軽貨物運送業で倒産・休廃業・解散が過去最多 人手不足や燃料高騰、運賃の引き上げ難など背景に

ECのミカタ編集部

「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

ドライバー不足が懸念される「2024年問題」が間近に迫るなか、宅配などを担う「軽貨物運送業(貨物軽自動車運送業)」の2023年の倒産と休廃業・解散件数の合計が過去最多となったことが判明した。

小・零細企業を中心に倒産、廃業となる

2023年の「軽貨物運送業」倒産は3年連続で増加し、49件(前年比36.1%増)となった。

負債総額は30億200万円(同198.7%増)と、前年の約3倍と大幅に増加。前年に発生がなかった負債5億円以上が2件発生し全体を押し上げた。一方、負債1億円未満は44件と約9割(構成比89.7%)を占め、倒産と廃業は小・零細企業を中心に発生している。

◆出典「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

原因別では、販売不振が38件(同77.5%)と最も多く、過小資本と他社倒産の余波が各3件(同6.1%)で続く。

形態別では、破産が46件(同93.8%)と消滅型が9割超を占めた。再建型は民事再生法の2件(同4.0%)、取引停止処分は1件(同2.0%)。資本金別では、個人企業他含む1千万円未満が45件(同91.8%)、従業員数別では5人未満が39件(同79.5%)と小・零細企業が中心となる。

◆出典:「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

スタートアップ企業の廃業も要因か

2023年に倒産以外で事業を停止した「休廃業・解散」は74件(前年比12.1%増)で、過去最多を5年連続で更新。2012年までは倒産が多く、休廃業・解散は小康状態が続いていた。

コロナ禍では「巣ごもり需要」をあてにした安易な参入組も増え、ゼロゼロ融資をはじめとするコロナ関連の資金繰り支援策で一息ついた。しかし支援の縮小・終了とともに、倒産に加え、休廃業・解散も一気に増加。実際、休廃業・解散は業歴5年未満が目立っている。

判明分では、業歴5年未満は2020年が16.6%にすぎなかったが、2021年は31.2%、2022年は22.5%、2023年は40.5%と約4割まで上昇。スタートアップ企業が、経営が軌道に乗らず倒産する前に早めに廃業を決断したと考えられるだろう。

◆出典:「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

売上高は伸長する一方、運賃やコスト増により利益は苦戦

2022年10月期~2023年9月期(2023年)を起点に、5期連続で売上高と利益(最終利益)が比較可能な軽貨物運送業の269社を分析。コロナ禍の影響が一部含まれる2020年は、売上高は1661億900万円(前年比11.9%増)と在宅勤務などの定着で扱いが増加したようだ。

一方、利益は34億9800万円(同5.4%減)と減益。要因としては運賃伸び悩みとコスト増が考えられるだろう。

2023年は宅配など荷物量の増加に加え、一部で運賃上昇の流れもあり、売上高は1796億1200万円(10.4%増)と増収。利益も23億6300万円(同41.2%増)と大幅増益を達成したが、コロナ禍前の2019年との比較では、売上高は21.0%増に対し、利益は36.1%減と大幅な減益にとどまった。こうした業績の厳しさも、倒産や休廃業・解散の増加につながったといえるだろう。

◆出典:「2024年問題」直前の軽貨物運送業 倒産と休廃業・解散の合計が3年連続で過去最多

「利益なき成長」に陥る物流業界

本調査は、日本産業分類の「貨物軽自動車運送業」の2023年(1〜12月)の倒産、休廃業・解散を集計、分析し算出されている。また、業績動向調査は、2022年10月期〜2023年9月期を基準に5期連続で比較可能な269社を集計、分析している。

倒産は1989年、休廃業・解散は2000年の統計を開始以来、最多を更新し、合計は3年連続で過去最多に。コロナ禍で宅配市場は拡大したが、人手不足や燃料高騰、運賃の引き上げ難、競争激化などで「利益なき成長」に陥っており、2024年はさらに淘汰が加速する可能性も高まっている。

軽貨物運送業者は下請構造や競合から運賃値上げが難しい業者も多く、倒産や休廃業・解散をさらに押し上げる可能性がある。「2024年問題」を筆頭に様々な課題を抱える物流業界を持続可能なものとするためには、関わる全ての人の協力が必須といえるだろう。今後の状況を注視しつつ、それぞれができる対応を心がけたい。


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