日本でも注目度急上昇の「ライブコマース」。メリットや成功事例、代表的な配信サービスの種類

ECのミカタ編集部

日本でもECマーケットが拡大し、オンライン上でモノの売り買いが主流になった昨今において、注目度が増している「ライブコマース」。日本国内におけるライブコマース市場は増加傾向にあり、特徴や事例を把握した上で、取り入れていきたいと考える担当者もいるのではないだろうか。

今回は、ライブコマースの仕組みや日本におけるライブコマース市場の動き、取り入れるメリット・デメリットなどを解説する。日本で取り組む事例や代表的な配信サービスにも触れるので、ライブコマースを活用する際の参考にしてほしい。

目次

●ライブコマースの仕組み
●日本におけるライブコマース市場の動き
●ライブコマースを取り入れるメリットやデメリット
●日本で取り組むライブコマースの事例
●代表的なライブコマースの配信サービスの種類
●まとめ

ライブコマースの仕組み

ライブコマースは、販売手法の一つだ。まずは、ライブコマースの仕組みについて内容や特徴を見ていこう。

ライブコマースは「EC×ライブ配信」で実現する新たなマーケット


ライブコマースとは、ECサイトとライブ配信を融合して実現した新しいオンライン販売の手法だ。視聴者のリアルな反応を確認しながらライブ配信ができるため、実店舗に近い接客が可能と言える。

ライブコマースの配信は、専用のプラットフォームもしくは、自社のECサイトやSNSのアカウントを通して行われる。視聴者は閲覧時に気に入った商品があれば、配信コンテンツを経由してそのまま商品やサービスを購入できる仕組みだ。

ライブコマースの特徴


ライブコマースの大きな特徴を、3つのポイントにまとめて詳しく説明しよう。

まず1つ目は「相互コミュニケーションによる、消費者の購入体験の満足度向上」だ。ライブ配信中は、コメント機能を活用しながら消費者とやり取りができるため、消費者の商品に対する反応や知りたい内容を直接確認が可能だ。リアルタイムなコミュニケーションを通して、その瞬間しか味わえない臨場感が購買するという体験自体の満足度を向上させる。

2つ目は「EC特有の不安の解消」だ。ライブコマースでは、画像やテキストだけでは理解しづらい部分について、消費者はその場で質問し疑問や不安を解消できる。そのため、手に取ったときのイメージが湧き、内容をしっかり理解してから購入できるため、満足感が得られやすい。

最後に3つ目は「ライブ動画閲覧から購入までのスムーズな導線」だ。ライブ動画で紹介されている商品は、その場でアクセスし購入に至るといったシンプルな設計が構築されている。購入までのプロセスが少ないことで、瞬間的に生まれた購買意欲を削ぐことなく購入に至る場合が少なくない。


日本におけるライブコマース市場の動き

日本におけるライブコマース市場は、2017年頃から浸透し始めているが、中国と比べると普及していない現状だ。実際、マイボイスコム株式会社が2021年8月1日~5日に10,083名を対象に実施した『ライブコマースに関するアンケート調査』によると、ライブコマースという言葉の認識状況について、「知らない」の回答が全体の80%以上だった。また、ライブコマースの視聴状況は、「いままで視聴したことがない」が、86%以上となっている。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、多くの店舗が一次休業を余儀なくされる中、ライブコマースの活用によって業績を伸ばしている企業もある。コロナ禍において、非接触で商品が購入できるEC販売は、消費者にとってなくてはならない存在だ。その中で、実店舗と同じようにコミュニケーションを通じた接客を可能とするライブコマースは、今後ますます活躍の場を広げると考えられている。

ライブコマースは、多様化する消費者のニーズに適応する購買形態として、ECサイトだけでなく、実店舗販売を行う企業やブランドにおいても活路となる可能性を持つだろう。

出典:マイボイスコム株式会社『ライブコマースに関するアンケート調査』

ライブコマースが日本で注目される理由

新型コロナウイルスの感染拡大によって注目度が高まるライブコマースだが、日本で注目される理由は他にもある。日本において、ライブコマースに注目が集まる理由を詳しく見ていこう。

海外での成功実績


ライブコマースの先進国である中国においては、すでに多くの国民に受け入れられている。実際、ライブコマースの利用者は2020年3月において5.6億人となり、インターネット利用者の62%に上るといったデータもある。ライブコマース市場の売上も大幅に伸びており、2020年には15兆円規模に達したとも言われている。

また、アメリカにおけるライブコマース市場は、中国に次ぐ世界2位の規模を持つ。GoogleやFacebook、AmazonといったIT企業がライブコマースサービスを開始している。他にも、さまざまなプラットフォーム、または新しいソーシャルネットワーキングサービスが生み出されていることもあり、北米におけるライブコマース市場は、今後も拡大し続けていくと予想されている。

5Gの普及によってライブ体験が変わる


5Gの普及もライブコマースの広がりを後押ししている。5Gとは第5世代移動通信システムと言われ、高速かつ大容量、低遅延と同時接続数の増加が期待できる通信規格だ。5Gの普及により、動画配信のクオリティや仕組みがさらに向上すると見込まれる。これにより、質の高いライブ配信が可能となれば、ライブコマースのクオリティが向上し、快適なライブ配信と閲覧環境が整うと言えるだろう。


