特別企画:モールは通販に何をもたらした?【楽天市場編】
EC店舗を運営しようと考えたときに必ず出会う「ショッピングモール(以下、モール)」という言葉。そんな「モール」について、あなたはどれくらい説明できますか?意外と知っているようで、知らないのでは。初心者には理解を、熟練者には気づきを、得られる特別企画をご用意しました。
特別企画:「ショッピングモール」レジュメ
・【成り立ち】http://bit.ly/1px1TVn
・【Yahoo!ショッピング編】https://goo.gl/OKdlyZ
・【楽天市場編】
・【Amazon編】https://goo.gl/jp42Ru
今回は【楽天市場編】。楽天株式会社 楽天市場事業 店舗開発部 マネージャーの深澤勝氏にお話を伺いました。
楽天へ出店する際の、費用とメリットをまとめた記事はこちら。
https://goo.gl/ghX1bZ
楽天経済圏の中心、「楽天市場」
楽天市場は楽天株式会社の前身である株式会社エム・ディー・エムが設立された3ヶ月後、1997年の5月にサービスを開始した。「インターネットで人は物を買わない」と言われていた頃である。その後、楽天は楽天市場以外のインターネットサービスや金融サービスなどにも参入し、いわゆる「楽天経済圏」を形成。
その「楽天経済圏」の中で主軸となっているのが楽天市場だ。13店舗からスタートした楽天市場は、20周年を目前とした今、約4万店舗が集まる国内最大のバザールとなっている。EC業界が成長し、マーケットが拡大していく中でも、楽天市場はそのシェアを拡大している。
楽天市場の特徴といえば、商品軸ではなく、店舗軸でモールを構成している点である。また、インターネット上であるにもかかわらず、温かみを感じることができるのも楽天市場の特徴だ。「Empowerment -インターネットを通じて人々と社会に力を与えること-」をミッションとし、全力で頑張るEC店舗を全力で支え、インターネットによる経済活性や地域活性を目指しているからこそ、生まれる温もりがそこにはある。
独自ドメインにも欠かせない「売れるための三大要素」
楽天市場には売れるためのある三大要素が揃っている。売上を上げるためにはこの3つがいずれも欠けてはいけないと深澤氏は語る。
まず一つ目の要素は、【環境】だ。楽天市場では、集客の仕組みが整っており、自らが集客をせずとも人が集まるようになっている。これは、モールに出店する大きなメリットであるが、各モールによってその仕組みは異なっている。
楽天市場の場合、まずは「楽天スーパーポイント」の存在が大きい。2002年から開始されたこの「楽天スーパーポイント」は楽天市場に限らず、楽天グループの各サービスで「貯める・使う」ことができ、現在はオンライン上の店舗だけではなく、楽天ポイントカードの加盟店など実店舗も含め、約55万店舗で利用することができる。だからこそ、ユーザーはポイントを貯めに、そして使いに、楽天市場へとやってくるのだ。
次に、楽天市場は頻繁にイベントを行っている。「楽天スーパーSALE」や「お買い物マラソン」などは毎年盛り上がりを見せている。また、電車の吊り広告やテレビCMと、ユーザーのみならず、多くの消費者に訴求していることもポイントだ。
三大要素の2つ目は【システム】だ。どんなシステムが用意されているのかというと、楽天市場には”店舗制作”、”注文対応”、”店舗データ分析”、”リピーター増加”が可能となるRMS(Rakuten Merchant Server)と呼ばれるシステムがある。このRMSは出店した店舗は必ず利用することができ、見やすさや使いやすさが追求されており、日々改良が行われている。
例えば、自社サイトを持っている場合、基本的にはこの4つのシステムというのは、バラバラなサービスであって、バラバラなものを組み合わせて使用しなければならず、その分コストや手間がかかってしまう。しかし、楽天市場であれば、これらのサービスが1つの管理画面上で利用することができるのだ。その中でも、楽天市場には”店舗データ”分析に力を入れており、この店舗データをもとに、売上を上げるための戦略を組んでいく。
三大要素の3つ目は楽天市場が蓄積してきた【ノウハウ】。注意しないといけないのは、”ノウハウがあるから売上が上がる”わけではないことだ。「楽天で売れないものはありません。ただし、売り方が大切なのです。」と深澤氏は言う。確かに、ノウハウは大切だが、ただ4万店舗分のノウハウを活用するだけでは意味がない。例えば同じ商品であっても販売している店舗ごとに強みは違う。その強みを活かしてノウハウを活用することが大事なポイントだ。
