特別企画:ASPカートが見据えるECの未来

ECのミカタ編集部

 1995年はECにとって重要で、かつ革命的な年でした。なぜならインターネットが誕生したのだから。あなたはインターネットがない生活、考えられますか?ネットで商品を買わない生活、想像できるでしょうか?今やモールとともに当たり前に存在する独自ドメインのEC店舗。その中でも更に手軽に始めることができるASPカート。

 ASPカートで店舗を持つ意味、存在の意味、理解できていますか?

 今回はそんなASPカートを丸裸にするべく、老舗である株式会社Eストアー 代表取締役 石村 賢一さんにお伺いしました。
(企画/石郷“145”マナブ  文/柏木 愛美)

特別企画:「ASPカートが見据えるECの未来」目次
・【成り立ち】
・【CARTSTAR編】https://goo.gl/jT8kuH
・【FutureShop2編】https://goo.gl/hlUZ30
・【MakeShop編】https://goo.gl/oEQZwK
・【カラーミーショップ編】https://goo.gl/JF9NmQ
・【ショップサーブ編】https://goo.gl/tjyoGN

ASPカートの存在意義に迫る

 EC店舗での買い物は今や生活していくには欠かせない。なぜならいつでも、どこにいながらも商品を購入することができて、商品を届けてくれるからだ。商品の幅も多く、生活必需品から服、家具や雑貨、欲しい商品はほとんどすべてネットで揃えることができると思う。中には独自のこだわりを持っている商品もたくさんあり、ネットショッピングにおいて見ているだけで楽しいし、見ていると思わず購入したくなってくる。

 こだわりの商品は独自ドメインの本店で、大切な自社のお客様に、商品の価値を最大化して売られていることが多い。独自ドメインを持つことができるサービスの中でも、より手軽に安価に始めることができるのがASPカートである。ASPカートとはアプリケーションソフトをインターネット上で提供していて決済の機能もついているサービスであり、ネット上に自店の住所を持つことができる。例えるならばアパートやマンションではなく、他人ではない自分のこだわりを最大限発揮することができる一軒家なのである。

 そんな商品に想いを込めたお店が集まるASPカートとはどのような存在意義があるのだろうか?その理由を求めて、株式会社Eストアー(以下、Eストアー) 代表取締役 石村 賢一さんを尋ねた。ASPカートを築いてきた石村さんに、ASPカートが誕生した当時の状況を目の当たりにし、そこから自身がどう思い、どう行動してきたのかを伺う。そうすることでASPカートの本質が見えてくるはず、と思うのだ。

歴史:インターネット時代の到来

 「1995年、初めて生きててよかったと思いました。インターネットの中で皆が自由になれたのだから。」と石村さんは語る。今やあって当たり前の存在の、社会のインフラになっているインターネットだが、1995年に人々にインターネットが広まる。そしてASPカートの誕生にはインターネットの誕生が大きく関わってくるのだ。

 1993年以前は、パソコン通信の時代と呼ばれていた。その時代は「ASCII net」「日経MICS」「Nifty Serve」「PC-VAN」といったパソコン通信ホストのコミュニティが活発だった。人々は会員としてそこのコミュニティに参加し、交流を深めていた。まだECと呼ばれていなかったが、そこのネットワークで物も売られていた時代である。しかし1993年にインターネットが登場、1995年に「カメレオンTCP/IP」と「Net Scape Navigater」がWindows95に標準装備されてから本格的に人々がインターネットを使う流れとなったのだ。パソコン通信の時代に人々が所属していた狭いコミュニティがインターネットの登場によって全てくっつき皆が自由になれ、広大な大地と化して一気に世界が変わったのである。

 インターネットが登場し、世界が大きく広がった。自分の家にいたと思ったら急に目の前に大草原が広がったようなものだろう。そんな大草原の誕生に石村さんは「大興奮でした。生きててよかったと思いました。」と語る。ではそんなインターネットの時代において石村さんは何を想い描き、なにを行ってきたのか。

 その答えを「1995年にインターネットの時代がきて、1997年に楽天が登場、翌年1998年にEストアーを立ち上げました。その時やりたかったことは3つあります。コンテンツを作ること、EC、コミュニケーションです。どれもインターネットが誕生し、世界が広がったからこそのことでした。そして私は誰でもコンテンツを作ることができるプラットフォームを売るべく、創業当時はレンタルサーバーを販売していました。 そして次にそのレンタルサーバーに決済機能を付けました。今でいうASPカートです。最初は決済でオリックスカードしか使えないものでした。今では考えられないですよね。(笑)」と言う。そう、インターネットの時代においてのASPカートは石村さんが作り上げてきたのである。

