潜入!日本橋三越。元DeNA社員が目をつけたのは猫!?

石郷“145”マナブ

今回の主役はネコ!愛くるしいネコに何を見る

 ある時、DeNAの方から連絡をいただいた。何でも元DeNA社員が独立し、そのノウハウを生かしてペットのキュレーションメディアを立ち上げ、好調だという。満を持して、猫をテーマに、肝いりのイベントを開催するというので、東京・日本橋三越にやってきた。そこで目に入ってきたのは、こちら。ネコが好きな人にはたまらない動画である。



 そのイベントとは4月27日、本日から、東京の日本橋三越で、株式会社PECO(PECO社)が開催する「PECO NEKO館」だ。僕がなぜ、この場に来たかというと、リアルイベント「PECO NEKO館」を主催するこのPECOという会社のやり方に、新たなECのあり方を見れそうだと感じたからだ。そして、ここで考えたいのは、「キュレーションメディアとECの関連性について」である。PECO社は、ペットユーザーが利用する国内最大級のキュレーションメディア「PECO」を運営しており、そのメディアは、始まって一年足らずで既に月間アクティブユーザーが300万を誇り、PV数も1350万。とはいえ、このPECOは実に、戦略的で練られたもので、単純な読み物として、キュレーションメディアを捉えていないところが注目すべき点なのだ。

 まずは、このメディア「PECO」が、なぜにこれまでの急成長を果たせたのかに迫ろうと思う。サイトを覗くと、例えば、様々なネコに関する動画がある。これも戦略の一つで、サイトを運営するにあたり、優良な動画をセレクトし、許諾などもしっかり得た上で、それをメインコンテンツに据え、そこにそれを盛り立てる良質なテキストを添えて、ペットを愛する読者の心に訴えかけている。そのテキストと選定力へのこだわりは徹底していて、独自の編集部を同社内で抱えるほどのこだわりぶりだ。その他、作成にあたっては、看護師や飼育室などの経験者などの専門性の高い人たちの声も存分に活かし、そのクオリティへの飽くなき追求が感じられる。

ネコのファンは、もっといろんなところに。だから、三越にもやってきた

ネコのファンは、もっといろんなところに。だから、三越にもやってきたリアルイベント「PECO NEKO館」での様子

 メディアのこだわりは、すぐにネットを活用する多くのペットを愛するユーザーの間では、好意的に受け止められ、瞬く間に広がったものの、ネットに触れていない人たちにも、このメディアにかける想いとクオリティを認知させるべく、この「PECO NEKO館」のイベントを用意し、さらに攻めの姿勢を見せた。

 実際のところ、PECOの吉見晋平氏によれば、「ネットでも30代〜50代といったユーザーが多いことから、この三越日本橋本店と合致する部分が多く、私たちがイベントをするにはふさわしいロケーションと考えている」と意気軒高。イベントでは、先ほど触れた豊富なネコの動画の中で、特に厳選された100個と、同じくメディアにおける人気コンテンツとなっている。数多くのInstagramの写真のうち、300枚を公開して、来場者をソソる。ネコのファンでなくとも、にんまりするようなシーンや写真が次々目に飛び込み、勿論、物販も行っている。その商品で垣間見れる猫の愛らしさには、思わず翻弄されるものだ。iPhoneケースやペンケースなど、個性豊かなファニーで、アーティスティックな商品が多い(下記の写真)。この商品こそが、通常、ECでも販売されているものであり、僕が注目している部分でもある。

キュレーションメディアとECの関係性

キュレーションメディアとECの関係性クリエイターによるネコの雑貨たち。

 さて、このキュレーションサイトとECがなぜ結びつくのかという部分に関してだ。このメディアの注目すべきところは、ターゲットが極めてクリアである点にある。例えば、他のファッション系のキュレーションメディアにおいては、ファッションが好き、コスメが好き、旅行が好きという様々なニーズが混在しているが、このメディアに関して言えば、ペットが好きとギュッと絞り込まれており、それも、犬、猫、という具合に、ハッキリしていて、読者の心にリーチしやすい。絞り込まれているから、何を書けばいいかの目的もしっかりしており、エッジを効かせることも可能となる。

 読者層が明確であるからこそ、いろんな価値を生みやすい。敢えて、ECサイト「ペコマ( http://www.pecoma.jp/)」では、クリエイターさんがハンドメイドで作成した動物の雑貨を販売している。これだけ感度の高い、モチベーションが高いネコのファンが集まれば、どうだろう。これらの商品の見え方も変わってくるだろう。最近、ハンドメイドのサイトが隆盛を極めていることを前提に、その中で、例えば、猫好きの好みを考慮されて作られた希少なアイテム達であれば、それが猫好きのハートを掴まないわけがない。

ECはいろんな形で、笑顔を作れるはず

 結果、それが動物のセレクトショップとして、とても感度の高いものとなり、ここのECでの売り上げは、今年初めにスタートしたが、それ以来、前月比200%成長を、毎月ずっと続けているという。キュレーションメディアは一見すると読み物、という見方もできるが、ある一定のターゲットに絞り込み、そのコンテンツのクオリティと感度を高めていけば、その読者層はブラッシュアップされ、そこに消費を生む新しいマーケットにもなりうるのだ。

 PECOと話すと、特にそのマーケットを作っていこうという意識の強さを感じるものであり、それを思えば、ここを起点にいろんなことに派生していく可能性を持っている。全部がいい循環で回って、マネタイズするビジネスを生んでいく。雑誌メディアに変わる存在として注目されるキュレーションメディアではあるが、僕は、この事例を見るにつけ、新しいマーケットを作り出す手段としてキュレーションメディアがあることを思うのだ。

 確かに、これまでのように、ショッピングモールなどでものを買うという消費行動がある一方で、そのモールができたのは、今から20年前の話である。その時にはスマホもなかったのであり、もっと売り方が多様化したっておかしくない、と思う。
 その中にあって、「PECO」は、極めて戦略的にキュレーションメディアを立ち上げ、強力なコミュニティとして、消費を生み出すマーケットを作り出そうとしている点において、僕はこれからのECを考えるのであれば、注目すべき、サイトであり、動きであると思うのだ。

 ECがいろんな人の笑顔をもたらすために、もっともっと変化をしていくだろう。その成り行きを、今までの売り方に依存することなく、消費者の笑顔を思い浮かべて、我々も変わって創造していかなければ、ニャらないのだ。


記者プロフィール

石郷“145”マナブ

キャラクター業界の業界紙の元記者でSweetモデル矢野未希子さんのジュエリーを企画したり、少々変わった経歴。企画や営業を経験した後、ECのミカタで自分の原点である記者へ。トマトが苦手。カラオケオーディションで一次通過した事は数少ない小さな自慢。

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