年末商戦とは。時期や準備の内容、年末商戦を成功に導くポイントを徹底解説
2023年も残すところ50日あまり。今年も年末商戦の季節が到来した。そのスタートはボーナスが支給される企業が多い12月初旬からと言われるものの、すでに各ECモールではクリスマスやお歳暮のギフト特集が始まっており、日本でも恒例となった「ブラックフライデー」に向けたセールの告知もにぎやか。ビッグイベント目白押しの11月後半~12月はEC事業者にとっても大きな商機だが、カレンダーを見ながらその準備に頭を悩ませている方も多いのではないだろうか。今回は関連する調査結果なども取り上げながら、2023年の年末商戦を成功に導くポイントを探っていこう。
※本記事は2022年12月14日の「年末商戦とは。時期や準備の内容、年末商戦を成功に導くポイントを徹底解説」を基に、新情報を交えて内容を更新したものです
目次
●年末商戦とは。時期はいつからいつまで?
●年末商戦に向けた準備
●年末商戦を成功させるポイント
●まとめ 2023年を締めくくる年末商戦
年末商戦とは。時期はいつからいつまで?
年末商戦とは、クリスマスや年末の物入りな時期を商機とし、売上アップに向けてセールやオリジナル商品の投入など、さまざまな商売戦略を行うこと。
年末商戦の時期は、いつからいつまでという定義はないが、前述の通りギフトの予約や「ブラックフライデー」に向けたキャンペーンを含めると11月後半から本格的にスタートし、年末にかけての期間と言えるだろう。
この時期は、お歳暮やクリスマス、お正月準備の需要により消費者の購買意欲が特に高まる。プレゼント需要は12月15日前後からクリスマスイブに向けてがピークとなり、おもちゃやゲーム、貴金属、電化製品、ブランド品などの売上アップが見込める。一方で、最近は自分自身の「ご褒美」にお金を使う傾向にあり、売れる商品のジャンルも多様化している。
また、お歳暮用の食料品やお酒、年末年始用の食材やおせちなども売上を伸ばす時期。商材の特性によって、早いところでは9月から予約受付を開始する企業も少なくない。実店舗、ECサイト・ECモールにとって集客や売上アップのチャンスとなる年末商戦は、年間を通して重要な時期といえる。
楽天市場 ギフトのトレンド予測は「自家・手土産・ご褒美」
楽天グループ株式会社が2023年10月に発表した、「楽天市場」におけるお歳暮およびクリスマスギフトのトレンド予測によれば、近年お歳暮(やお中元など)はカジュアル化が進んでいる。
2023年は新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後初とあって、家族や親せきが集まって年末を過ごす人が増えることが予想される。楽天では家庭内で楽しむために購入する「自家需要」が特に大きな盛り上がりを見せると予測。帰省や忘年会、ホームパーティなどの機会増加に伴う「手土産需要」の拡大も見込めるという。
同じくクリスマスギフト商戦については、子ども向けギフトに加え、自分の趣味やライフスタイルに合う商品を奮発して購入し、今年1年間の自身の頑張りを労う“ご褒美需要”の高まりを予測。在宅勤務からオフィス出社をベースとした働き方に戻る動きが見られたこと、物価の上昇による日頃の節約志向の高まり、東証プライム上場企業を中心に2023年末のボーナスが上昇傾向にあること(※1)などを、その背景として挙げている。
※1 企業を対象とした「東証プライム上場企業の2023年年末一時金(賞与・ボーナス)の妥協水準調査」によると、「2023年末賞与・一時金の支給水準」は、東証プライム上場企業の全産業ベース(単純平均)で「80万28円」(2022年同期比:1.5%増)となり、1970年に調査を開始して以来、初めて80万円台に(一般財団法人 労務行政研究所調べ)
年末商戦に向けた準備
年末商戦に向けて、ECショップで取り入れていきたい一般的な準備について見ていこう。
①販促スケジュールの作成
ECショップとして注力したいイベントを決定し、どのような商品をどのように販売するのか、そのための準備として何が必要なのか販促スケジュールを作成する。年末商戦に向けて、どの企業でも商品を増産したり、新たな商品を作成したりとモノの動きが活発化する傾向にあるため、早めの準備開始をおすすめしたい。
2023年 年末商戦関連カレンダー
●11月24日(金)「ブラックフライデー」
●11月27日(月)「サイバーマンデー」
●12月24日(日) クリスマスイブ
●12月25日(月) クリスマス
●12月31日(日) 大晦日
②仕入れ管理の見直し
通常営業用の在庫の確認とともに、年末需要に向けた仕入管理の見直しも計画的に進めたい準備の一つ。2022年の売上データをもとに、今年のトレンドや自身のショップの方針も加味したうえで仕入額や商材の確保などについて早めに仕入先と交渉し、在庫欠品による販売機会ロスを起こさないよう注意したい。
③多様な決済方法の準備
スムーズに購入できないサイトはカゴ落ちのリスクが高まる可能性がある。特に年末はユーザー側も忙しい時期のため、カゴ落ち対策としても、迅速な取引を実現できる多様な決済方法(クレジットカード決済以外にも、オンラインID決済、銀行振込、コンビニ決済、後払い決済など)を準備しておきたい。
インターネットを使って商品を購入する際の決済手段 トップ5[2022年]
●クレジットカード払い(代金引換時の利用を除く)【75.9%】
●コンビニエンスストアでの支払い【36.4%】
●電子マネーによる支払い【34.8%】
●銀行・郵便局の窓口・ATMでの振込・振替【23.0%】
●代金引換【20.5%】