歴史:ASPカートの波は必ず来る

 「レンタルサーバーに決済機能を付けたASPカートですが、最初は全く売れませんでした。レンタルサーバーのみが売れ続けたのです。」

 自己表現の場となったインターネットにおいて最初はECを行うという人々考えはなく、レンタルサーバーを使って自分を表現するような何かをやりたいというニーズがほとんどだったのだ。しかし石村さんは信じていた、必ずECの時代が来ることを。
 
 やがてECの兆しが見え始めたのが2003年。

 「きっかけはお店を作りたいというニーズではなく、インターネット上にお店があってほしいというニーズでした。そしてEストアーに最初のお客様がやってきました。最初の店舗は今でも忘れない、ラジコン屋でした。ECをやる、と腹をくくった店主が私のもとに訪れました。そう、最初私が考えていた必ず来るであろう時代が来たのです。そこから先は急成長です。」

 レンタルサーバーに決済がくっついたASPカート機能“ストアツール”は、Eストアー創業の翌年1999年6月に発売されたが当時全く売れず、時を超え2003年に人々のニーズをつかみ、急成長を遂げたのである。

 「私はインターネットの時代が来てから、ECの時代は必ず来ると思っていました。サービス提供開始してから初めて売れるまでの4年間は注目されなかったけれど、ECにおいてのマーケットは広がる自信がありました。マーケットが広がればニーズは絶対に出てきます。それが2003年に証明されたのです。」

 インターネットにより突如現れた大草原。この大草原においてやがて人々は自分を表現する、自分のお店を持つ時代が来ることを石村さんは感覚的に予想していた。そしてやがて人々が必要となってくるであろうASPカートを事前に用意していたのである。インターネットは広大な大地の人々全てがEC店舗になりうるし、お客様になりうるのだ。ASPカートとはそんなとてつもなく広い大地全てを使い、自由に商売をする人々を支え、さらにその大地を大きくしていくパートナーなのではないだろうか。

ASPカートが遂に盛り上がり、何を思う

 ASPカートは2003年から盛り上がりを見せ始めた。石村さんは「2005‐2006年で更に伸びてきました。2009年までで一番成長し、今では飽和状態です。いわゆる競合と呼ばれる存在が出てきたのは2005年くらいからで、それまではASPカートにおいて弊社の独壇場でしたが、マーケットがまだ小さいままでした。しかし競合が出てきたことによりマーケットはさらに盛り上がります。みんなで盛り上げることによってマーケットが広がるのです。」と話す。

 ASPが盛り上がりマーケットが広がることで、ECの規模も広がっていく。Eストアーがこれから来るであろうニーズを読んでASPカートを作り出し、その後ASPカート業界総出でECのマーケットを広げ、EC店舗を成長させてきたのだ。その歴史は重く深いものだったと思う。ECの歴史はASPカートの歴史であると言える。

次のページにて、
EC業界においてASPカートが持つ意味とは?

ASPカートに集まる店舗たち

 そもそもASPカートとは何なのか。どのような人がどのようなニーズで使い、どのような結果をもたらすのだろうか。モールは出店が比較的簡単で、元々モールに買い物に来ているお客様に向けて商品を売るため、集客も簡単だ。一方のASPカートとは独自ドメインの店舗であるためサイトの構築は自分たちで行い、集客も自分たちで行うことが必須になってくると思う。そこまで手をかけてASPカートにて独自ドメイン店舗を持つ意味は何なのだろうか。

 それに対して石村さんは「ASPカートを利用する人はモールとは違って自分からリスクを取ってやってきます。集客も頭を使って行い、商品にも自信がないと売れません。しかし自社のドメイン、つまりEC店舗の本店を作ることができます。また、自社で努力し集客したお客様は自分たちのお客様です。ASPカートでEC店舗を作る人は自分で商売をやりたいと思って、自社の商品を自分たちで売りたいと思っている本気度が高い人たちです。」と語る。

 マーケットが広がるにつれて、実店舗から販売場所が移り変わったり、実店舗とEC店舗を持つことによって、より本気でECを行いたいというニーズが増えてきた。そんな人たちがEC店舗において、どう商売をやっていくのか、自分たちが最終的にどこへ向かっていきたいのか、商売を何のためにやっているのか、そんなことを本気で考えて行き着いたのがASPカートなのではないだろうか。独自ドメイン、自分たちの店舗、自分たちのお客様、自分たちの商品、そこに誇りは確かに、必ずあるはずだ。

