アリババクラウド、企業向け新AI言語モデル【通義千問】を発表

ECのミカタ編集部

アリババクラウド(以下「アリババクラウド」または「同社」)は、最新の大規模言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」について発表を行った。

最先端のサービス創出を後押し

2023年4月11日、北京発 - アリババグループのデジタルテクノロジーとインテリジェンスの中枢であるアリババクラウドは、最新の大規模言語モデル「通義千問(Tongyi Qianwen)」を発表した。

同社は近い将来、この新たなAIモデルをアリババのさまざまなビジネスに統合し、ユーザー体験を向上させる予定だとしている。また、顧客や開発者に同モデルへのアクセスを提供し、コスト効率の高い方法でカスタマイズされたAI機能を作成できるようにするとのことだ。

またアリババクラウドは、中国における新AI時代に向けて新たなビジネスチャンスの開拓を目指す企業にとって、コンピューティングをより身近で手頃なものにするため、Elastic Compute Service(ECS)やObject Storage Service(OSS)を含む主要なクラウドコンピューティング製品に関し、新しいECSインスタンス、OSS Reserved Capacity(OSS-RC)およびOSS Anywhere Reserved Capacity(OSS-ARC)の導入による低価格オプションを発表している。

アリババグループの会長兼最高経営責任者(CEO)であり、アリババクラウド・インテリジェンスCEOであるダニエル・チャン(Daniel Zhang)氏は、次のように述べている。

「生成AIとクラウドコンピューティングがけん引する前例のない技術的な分岐点に立つなか、あらゆる分野の企業がその先を行くために、インテリジェンス・トランスフォーメーションを取り入れ始めています。アリババクラウドは、世界有数のクラウドコンピューティングサービスプロバイダーとして、コンピューティングとAIサービスをより包括的にし、企業や開発者が利用できるよう努めています。これにより、企業や開発者がより多くの洞察を掘り起こし、成長のための新たなビジネスモデルを模索し、社会にとってより最先端の製品とサービスを創造できると期待しています」

新AIをアリババ事業に統合、顧客に合わせたモデルを構築

同社は通義千問について、近い将来、アリババのエコシステム内の企業向けコミュニケーション、インテリジェント音声アシスタント、Eコマース、検索からナビゲーション、エンターテインメントまで、あらゆるビジネスアプリケーションに統合され、ユーザー体験をさらに向上させる予定だとしている。

中国語と英語の2言語で対応可能なこのモデルは、まずアリババのデジタル・コラボレーション・ワークプレイスおよびアプリケーション開発プラットフォームであるDingTalkと、IoT対応スマート家電を提供するTmall Genieに導入予定だ。

通義千問搭載のDingTalkは、職場のコミュニケーションをより効率的にするために設計されているという。例えば、会議のメモを要約したり、会議の会話をテキスト化したり、メールを作成したり、簡単なプロンプトでビジネス提案やプロモーションキャンペーンの企画を立案したりすることができるとのことだ。また、紙に書いたアイデアを写真に撮って、すぐにDingTalk上にミニアプリケーションを作成することも可能だとしている。

主要製品、最大3カ月無料トライアルも発表

主要製品、最大3カ月無料トライアルも発表

開発者においてもアリババクラウドの通義千問にアクセスし、大規模なAIアプリケーションを作成できるようになる予定とのことだ。これにより、物流からメディア、金融、製造、エネルギー、小売などの分野にわたるAIソフトウェアエコシステムがさらに強化されるだろう。通義千問はAPIとして、中国国内の開発者が現在ベータテストに応募することも可能だ。加えて、通義千問モデルには画像理解やテキストから画像への変換を含むマルチモーダル機能が近日中に追加され、より魅力的なAI機能をユーザーに提供する予定だとしている。

アリババクラウド・インテリジェンスの最高技術責任者(CTO)の周靖人(Jingren Zhou)氏は、次のように述べている。

「大規模な言語モデルを搭載した生成AIは、今までにない新たなフェーズを迎えています。この最新のAI時代において、当社は、弾力性のあるパブリッククラウドインフラと実証済みのAI機能を通じて、お客様や、より広範なコミュニティに対してさらなる価値を生み出すための体制を整えています。当社は、クラウドとAIモデルが本質的な役割を果たす、AI開発の新しいパラダイムを目の当たりにしています。このパラダイムをより包括的なものにすることで、あらゆる業界の企業のインテリジェンス・トランスフォーメーションを促進し、最終的には、ビジネスの生産性を高め、専門知識と能力を拡大するとともに、イノベーションを通じてよりエキサイティングなビジネス機会の開拓を支援したいと考えています」

通義千問は、テキストを画像や短い動画に変換できるモデルなど、さまざまなAIモデルを統一したアリババ独自の事前学習済みモデルフレームワーク「通義(Tongyi)」をベースにしている。昨年、アリババクラウドは、グローバルな開発者や研究者向けに、通義ベースのテキストから画像へのモデルを含む数百のAIモデルを搭載したオープンソースのModel-as-a-Service(MaaS)プラットフォームであるModelScopeを発表した。100万人以上のアクティブユーザーを持つModelScopeは、800のモデルを利用可能にし、現在、該当モデルのダウンロード回数はすでに累計1600万回を超えている。

また同社は、次のようにも述べている。中小企業向けに設計された新たなECS Universalインスタンスファミリーは、類似製品と同等の安定性を提供しながら、最大40%のコスト削減を実現します。WebアプリケーションやWebサイト、企業向けオフィスアプリケーション、オフラインのデータ分析などを行う中小企業に適合するとしている。

OSS-RCは、顧客企業が特定地域のストレージ容量を1年間分予約することができ、容量コストを従量制の価格から最大50%削減を実現。特定のリージョンにデータを保存する必要がない場合、顧客企業はOSSのAnywhere Bucketを作成し、アリババクラウドが選択するリージョンにデータを保存することができるという。そして、OSS-ARCは、OSS Anywhere Bucketに格納されたオブジェクトのキャパシティを確保することが可能だ。これにより、容量コストを従量制の価格から最大70%削減することができるとしている。

また、中国の開発者がコンピューティングリソースをより利用しやすくするため、アリババクラウドは、ECSやPolarDBデータベースなどの主要製品の最大3カ月間の無料トライアルも発表した。さらに、アリババクラウドは、開発者がクラウド技術に簡単にアクセスできるように、クラウド技術に関する1000の無料トレーニングコースと、実際のビジネスシナリオに基づく約500のハンズオン実験を提供する予定とのことだ。

AIの活用メリット享受をサポート

通義千問搭載のTmall Genieは、中国国内のユーザーとよりダイナミックで生き生きとした会話を可能にしているようだ。例えば、子ども向けのストーリーを開発して読み聞かせたり、健康的なダイエットレシピや旅行のヒントを提案したり、ワークアウトのBGMを推奨するといったことができるという。

アリババクラウドは、顧客企業にクラウド上の通義千問へのアクセスを提供し、顧客企業自身がカスタマイズした大規模言語モデルの構築を支援し、企業がAI駆動型イノベーションのメリットを享受できるよう支援するものとみられる。

より安全なクラウド環境において、通義千問を顧客企業独自のインテリジェンスと産業のノウハウで微調整することにより、企業は特定のビジネスニーズに合わせてカスタマイズしたAIモデルを構築できることになる。

顧客企業は、基礎的なモデルを構築するためにリソースを集約させて高価な事前トレーニングプロセスを実施することなく、新たな成長に向けた施策を展開できるだろう。なお通義千問は、現在、中国の一般企業顧客向けにベータ版として提供されている。

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