Instagramで作り上げる顧客との“絆”。 今、EC事業者が知っておくべき最新活用法とは?

野中 真規子

EC事業者がEC運営、とくにアパレルや食品、化粧品など商品イメージが大切なものを扱うショップにおいて、もはやInstagramは欠かせないツールである。しかし、EC事業者の多くは実際にInstagramを利用したことのない層も多く、始めたとしても機能を使いこなしきれていないのが現状ではないだろうか。

そこで、Instagramをフル活用しながら売り上げを伸ばしているアパレルブランドCOHINA(コヒナ・運営:株式会社newn)の田中絢子氏に、ECにおけるInstagramの活用方法や、実践してきた施策、今後使うとよいおすすめ機能などをうかがった。

自社サイトの集客ツールとしてInstagramを活用

――まずはCOHINAについて教えてください。

COHINAは小柄女性のためのアパレルブランドです。お客様は20代、30代の女性が多く、幅広いテイストの服がありますが、比較的ベーシックで着回ししやすい商品が多くあります。既成のデザインをサイズ直しして小さくするのではなく、小柄の方の体型をきれいに見せるために数センチ単位にこだわってイチからデザインして作っているため、通常の服とはデザインが根本から違っています。

販売は、モールを介さず自社サイトのみで行っていますが、その売り上げに大きく貢献しているのがInstagramです。

COHINAがプレオープンしたのは2017年11月ですが、Instagramはブランドがオープンする以前の9月ごろから運用していました。当初から、商品をただ宣伝するアカウントではなく、ターゲットである小柄な女性の役に立つアカウントにしようという意識で続けてきました。

私自身、身長148センチと小柄なのですが、小柄な女性は市販の服だとサイズが大きすぎるため、着る服に悩むことが多々あります。そこでインスタでは私の私服コーディネートを公開しながら、着こなしのポイントをお伝えするなど、見る方に「アカウントをフォローすることでメリットがある」と気づいていただけるような投稿を心がけていました。

おかげで、ブランドオープンしたその日からフォロワーさんが購入してくれました。その後も、投稿をするたびにフォロワーさんは増えていますし、効果に直結している感覚があります。Instagramを運用していたからこそ作れた売り上げは大きいですね。販売は自社サイトのみで、モールなどに展開していない中、Instagramは集客ツールとしてとても重宝しています。

顧客同士のコミュニケーションも生まれ、ファンが拡大

――Instagramのメリットはどんなところにあるのでしょうか。

お客様とのコミュニケーションがとりやすい点だと思います。以前ならお客様の意見を聞くためにはオフラインでのイベントやユーザーインタビューを開催する必要があり、手間もコストもかかっていたと思います。Instagramなら視聴者から気軽にコメントを受けられますし、インスタライブで「この服どう思いますか」など質問すればその場で回答を得ることもできます。コストをかけずにリアルタイムのホットな意見が聞けることは大きなメリットです。

COHINAのライブ配信は人気があり、毎回楽しみにしていると言ってくださる方も多くいます。通常のフィード投稿は商品写真がメインにはなるのですが、ライブでは動画や視聴者のコメントが出ることで、より情報量がリッチになり、自分が着用したときのイメージがわきやすく、購買の参考になると好評です。COHINAは400日連続配信など非常に長い期間、毎日インスタライブを行ってきたこともあり、効果が出てきていると感じています。

ライバーと視聴者、または視聴者同士の関係性も育ってきています。COHINAのライバーはライフスタイルも体型などもさまざまで、視聴者は誰かしらを参考にできたり、共感できたりする状態です。お目当てのライバーがいて、その人がライブに出るのを待ってくれているファンもいます。

COHINAの投稿やライブにコメントをするうちに、お客様同士のコミュニケーションも生まれていて、お互いの趣味趣向や体型を認知し合ったり、DMでやりとりしたり、お互いのアカウントを見に行ったりなどもしているようです。

