メルカリに訊く!C2C市場拡大で変わる消費者心理

ECのミカタ編集部

今、EC業界でも注目度の高い、C2C市場。これまでB2CメインだったEC業界に置いて、C2C市場が拡大することにより、どのような変化が起きていくのか。日本最大のフリマアプリ「メルカリ」を運営する株式会社メルカリ、取締役 濱田優貴さん、広報 中澤理香さんにお話を伺いました。そこから、消費者の購買心理の変化、そしてそこで求められる新たな売り方が見えてきました。

C2Cだから、作れる市場

ーフリマアプリ市場が成長して、消費者の購入の場が今後どう流れていくのか、EC店舗さんにとっても気になる部分だと思います。

中澤:今、メルカリを使われている方って、基本的に今まで販売をしたことがない人が多いと思います。それは、スマホが普及して、カメラで撮ってすぐ簡単に出品できるようになったというのが、大きかったと。日本だと、決済と配送が整っていないとC2Cの取引は難しいのですが、配送はヤマトさんはじめ、日本の配送クオリティーが素晴らしいですし、決済も、メルカリが一度預かって荷物が届いてから振り込むエスクローという安全な形ができたので、そこがパラダイムシフトというか、C2Cが一般の方にまで広がるきっかけに気はしますね。

ーあくまでもC2Cなんですね。

中澤:そうですね。業者が入って来ると、一般の人がやりづらくなるというか、弱い立場になってしまう可能性があるので、業者的なものはできるだけ排除して、気軽に出品できる、安心安全に使えるというところを大事にしています。

ー安心安全というところでは、匿名での発送・受取も、他社さんにはないですよね。

濱田:匿名発送については無料で提供をしていますが、実はメルカリが匿名サービスを使う手数料を負担して頑張っているんです(笑)。当然メルカリ側には負担になるのですが、お客さまに安心して使ってもらうためには、それはやらないといけないよねというところがあって。ヤマトさんも、サービスや料金などいろいろな面でかなり頑張ってくださって、サービスが実現できました。

手軽だから、人が集まる、だから成長する

ー濱田さんがメルカリに入られたのが2014年の11月ということですが、きっかけは何だったんですか?

濱田:僕は、学生の時に会社を作って10年ぐらいそこで働いていたんですけど、いったんその会社を離れてゼロから新しいチャレンジをしたいなと思っていた時に、もとから知り合いだったメルカリの(代表取締役)山田から、ちょっと興味ないかと話を受けて、メルカリは以前から使っていて好きだったので、面白そうだなと思ってジョインしました。

ーここまでの成長は予想されていましたか?

濱田:僕が入った時は、ダウンロード数で言うと既に500万ダウンードぐらいあったので、比較的成長しているタイミングではあったのですが、最初に山田からメルカリを作るというアイデアを聞いた時には、その時はもう競合のアプリもあったし、ちょっときついんじゃないかなと思ったことはありました。ただ、実際に使ってみると、出品しやすいのが意外だったんですね。スマホで写真を撮ってそのまま使えるのと、複雑に説明文を入れないので、出品ハードルがすごい下がったなと、最初、衝撃的でしたね。これは成功するかもしれないなと思って。

ー自分で作ったお米や野菜を出されている方もいますよね。

濱田:業者は利用規約上NGですが、個人間の取引であればあまり制限はありません。僕も野菜を購入したことがありますが、安くて、品質も良くて、しかも丁寧に梱包されて来るんですよ。そういう方は見せ方も綺麗ですし、良い評価がついてますね。

フリマアプリの成長は時代の流れの必然か

ーフリマアプリは、シェアとか、モノをあまり持たないとか、時代の流れとして合っている感じですよね。

濱田:そうですよね。僕自身も、モノを買う時、「使わなかったらメルカリで売ろう」と考えたりします。

中澤:大きな現象として、皆がモノを買う時に将来売ることまで考えて買うようになっているように思います。今までも、車や家など大きい買い物では「売るときの値段」まで考えて購入されていたと思いますが、フリマアプリで手軽に身の回りのものを出品できるようになったことで、それが日用品でも起きているんだと思います。

ー所有しようと思って買うのと、要らなかったら売ろうと買うのだと、選ぶ基準が変わってきますよね。

濱田:たとえば、僕も、先日グリルパンを買った時に、無名ブランドだけど良い品を買うか、有名ブランドを買うか迷って、結局有名ブランドのものを買いました。その方が、使わなくなった時に売れやすいと思って。個人的な好みでは無名に惹かれたんですけど、売る時の価値を考えた場合、ブランドのある方が良いんですよね。

中澤:私もありますね。自分だけが知っている、マイナーなブランドより、皆が知っているブランドを選んだ方が後でメルカリで高く売れるって考えちゃいます(笑)。

ー消費者の購買心理の変化が、今後、B2Cの事業者の売り方も変えていくかもしれませんね。

濱田:そうすると、長く使えるものを作れば、不要になっても次の人に渡りモノ自体は長く使われるという文化になるかもしれないですよね。チープなものを買って、すぐに壊れて短期間で捨てるって、地球資源全体で考えても、本当にもったいないなと思います。たとえば3千円のフライパンと1万円のフライパンがあったとして、3千円のフライパンは5年後には使えないけれど、1万円のフライパンは3年使って8千円で売れるのだったら、後者を選ぼう、というようになった方が世の中的に良いですよね。

ー今年の3月に開始された「メルカリ アッテ」も同じ流れにありますね。

中澤:メルカリでは「モノ」のやり取りが行われていますが、「アッテ」はモノ以外にも「ヨガ教えます」「英語教えて下さい」などのスキルやサービスのやり取りが気軽にできる、地域コミュニティ型のアプリです。始まったばかりのアプリって、IT業界の人ばかり使っている・・というケースも多いと思うのですが、「アッテ」は開始直後から一般の方の利用が多く見られました。リリース直後は出会い系の温床になるのでは、等と報じられたこともありましたが、カスタマーサポートが逐一監視や対応をしており、現在では不適切な投稿はほとんど見ない状態になっています。

ー今後、メルカリで新しい取り組みなど考えていらっしゃいますか?

濱田:まだ具体的に言えるものはありませんが、基本的には、シェアリングエコノミーという大きな流れにはのっていくと思います。たとえば、アメリカのサンフランシスコでは、車の非稼働率が97、8%と言われています。これは、車を所有しているにもかかわらず止まっている時間がほとんどで、実際に乗っているのは2、3%ということ。それってすごい無駄じゃないですか。世の中には、そういう、モノだけじゃなくていろんな効率の悪いことがあります。それがスマホで、C2Cで気軽に安全にやり取りができる世の中になると、そういった無駄なものがどんどん減っていくのかなという気がしていますし、会社としても取り組んでいきたいなと思います。


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