ASPカートから見えてくる、商売の本質

 「ASPカートが売れ始め、決済会社がEストアーの契約先のEC店舗さんの名前を請求書に使うということはまだ出来ていませんでした。つまり最終的な消費者に届く請求書はすべて“Eストアー”と記載されているのです。それにより、消費者の問い合わせはすべてEストアー宛に来ます。『商品まだ届かないんですか?』とか。その頃はASPカートを使うにあたっての社会インフラがまだ整ってなかったんです。」

 しかし現在、社会インフラは整い、石村さんが言うようなことは今では考えられない。そしてASPカートの成長とともにECでの社会インフラも整ってきたのではないかと感じる。だって今こうしてたくさんの独自ドメイン店舗を支えているのだから。石村さんが最初に作ったASPカートが、他の様々なASPカートを作り、EC店舗を作り、EC店舗の売り上げを上げ、お客様の笑顔を作ってきたのだろう。

 立ち上げから今までやってきて夢はありましたか、という質問に対し石村さんは「夢はないです。必死だったから。そして未だにないです。しかしインターネットの普及により必ずマーケットは広がっていく、そしてニーズが出てくる、と信じてぶれることなくやってきました。その結果、広がっていって商品が売れていった。それだけなんです。」と語る。

 商売の本質とは非常にシンプルだ。ニーズを読んでそこに商品を作れば必ずお客様はついてくるのだから。これはEC店舗においても同じことが言えるはずだ。ASPカートを作るにおいて考えてきた商売の本質は、EC店舗へと受け継がれていくのである。ようやく石村さんが描いていた感覚がEC店舗の中で芽生えてきたのだ。そこからがECにおける商売のスタートだろう。そんな時代においてEC店舗を運営していくには商品に自信を持たないといけない。ASPカートを使う人はそんな時代を自信を持って生き抜いていきたい人の集まりである。

大草原を駆け抜ける独自ドメイン店舗

 「未来はどんどんいい時代になります。今までは安い商品が売れる傾向にありました。しかしこれからの時代は真面目にいい商品が売れるようになってきます。だからこそ本気でECにて商売をやっている店舗はどんどんプロフェッショナルになっていきます。そんな人たちは自分たちのこだわりの商品を売るために独自ドメインに集まってくるでしょう。こだわったものは本店化されるのです。これからのECは“コンビニ型店” “専門店” “イベント型店”に分かれてきます。そして独自ドメインのASPカートは専門店に分類されます。」

 未来、専門店はさらに充実し、こだわった商品こそが勝ち抜いていく時代が来ることが予想される。そんな未来に対し、それぞれのEC店舗が何を想い、どのような行動を起こし、どのような店舗を作り上げていくのか、それは店舗の自由である。しかし石村さんが語る商売の本質を考えるとこれからさらに開かれる世界において、どのようなニーズをキャッチし自信を持った商品を販売していくのか、シンプルであるが重要なことだろう。

 EC店舗の運営に本気で向き合いたい、真面目ないい商品をこだわりを持って売りたいという人の成長と共に、ASPカートはある。常に変わる世の中においてASPカートによってEC店舗で売る商品に価値をつける、商品に価値をつけるからこそ独自ドメイン、そして独自ドメインだからこそお客様に商品の価値が伝わっていくはずである。

 ASPカートはインターネットの時代がきて、石村さんの“マーケットが広がる”という感覚的予想をしたという、シンプルな始まりだ。そしてそれはマーケットが広がり、ニーズが増えることにより商品の価値を上げていった。非常に本質的である。1995年のインターネットが普及したことにより向き合う面積は無限大になり、ECにおいてもASPカートはインターネット利用者すべてがお客様である。

 インターネットという広い大草原の中で、そこにいる人たちに向けて本気でこだわった商品を売ろうとしているEC店舗たちを応援してくれるのがASPカートなのだろう。ECの始まりを作り、現在もECの成長を広げるASPカート、この歴史は語り継がれ、EC店舗にも想いが繋がっていくはずである。その想いが未来へ語り継がれるとき、石村さんが言うASPカートによるこだわった商品を持つプロフェッショナルな店舗たちのECマーケットの時代が幕を開けるのだ。


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