ヤマトHD、2024年3月期 通期決算発表 宅配個数増加の鍵は法人と越境に?
ヤマトホールディングス株式会社(以下:ヤマトHD)は、2024年3月期 通期の決算説明資料を公開した。連結経営成績としては営業収益、営業利益ともに前期比を下回り減収、減益。ロジスティクス・国際輸送関連の収入減少、また外部環境の変化によるコスト上昇や、業務量の想定以上の下振れなどが影響を与えたという。
営業収益、利益ともにマイナス 国際輸送関連、コスト上昇などが要因に
ヤマトHDが2024年5月8日に発表した決算説明資料によれば、第4四半期(1~3月)における営業収益は3917億円(前期差−129億円)、営業利益は−103億円(前期差−39億円)と第3四半期に引き続きマイナスとなった。
これにより2024年3月期 通期業績は営業収益1兆7586億円(前期差−420億円)、営業利益は400億円(前期差−200億円)で着地した。
◆出典元:ヤマトグループ 決算説明資料 <2024年3月期 通期>(ヤマトホールディングス株式会社)
通期営業収益については宅配便収入は増加した一方、ロジスティクス・国際輸送関連の収入減などにより減収。通期営業利益はネットワーク・オペレーション構造改革の推進によって、人件費をはじめとした固定コストの削減に努めたが、外部環境の変化によるコスト上昇や業務量の想定以上の下振れなどにより減益となった。
説明会に登壇したヤマトHD代表取締役 副社長執行役員の栗栖利蔵氏は、今回の決算評価について「宅急便を中心にした収益が予想まで届かなった。利益についても期初目標を達成できなかったことを考えると、年間を通して考えると満足のいくものではなかった」と話した。
第4四半期は消費行動のリアル回帰による影響は概ね一巡したものの、実質賃金の減少を背景とした消費低迷によって、リテール部門(個人・小口法人)を中心として低調に推移。これを受けてヤマトHDはリテール領域の収益拡大に向け、各地域の基盤顧客に対する営業接点を強化していくとした。
宅配需要は低下も、法人顧客との新規取引で取扱個数増加
2024年3月期の小口貨物3商品の取扱商品動向は、約1兆8862億個(前期差約−4012万個)、単価は721円(前期差+18円)。部門別ではリテール部門は約8億9330万個(前期差約−5489万個)、法人部門は約9億9278万個(前期差約+1472万個)と、第3四半期に引き続き、法人部門での数量拡大が目立った。
単価については法人部門の新規取引拡大、および単価水準の高いリテール部門の数量減少などによって上昇幅(対前年伸率)は鈍化する結果に。
◆出典元:ヤマトグループ 連結決算概要 (2024年3月期)補足資料(ヤマトホールディングス株式会社)
法人領域においては越境ECを中心に取扱量が増加。また、ECデリバリーセンターの展開を通じた、進出可能なキャパシティ創出なども実施している。2024年1月には越境EC事業者へ向けた「海外小口輸送サービス」の提供(※1)、3月下旬にはShopifyに対する新サービス提供(※2)なども開始した。
今後もEC化、小口多頻度化の進展によるロジスティクスの複雑化が想定される。ヤマトHDが培ってきた顧客基盤、技術、そして日本着の越境ECにおける通関ノウハウなどを活用した事業戦略が期待されるだろう。
※1:関連記事:ヤマト運輸、越境EC事業者向けに「日本向け海上小口輸送サービス」を開始 韓国発最短4日・中国発最短5日の配達が可能に
※2:関連記事:Shopifyとヤマト運輸 荷物の円滑な配送や受け取りを実現する新サービスを2024年3月下旬より順次開始
CL・グローバル事業での増収、コスト管理による増益を目指す
ヤマトHDは来期の業績予想について、営業収益を1兆8200億円(前期比+613億円)、営業利益を500億円(前期比+99億円)と公表。
顧客への提供価値拡大とプライシング戦略の強化による宅配便3商品収入増加、 そしてCL・グローバル事業における幅広い顧客へのトータルソリューション展開などによって営業収益を増収。 営業利益は増収および業務量に連動したコストコントロール強化などによって、増益を達成させるとした。
また、宅急便3商品の数量についても約20億個(前期比+約1億20万個)に引き上げる。第3四半期決算でも上方修正されたように、法人顧客との新規取引の増加、「カーボンニュートラル配送」の差別化による宅配便の利用促進(※3)などがけん引すると考えられる。
加えて、2024年5月からは東南アジア-欧州間でトラックと鉄道による国際複合一貫輸送サービスの開始(※4)が予定されており、一層物流量の増加に貢献することも期待。
2024年3月期は実質賃金の低下による消費低迷、時給や委託単価などのコスト上昇、業務量の下振れなどにより厳しい1年となった。ヤマトHDは2025年3月期の取り組みとして「グループ経営基盤」「サステナブル経営」の強化に加えて、「フルデジタルオペレーションの構築」などをあげている。また、Oneヤマト体制で顧客と向き合い、多様なニーズや期待に応えることで、営業収益を成長軌道に戻すとした。
2024年問題への対応など、安定的な輸送サービス提供への取り組みにも期待が集まる。DX推進など、現状の課題解決へ向けた動きにも注目したい。
※3 参考元:「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」について 国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを実現(ヤマト運輸株式会社)
※4 関連記事:ヤマトHD、東南アジア-欧州間でトラックと鉄道による国際複合一貫輸送サービスを提供開始(ヤマトホールディングス株式会社)
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