ちなみにお客様もInstagramのアカウント名に「COHINA」と入れてくださっている方が多いんです。もとのアカウント名を改名したケースもあれば、COHINA関連の投稿用にアカウントを開設する方も。COHINAのページはコミュニケーションのツールであり、COHINA用のご自分をアイデンティティのひとつとして思ってくださっているのだと思います。

今はオンラインで買い物することに慣れている方が増えていることもあり、Instagramから購買につながりやすい。弊社も、Instagramがあるからこそお客様に情報を届けられていると感じています。

新機能や、今プッシュされている機能は効果が出やすい

新機能や、今プッシュされている機能は効果が出やすい

「リール」は今、Instagramがプッシュしている機能。フォロワー以外の方からも視聴できるため投稿すると反響が大きく、上位に上げてもらえるので注力しているところです。またインスタで最近導入された「まとめ機能」を使って新作の紹介をするようにして、お客様が商品情報をキャッチアップしやすいしくみも作っています。

Instagramの新機能や、プッシュしている機能がある時はボーナスタイムなので、最新動向をチェックすることも大切です。以前はInstagramとしてIGTVをプッシュしているときに、更新をがんばったらフォロワーが非常に増えました。

「ストーリーズ」もタイムリーに、かつリンクも飛ばせるのがメリットなので、やらない手はないと思います。COHINAでも、毎日更新しています。

――これから使ってみたい機能はありますか。

「チェックアウト機能」です。Instagramで決済が完了するのはうれしいですよね。
もし追加されるのであれば、インスタライブの限定公開ライブにも注力したいですね。ライブも幅広い方に公開したいときもあれば、場合によっては一部のお客様だけに届けたいこともあります。ライブをするとありがたいことにコメントをたくさんいただきますが、追いきれないこともありますし、お一人おひとりとの時間をつくる意味でも、よりクローズドなコミュニケーションをしたいですね。

気になる商品はInstagramで検索、という人が増えている

――EC事業者は、Instagramをどのように活用するといいでしょう。

今はものがあふれていて、SNSで商品ページを見せるだけでは決め手に欠け、欲しいと思ってくれる人がなかなかいないと思います。Instagramをうまく使うことで、自分たちのカラーを出し、差別化していくための世界観の表現ができます。インスタライブをお客様とのコミュニケーションの手段にしてもいいし、リールを使えば新しいお客様から見つけてもらうこともできます。表面上のアピールではなく、一歩踏み込んだ、自社が選ばれる理由づくりとしてInstagramは活用のしがいがあると思います。

他のSNSより拡散機能が少ないぶん、1人ひとりにコミットしていけるメリットもありますし、知りたい情報を調べる検索ツール的な役割もあります。最近、若い子は初めて知るブランドや商品の情報を調べる時、GoogleよりInstagramで検索して調べることも多く、コンセプトや営業時間、商品情報が整理して並べてあるページはブランドにとっての代名詞、看板という扱いになってきています。

ターゲットのイメージを想定し、あとは気軽に投稿を

ターゲットのイメージを想定し、あとは気軽に投稿を

――Instagramをこれから始める、または活用しきれていない方へのアドバイスはありますか?

商材にもよりますが、アパレル、食品、化粧品ならとくに、Instagramで検索される傾向はより増えていくと思います。売りたい商品があって、伝えたい情報があるなら、興味を持ってもらえる雰囲気を作るために始めておいたほうがいいと思います。

まずは毎日フィード投稿をすることから始めることをおすすめします。ターゲットの年齢や趣向をある程度絞り込んで、イメージ像を持っておくことは重要ですね。他社のアカウントなども参考にしながら、流行りなども意識して投稿してみてもいいかもしれません。

あまり気負わずに投稿してみる、Instagramは、そんな気軽さがいいと感じています。気取らないからこそ顧客との距離が近く感じられ、より満足度の高い購買体験を提供できるはずです。


記者プロフィール

野中 真規子

ライター。著書(電子書籍)『片付けられない、という「思い込み」をなくして、今すぐ片付けるための本』(ハウスキーピング協会)が好評発売中。ECのミカタにおいては、ECサービスのお話から伝わる本質的なメッセージを受け取り、拡散することが歓びです。

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