※複数回答。総務省「令和4年通信利用動向調査」より抜粋
④特集ページの作成
年末商戦用に、販促キャンペーン向けの特集ページの作成するのもよい。競合との差別化を図るビジュアル、“成果報酬”と連動したキャンペーン企画がおすすめ。また、既存顧客へ事前告知や、日時をずらして複数の企画を実施できれば、それだけ多くの人の目に触れ、認知の拡大も期待できる。
⑤ギフト対応の強化
プレゼント用のラッピングの需要も増加するため、ギフト対応も強化したい。「自家需要」「ご褒美需要」であってもそれが購入者にとっての“特別な品”であることに変わりはなく、心に残るサービスを提供できれば、リピーター増加にもつながるはず。そのためには配送を含めた物流面の確認も忘れずに行っておきたい。
年末商戦を成功させる5つのポイント
次に、2023年の年末商戦を成功させるための5つのポイントについて解説していこう。
①購買動向に合わせた在庫管理
ECショップの売上を最大化するためには、購買動向に合わせた在庫管理が重要。その時々に応じた顧客の購買における好みの変化を把握するため、例えば「Googleトレンド」を使ってそのワードがいつ、どのくらい検索されたかの推移を調べるなど、検索が増加している時期を知れば、売り時に備えた対策が講じやすくなる。
②多様なチャンネルの活用
既存顧客に向けたメルマガやLINEのほか、新規顧客獲得に向けInstagramやX(旧Twitter)、TikTokなどあらゆるチャンネルを活用したアプローチは積極的に取り入れたい。SNSはそれぞれのユーザー層に違いがあるため、自社に合ったチャンネルを見極めて効果が高いものに注力できるよう、顧客の活動ピーク時間の把握や、パフォーマンスの良いコンテンツ分析を。
SNS利用率調査
●LINE【83.7%】
●Twitter(現・X)【43.2%】
●Instagram【39.9%】
●Facebook【24.7%】
●TikTok【10.5%】
※NTTドコモ モバイル社会研究所「2023年一般向けモバイル動向調査」より。利用率=月に1回以上利用。複数回答。調査対象:全国・15~79歳男女・スマホ・ケータイ所有者対象・n=6423
③パーソナライズされた購買体験の提供
一人ひとりの顧客の属性や趣味などに合わせて、最適な情報やサービスを提供するパーソナライズを活用。年末商戦時期は、顧客とのつながりを深めるチャンスなので、パーソナライズされた商品提案などで購入意欲が高まれば、信頼感が生まれリピーターにもつながりやすくなる。
EC通販ですごいと感じたサービス・機能(抜粋)
博報堂DYグループ「ショッパーマーケティング・イニシアティブ®」が2023年6月に発表した「EC生活者調査2023」によれば、EC生活者(直近1年以内にECで買物をした生活者)にとって満足度が高いEC機能として、「即配サービス」とともに下記のようなカスタマイズやパーソナライズに関するサービスが挙げられた。
●AIが自分に合った商品をお勧めしてくれる
●骨格タイプを診断して自分に合った商品を買える
●商品仕様を自分好みにカスタマイズできる
●肌や自分の体調に合う商品を配合してもらえる
※博報堂DYグループ「ショッパーマーケティング・イニシアティブ®」「EC生活者調査2023」より。「Q.あなたが、インターネット通販で知っているサービス・機能、すごいと感じたサービス・機能をすべてお答えください。」に対する回答から抜粋。調査エリア:全国、サンプル数:通常WEB調査5,000s+購買パネル調査 4,938s 計9,938sを本調査で回収(EC1年以内利用者)、調査対象者:15~69歳男女個人
④問い合わせ増加に向けた対策
年末商戦時期はカスタマーサポートへの問い合わせも増加するので、それに向けた対策も重要だ。カスタマーサポートの業務負担を軽減するために、FAQやヘルプセンターのコンテンツで自動的に回答するツールなどの活用も有効。また同時期は、24時間サポート可能なチャットボットなどを導入し、顧客満足度の向上に努めたい。
⑤ショップメンテナンスの実行
注力イベントで本格的に忙しくなるのを前に、ECショップのメンテナンスもお忘れなく。「探しているものを簡単に見つけられるか」「サイトにわかりにくい点がないか」など、画面構成や検索機能、決済など全ての面において問題点や不具合がないかを確認しておきたい。細かな部分までチェックし、メンテナンスしておくことがコンバージョン率向上につながるはずだ。
まとめ…2023年を締めくくる年末商戦にどう臨む?
物販系分野のBtoC-EC市場にやや成長鈍化の傾向が見えた2022年を経てスタートした2023年(※2)。EC事業者には、新型コロナの5類移行や物価上昇などの影響によって起きたユーザーの購買行動の変化に対する施策が求められた。AIを使った新しいサービスがたびたび話題となり、年末商戦においても、「Amazon ブラックフライデー」に合わせて注目商品の一部を展示する3日間限定のテーマパーク「Amazon Smile Park(アマゾン・スマイル・パーク)」もオンラインとオフラインをつなぐ取り組みのひとつと捉えることができるだろう。消費者のニーズと市場のトレンドを的確に把握し、2023年を締めくくる年末商戦に臨みたい。
※2 経済産業省の「令和4年度電子商取引に関する市場調査」によれば、2022年の日本の物販系分野のBtoC-EC市場規模は13兆9997億円で、前年比の増加率は5.37%。同報告書では新型コロナ感染拡大の影響で同市場規模が拡大した2020~'21年に比べ、2022年の伸び率は「鈍化しつつも増加する結果」としている。