KDDI×ヤマト 新システム導入とWALLET Marketの関係は?
記者の論点:新システムの導入の背景には、「au WALLET Market」の全国展開がある。場合によっては既存のネットショップの協力なライバルとなる可能性も。
コストを削減しながらも配送スピードをアップ!
KDDI株式会社(以下「KDDI」)は、ヤマトホールディングス株式会社傘下のヤマトロジスティクス株式会社(以下「YLC」)が提供するクラウド型のピッキングシステム「FRAPS(Free Rack Auto Pick System)」を、新大型物流拠点「KDDI東日本物流センター」(神奈川県相模原市 ロジポート橋本)内に導入し、昨日より運用を開始した。
近年KDDIでは、auスマートフォンのアクセサリーなど周辺商材の取扱量が増加し、店舗における日々の荷物受入れ業務が増大している。さらに、2015年12月には「au WALLET Market」の全国展開を開始したことで、今後を見据えた、よりスピーディーな配送や店頭における負担軽減など物流効率と輸送能力の向上に取り組む必要があった。
従来のスピード配送は、自前の倉庫と3PL事業者の倉庫を大消費地の近くに持ち、購入者へ配送を行う方法が一般的であるが、複数拠点に在庫を分散する必要があるため、物流コストの上昇はやむを得えないとされてきた。
そこで、「FRAPS」と小口多頻度輸送が可能なスピード輸送ネットワークを活用することにより、ユーザーやauショップから注文された商品のスピーディーな輸送など、さらなる利便性を向上させる物流の改革が可能となる。
「FRAPS」は「バリュー・ネットワーキング」構想の1つのエンジンである「クラウド型のネットワーク」を実現するため、可動式ラックを並べたロールボックスパレットと、デジタルピッキングのラインを併せ持つシステムだ。「FRAPS」により、事業者が在庫を分散せず、大消費地近くに複数拠点を持つ事業者と同様のスピードと品質を実現した。
今回、KDDIは「KDDI 東日本物流センター」を新設し、YLCがビジネスモデル特許を持つ、「FRAPS」を導入。「FRAPS」とヤマトグループのノウハウとスピード輸送ネットワークを連携させ、同一店舗向けの複数注文をマージしして店舗へ一括納品することで、各店舗の業務負担の軽減、物流コスト削減と、ユーザー満足度の向上を実現する。
KDDIとヤマトグループは、「KDDI東日本物流センター」を活用し、今後もユーザーへ商品をいち早く配送することに加えて、より付加価値の高いサービスの提供を目指すという。
今回の「FRAPS」の導入は「au WALLET Market」の全国展開も背景の一つとされているが、「au WALLET Market」はテレビCMにも力を入れており、これまでECショップを利用してこなかった層へのアプローチと見ることができる。「au WALLET Market」では日用品からウォーターサーバー、ペットフード、携帯アクセサリーグッズなど幅広い商品をを販売しており、既存のECショップの脅威ともなりえる。商品の幅だけでなく、auショップでのサポートや、配送スピードなどが強みとなる「au WALLET Market」に打ち勝つような施策を、既存のECサイトは打っていかなければならない。しかし、ECショップを利用してこなかった層が「au WALLET Market」をきっかけに、利用するようになれば、EC業界の活性化に繫がることは間違いないだろう。まさに、「ピンチはチャンス」である。