アプリに動画、EC業界を取巻く変化に対応できてる?(インテージ調べ)

利根川 舞

パソコンからスマホへ、デバイスは変化してもユーザーは…

株式会社インテージ(以下「インテージ社」)が、マルチデバイス利用調査を独自に実施。この調査では、インターネットの利用状況とパソコン(自宅内および自宅外利用を含む)、スマートフォン、タブレット、テレビといったデバイスの利用状況を聴取しており、今回はデバイスの利用動向について、過去3年のデータから分析が行われた。


 パソコンのみ、スマートフォンのみ、テレビのみ、という単体デバイス利用と同様に、デバイス利用パターンにおいても年代ごとに差が見られる。最も多いトリプルデバイス利用者(パソコンとスマートフォンとテレビ)を年代別に詳しく見ていくと、10代から40代においては約60~70%、50代においては50%弱、60代においては20%を切る状況だ。また、パソコンとテレビのみの利用は男性のほうが多く、一方でスマートフォンとテレビのみ利用は若い女性が多いという結果になった。

 デバイスの利用パターンは年々変化をしているが、かといって、消費者が接触する内容は必ずしも変わっているわけではないという点に注意しなければならない。
 かつてパソコンを利用してAmazonで買い物をしていたパソコンとテレビのみの利用者が、スマートフォンとテレビのみの利用というパターンに変わった場合、実際にはスマートフォンで同じサービスであるAmazonをスマートフォンのブラウザで利用したり、アプリを利用しているということが考えられるのだ。

 モールで言えば、Amazonだけでなく、楽天市場やYahoo!ショッピング、DeNAショッピング、ポンパレモール、Qoo10などもアプリが存在しており、それほど需要があることが考えられる。実際に、インテージ社の調査では、スマートフォン利用においてブラウザとアプリは1:9の関係となっており、ほとんどの人がアプリを利用していることがわかる。

 アプリの利用は、利用者にとってだけでなく、プッシュ通知が送信できることでメールマガジンなどよりも、利用者へリーチしやすくなるという点はEC事業者にとっても大きなポイントとなる。また、アプリをダウンロードしてもらうことができれば、日々目に入るため、利用する機会も増えるだろう。

 とはいえ、アプリを作るというのはコスト面でもノウハウという面でも、なかなか難しいことだろう。だからといって、スマートフォン利用者を逃すのではなく、スマートフォンに対応したサイトを作り上げることによって、利用者の離脱を防ぐことが、まずは重要だと言える。

動画配信の普及はECにどんな影響を与える?

動画配信の普及はECにどんな影響を与える?

 デバイスの使用率を見るに、例えば、スマートフォンやタブレット、パソコンなど、ネットを使ったサービスの幅が広がって、これまでテレビが果たしていた役割に加えて、パソコンやスマートフォンが同様の役割果たすようになってきている。

 テレビ離れが謳われているものの、15~69歳のテレビ利用率はいまだ98%となっているが、パソコン利用率は2013年から2015年にかけて76%から73%へ微減したものの、スマートフォン利用率より高い水準。一方で、2015年のスマートフォン利用率は60%、タブレット利用率は23%となり、いずれも2年間で10ポイント以上増加している。

 テレビが持っていた役割を担っているのは、動画の配信だろう。この点に関しては、Amazonも積極的に、プライムビデオなどで、その層の取り込みをしている事からも明らかだろう。

 株式会社インプレス(以下「インプレス」)のシンクタンク部門であるインプレス総合研究所の調査によれば、Amazonの「プライム・ビデオ」やゲオによる「ゲオチャンネル」などの動画配信サービスの利用率は「3か月以内に、有料の動画配信サービスを利用したことがある」が9.2%となった。昨年の7.7%からは1.5ポイント増加し、3か月より以前の利用者も含めた利用経験者は14.2%(同0.7ポイント増)となっている。

 動画配信サービスの利用経験者が増えようとも、テレビの利用率は変化しておらず、テレビと他のデバイスを利用している可能性は大いにある。これについて、インテージ社の調査によれば、実際は、同時に複数のデバイスを使い分けている人がほとんどなのだという。一番多いパターンは、パソコンとスマートフォン、テレビの3つのデバイスを使う“トリプルデバイス利用者”で、全体の半数近くにのぼるという。

 動画といえば、昨日掲載された記事の中に株式会社ジャストシステム(以下「ジャストシステム」)の行った『モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2016年5月度)』について書かれたものがある。この調査の中で、「YouTubeではじまる新しい「6秒間広告」への印象」を問う内容というものがあったが、この6秒間の広告は目的の動画の前に再生されるスキップできない「バンパー広告」を指している。

 YouTubeなどの動画共有サービスや動画配信サービスが普及するにつれて、利用者の中ではこういったバンパー広告や企業の宣伝広告動画が一般的になっている。動画ならば、写真では伝わらない部分も表現することができる上に、目に留まりやすい。もちろんただ、商品を紹介するのではなく、商品の使い方を動画で配信することで販促や顧客満足度の向上につながることもあるだろう。

 スマートフォンの普及により、動画やアプリなどが一般的なものとなっている上に、動画の配信であればYouTubeとまでは行かずとも、InstagramやTwitter、Vineなどでも動画は投稿できる。こうした既存のサービを新たな手段として、それらの可能性を最大限に活かして見てはいかがだろうか。


記者プロフィール

利根川 舞

メディア編集部
ロックを聴きつつ平安時代に思いを馳せる文学人間。タイムマシンができたら平安時代に行きたいです。
ライブハウスやフェス会場に出没しては、笑って、泣いて、叫ぶ姿が目撃されている。ACIDMANや10-FEET、ROTTENGRAFFTYが大好き。

サービスやその場の雰囲気がイメージしやすくなるような記事を書いていきたいと思います。

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