また、この【ノウハウ】を語る上で重要なキーワードがある。それは”ひとけ”だ。ご存知の通り、ひとけとは”人のいる様子”や”賑わいがある様子”を指す。人のいないところへ人は集まらない。ならば、初めから”ひとけ”を演出することで、人を集めることができる。
楽天市場では店舗を軸に”ひとけ”の演出を行っている。ページの向こう側に運営している人の存在を感じることができる、この”ひとけ”こそが、ユーザーが安心感を抱ける店舗を作り出しているのである。その演出の一つとして、ロングページには商品に対する思いが込められている。
この三大要素の他にも、自社サイトを持つEC店舗がぶつかりやすい、スマートフォンページにも対応するなど、自社サイトではなかなか対応しづらい部分にも十二分に対応しており、それが売上につながっているのである。
出店店舗を”人”がサポートする、楽天市場の仕組み
楽天には、これらの三大要素を有効的に活用するためのサポートも万全だ。全国17か所に支社展開をしており、約500名のECコンサルタントが出店店舗をサポートしている。例えば、RMSの”店舗データ分析”システムを活用して戦略を組んだりと、その店舗がやりやすいように、安心して楽天市場で出店できるような仕組みができているのだ。身近なパートナーとして、店舗運営アドバイスなど、ECビジネスを二人三脚で支援している。
また、年に2回、全国6カ所で出店店舗総勢5,000名が参加するイベントを開催している。イベントでは勉強会や店舗同士が交流できるような機会も設けられており、このイベントをきっかけに全国各地で勉強会が新たに行われるなど、大切な場所だ。
そして、新規出店者向けのセミナーも実施。アパレルや食品などのカテゴリ別や、EC初心者、中級者、上級者と出店者の段階別にセミナーが用意されている。会場で行われるセミナーと、オンラインで行われたセミナーの数を合わせると、2015年だけで約1,800回も実施されたそうだ。
オンラインでのセミナーも含まれるのであれば、その数も納得、と感じるだろうが、実は半数が会場で行われたセミナーである。単純に計算しても、1日に約3回は楽天市場主催のセミナーが行なわれていることになる。そして、参加人数は1年間で延べ9,000人にまでのぼったというから驚きだ。
これはやはり、全国17か所に支社を持ち、全国に約500名のECコンサルタント、さらに支社ごとに新規営業担当者がいるからこそ行えることでもあるのだが、何よりも楽天市場の出店者への手厚いサポートを感じる。
さらには、2000年に設立された楽天大学も重要なサポートの1つだ。全国各地で開催されている講義だけでなく、「RUx(アールユーエックス)」というeラーニング形式の講座もあり、ページの作成や運営ノウハウなど、約1,600もの講座が用意されている。セミナーと同様、地方に住んでいる出店者などは、なかなか会場へと行くのが難しい。そのため、どこでも、いつでも見ることができるオンライン上のサービスを行っているのである。
楽天市場にある「人と人とのつながり」
深澤氏が「楽天で売れないものはありません。ただし、売り方が大切なのです。」と語るように、確かに、楽天市場には様々な店舗が出店しており、商品数も多い。しかし、数が多ければいいというわけでもないようだ。深澤氏は「”楽天市場”で、”EC”で売上を上げたい。そういう人と一緒に頑張っていきたいのです。」と。
楽天市場が【環境・システム・ノウハウ】を提供しているから、売上が上がるのではない。出店者の「やる気」こそが一番重要な要素なのである。その「やる気」を維持、助長するために【環境・システム・ノウハウ】や全国のECコンサルタントが存在しているのである。
もちろんEC初心者だからといって楽天に出店できないわけではない。EC初心者であってもさらには実店舗を持っていなくても楽天市場に出店し、末には実店舗を持ったという話もある。まずは目標を定めて、全力で挑むことが大切なのだ。
この「やる気」に対しても様々な段階やベクトルがあるように、先に述べた”ひとけ”の醸し方も異なってくる。だからこそ、楽天では全国各地に支社をつくり、ECコンサルタントが時に店長へ直に訪問し、交流しながら店舗を作り上げている。
この「楽天市場」を通して、消費者と店舗、店舗同士、そして店舗とECコンサルタントがつながるこの仕組みこそ、楽天市場が掲げるミッション、「Empowerment -インターネットを通じて人々と社会に力を与えること-」を体現し、結果的に出店している一店一店が輝く、国内最大のバザールが成立しているのである。
(企画/石郷 “145“マナブ 文/利根川 舞)