需要予測 - 消費者に情報提供の協力を促す2つのパターン
山崎徳之のコラムはこちら
コラム#1:ECの役割 ー パーソナライズドな商品目利きの実現
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6293/
コラム#2:パーソナライズな目利きを実現するための各種のアプローチ
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6386/
顕在需要予測に有益なインターフェース
今回は前回分類した4つについて考えてみます。まずはおさらいです。
消費者の需要を予測するために、「消費者からの情報提供の協力を促す」ことと「提供された情報を最大限活用すること」の2つの分類、そして「顕在化している(消費者が気づいている)需要を予測する」ことと「潜在的な(消費者も気づいていない)需要を予測する」ことの2つの分類で、4つとなります。
消費者からの協力を促し、顕在化している需要を予測する
このパターンで一番わかりやすい例は商品検索です。消費者が検索しやすいUIを提供し、少ないアクションで的確な結果を表示することが求められます。型番や機種名が正確に検索された時に該当する商品を表示するのはもちろんですが、入力が曖昧だったり不正確だったりする場合にどのようなUXを実現できるかが重要です。
例えば「水」と検索される場合、これは明らかに飲料水を探しているのですが、例えばボルヴィックやクリスタルガイザーなどは商品名に「水」という文字を含んでいません。飲料水の代わりに「化粧水」や「撥水マット」が表示されてしまうケースがありますが、これは論外であるといえます。
また商品名を微妙に間違えている場合のもしかして検索などもこのケースに含まれます。顕在化している需要を探しているが、入力が間違っているということは良くあります。またカテゴリ選択などによるドリルダウンもこれに該当します。ドリルダウンの選択や解除がしずらいと、消費者は「この情報を探している」と自覚があるにも関わらずそれがスムースに出てこなくて離脱してしまうというのは、一番もったいないケースであるといえます。
この1番は、「一番確実に実現しないといけない」パターンであり、きちんと動作するのが当たり前、出来ていないとマイナス(離脱)になる組み合わせです。とはいえこれができていないECサイトがかなり多いため、正直現状ではこの解消というだけでもかなり取り組むべき課題があるというのが実情です。
そのためには操作しやすい検索UIを実装し、「その入力内容を正しく解釈し」、適切な結果を表示するという当たり前ではありますがハードルの高い取り組みが必要となります。実際問題として、ECにおける一番有益な消費者との対話インターフェースは、現状のところ検索UIなのです。
潜在需要予測における課題
消費者からの協力を促し、潜在的な需要を予測する
このパターンは少し想像するのが難しいといえます。消費者が積極的に協力する時点で、普通は顕在化している(自覚のある)需要がターゲットであることが多いでしょう。
例えばこのパターンとしては「消費者が自覚はしているがその自覚が適切でないかもしれない」ケースとか、「自分の潜在的な需要について情報を提供するので教えてほしい」というケースがあります。前者は例えば旧機種を型番で検索しているケースなどがあります。
もちろん、値引き目当てで意図的に旧機種を探すケース(つまり旧機種を探しているのが正しいケース)もありますが、場合によっては新機種の登場を知らないということもありえます。知らずに買ってしまい、あとから新機種が出ていることを知ったら、それはショックでしょう。
他にも、A+Bというお得なセット販売があるのに、AとBをバラバラに買って割高になってしまうケースなどもそうです。ただこれは、潜在的というよりはむしろ認識不足なので、1番のパターンに含めても良いといえます。
この2番でもっと特徴的なのは後者のケースです。例えば「◯◯を始めたいけど何を買ったらいいのか」などです。◯◯は、釣りでも英会話でも自転車でも登山でもなんでも当てはまります。その場合消費者は、自分は何を買うべきか知らないということがわかっていて、かつ予算だったり自分のレベルや方向性などの境界条件を積極的に提供してくれるでしょう。
そしてこれが現状EC(オンライン)が店舗(オフライン)に敵わないケースの一つでもあります。前回例にあげた、人生に大きな影響を与える住宅などの大きな買い物などもここに含まれます。これをどう実現するかは、今後のECの可能性として大変重要なテーマですので、また別途詳しく取り上げてみたいと思います。
今回は4つの分類のうち、消費者に協力を促す2つのパターンについて見てみました。次回は残る2つ、情報を最大限活用するパターンについて考えてみます。