SaaS型


SaaS型のライブコマースとは、自社のECサイトにライブコマースの機能を追加できるサービスを利用する形態だ。自社サイトにライブ機能を埋め込むため、消費者はライブ配信の画像から、直接紹介されたページに進み購入まで進めることができる。また、売上や消費者の行動データを取得・分析が可能なことも大きな特徴だ。ただし、SNS型に比べ、初期費用がかかることや機能を埋め込むため運用までに時間がかかることを知っておこう。


ライブコマースを成功させるポイント

ここまで、アパレル業界におけるライブコマースの事例や種類を見てきたが、ライブコマースを成功させるためにはテクニックが必要となる。成功させるポイントを4つにまとめたので、ライブコマースを取り入れる際の参考にしてもらいたい。

ターゲットや商品を分析して配信者を決定する


ライブコマースの主体は「配信者」である。そのため、ターゲットや商品を分析した上で配信者を決定していくことが重要だ。ライブコマースの配信者は「タレントやインフルエンサー」または「自社社員」を起用するケースが多い。

知名度が高いタレントやインフルエンサーの起用は、集客力につながることが期待できるが、商品の内容を熟知していない可能性もある。そのため、「事前に商品の魅力を理解してもらう」「自社社員がサポートに入る」といった対応が必要だ。

商品への理解がある自社社員を起用する場合は、「トーク力がある」「臨機応変な対応ができる」人に担当してもらうと良いだろう。継続して出演することで、ファン獲得も期待できる。

顧客目線に立って商品説明を行う


アパレル販売をライブコマースで行う場合は、顧客目線に合わせた丁寧な対応ができるかも重要なポイントだ。事前告知の段階で、出演モデルの身長を掲載しておくことで、消費者が商品イメージがしやすいといった工夫をしているブランドもある。

データを分析して配信効果を確認する


ライブコマース後は、視聴者数や購入件数、人気商品の傾向などのデータを分析し、配信の効果を測定することも重要だ。データ分析により、ライブコマース販売に向いている商品や時間設定・時間帯などを読み取り、次回の配信を検討しよう。また、視聴者からの質問や感想なども重要なデータとして、商品企画や開発時に活かしたい。

アーカイブ配信をして消費者の閲覧率を高める


ライブコマースを最大限に活かすために、配信後は自社サイトやSNSでアーカイブ配信すると、より多くの消費者が閲覧できる。そのまま映像としてアーカイブ配信するだけでなく、「インタラクティブ動画」に編集しておくことをおすすめする。

インタラクティブ動画とは、商品の詳細確認や直接購入ページへの移動するといった様々な機能を仕掛けることだ。購入に至るまでのスムーズな動線を取り入れることで、消費者の購入意欲を高め、効率的にアプローチすることが可能となるだろう。


まとめ

新型コロナウイルス感染症の拡大により販売戦略の見直しを迫られているアパレル業界において、ライブコマースは今後発展する見込みの高い販売形態だ。各ブランドの取り組みを参考にしながら、自社のECサイトの運営方法に合わせた配信サービスを工夫してもよいだろう。より多くの消費者に、自社の商品の魅力を伝える次なる手段として、ライブコマースの導入を検討してみてはいかがだろうか。


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