ライブコマースを取り入れるメリットやデメリット

ライブコマースを取り入れるメリットとデメリットについて、確認しておこう。

取り入れる上でのメリット


ライブコマースは、ライブ配信によって商品を購入してもらうだけではなく、臨場感や一体感も含めて「体験」も一緒に提供できることが大きなメリットと言える。商品の良さはもちろん、消費者が不安に感じる部分についてもその場で回答できるため、購入のタイミングで起きやすい不安を取り除くことが可能。また、開発者や生産者といった作り手が登場し、商品にかける思いや魅力を直接伝えることもできる。商品の提供者と顧客を結びつける「コミュニケーションツール」として、ファンの獲得も期待できるだろう。

注意すべきデメリット


ライブコマースの主体は、配信者となる。配信者が間違った商品説明をしたり、その場に適さない言動をしたりすることにより、商品のイメージダウン、さらには、企業の信頼不信にも関わる可能性が出てくる。インフルエンサーやタレントに発信者として出演してもらうと集客が期待できるが、発言一つで商品や企業イメージを左右する可能性があることに注意が必要だ。

そのため、視聴者から寄せられる声に柔軟に対応しながら一体感を高めて進行してもらうために、台本の用意や、事前に商品の魅力を把握しておいてもらうといった対策が必要だろう。また、生配信となるため、機材トラブルが起きて視聴者に迷惑がかかる事のないよう、ライブ配信を意識した事前準備が重要となる。


日本で取り組むライブコマースの事例

日本国内において、すでにライブコマースを取り入れて実績を挙げている企業も少なくない。日本で取り組むライブコマースの事例を見ていこう。

三越伊勢丹


百貨店大手の「三越伊勢丹」は、ライブコマースによって、店舗や距離にかかわらずオンラインで楽しめる買い物のスタイルを提供し、注目を集めた。お中元に関するライブコマースでは、ゲストによるオリジナルのイラストを挟みながら試食を行うといった手法で、視聴者のコメントや質問を獲得できたことが成功のポイントだ。

資生堂


コロナ禍により化粧品業界のあり方も変わっていく中で、「資生堂」はライブコマースを活用して非接触型の購買ニーズを獲得した。美容の専門家による化粧品を使いながらの美容法の紹介や、視聴者の悩みにリアルタイムで回答するといった手法を取り入れた。具体的で的確なアドバイスが受けられることにより、幅広い女性の支持を受けた。

ベイクルーズ


アパレル業界もコロナ禍で販売戦略の見直しを迫られる中、ファッションブランドとして知られる株式会社ベイクルーズでは、クラウド型ライブコマースプラットフォームを通じたマーケティング戦略を実行した。視聴者の質問に適切に答えられるスタッフの起用や、商品の魅力をプラスしてコメントするなどの工夫により多くの顧客獲得に成功した。

関連記事:ベイクルーズのライブコマース運営とは 最大9000人の視聴者を集める集客力|ECのミカタ

代表的なライブコマース配信サービスの種類

ライブコマースの配信形態は、「SNS型」「SaaS型」「ECモール型」の3つの種類に分けられる。それぞれの特徴と代表的なサービス名を紹介するので、自社で取り入れる際の参考にしてもらいたい。

SNS型


SNS型とは、SNSに設定されているライブ配信機能を活用したライブコマースの形態だ。専用プラットフォームを準備することなく、無料で手軽にライブコマースを導入できる。フォロワーなどへのアプローチがしやすく、業種や業態に関わらず全てのジャンルで対応が可能だ。

SNS型の代表例として、Instagram、facebook、YouTubeなどがある。

SaaS型


SaaS型とは、自社のECサイトにライブコマースの機能を追加できる、サービスを利用する形態だ。導入までに費用は掛かるが、自社ブランドが確立できているのであれば、自社サイトからの販売が強化でき、ファンを増やせる。

SaaS型のライブコマースサービスを提供する代表例として、TAGsAPI、Live kit、ライコマなどがある。

ECモール型


ECモール型とは、ECモールが提供しているライブ配信機能を使って出品する方法だ。ECモールに出品済みであれば、購入画面への移行がスムーズとなる。ECモールは複数のショップが出店していることから、年齢層が幅広く、新たな客層も獲得しやすい。

ECモール型の代表例として、楽天LIVE、YAHOO!ショッピング、SHOPROOMなどがある。

関連記事:クラウド型ライブコマースサービス「TAGsAPI」、年間流通総額30億円を突破

まとめ

新型コロナウイルスの感染拡大により、日本企業においてもライブコマースの注目度が大きくなってきている。ライブコマースのメリットとデメリットを十分把握した上で、自社のECサイトの運営方法に合わせた配信サービスを検討していくとよいだろう。ライブコマースを利用して、新たな顧客開拓やオンライン販売に挑戦してみてはいかがだろうか。


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