EC専門子会社ピックオンの統合と、キタムラEC事業部の発足

逸見光次郎の連載コラム「カメラのキタムラ EC成長の道のりと今後の展望」
第2回:「本当の人間力ECとは」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/6830/

第3回:「流れを良くすると仕事がはかどる?」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7000/

第4回:「仕事をもっと楽しく、そして儲かるようにしよう!」
http://ecnomikata.com/ecnews/strategy/7078/

本体と子会社

EC専門子会社ピクチャリングオンライン社(通称:ピックオン)の物流・倉庫の話から、ボトルネック解消(TOC)の話に行ってしまいましたが、話を本流(笑)に戻したいと思います。
 
私がキタムラに入った2011年は、ECに関わる組織としてキタムラ本社の商品EC部(バイヤーや販促部隊がいる)配下に、「ネット物販部」と「ネットイメージング部」があり、『キタムラネットショップ』(いわゆる本店。宅配と店舗受取が可能)の営業をしていました。

一方、ピックオンは自社サイト『家電オンライン』『デジカメオンライン』及びそれぞれのYahoo!店、楽天店で家電・カメラの販売を、『オンラインラボ』ではネットプリント・フォトブックの販売をしていました。さらに『キタムラネットショップ』の宅配出荷とコールセンター機能などを請け負っていました。

このようにECには2つの部隊が存在し、キタムラ全体での商品仕入も、本社と子会社で別バイヤーが行っていました。地デジ対応や家電エコポイントまでの成長期はそれでも良かったのですが、家電の成長が止まってくると、厳しい市場での戦いになります。特に宅配事業は家電量販店との価格競争に突入し、1円でも安く、となります。そうなると全社で8,000億円~2兆円売っている大手量販のバイイングパワーにはかないません。

また組織が分かれて縦割りになってしまっていた事で、情報共有が遅れたり、対応が遅くなったり、各人は頑張っているのに成長出来ないというジレンマに陥っていました。

会社合併とEC事業部の誕生

そんな状況下、入社1年後の2012年1月にピックオンの代表取締役会長の辞令と共に本格的に改革に乗り出すことになりました。

繰り返しますが本社も子会社も、各人は頑張っているのですが、見えている範囲の部分最適で考えてしまうと、各人の力が組織の力につながりません。子会社ピックオン側では利益改善の為に、本社から出荷の受託手数料を取る、という話が出て来ました。それ自体は子会社の経営上当然であり、悪い事ではないのですが、結果として”キタムラ“という全体の利益がP/L上どこに付くか、の付け替えに過ぎません。その為に経理が仕分けをしたり、手数料額の計算をしたり、帳票項目が増えたり、作業が確実に増えてしまい、キタムラ全体としてはマイナスにもなりかねません。新横浜と高松という距離もあって、コミュニケーションもうまくいっていませんでした。

そこでECの出荷やコールセンターというピックオンのインフラ面での改善を行いつつ、組織面ではバイヤーを統合する相談を経営陣にしました。まずはカメラバイヤーに新横浜に異動してもらい、のちに家電バイヤーも同じく新横浜に異動してもらいました。その事で本社側も仕入れ業務が一本化され、バイヤーが店舗とECの仕入れ責任を持つことになり、商品確保や受発注の流れも整備されてきました。

コールセンターもちょうど既存システムの入れ替え時期が来ていた事と、内製化したいという経営陣の方針が重なり、日本橋の店舗コールセンターと、高松のECコールセンター、そして川口の現像工場(ラボ)コールセンターを一つのコールセンターパッケージでつなぎ、受電や離席の状況把握、ログの共有と電話転送などがスムーズに出来るインフラを整えました。あわせて月一回の定例TV会議を行い、各コールセンターが定期的に話し合う環境を作りました。もちろんその間には、人間が実際に行き来して、お互いの業務を理解する&飲む(笑)も組み込まれました。少しずつECとキタムラの組織がつながってきて、全体最適で業務と成果を考えられるようになってきました。

こうした動きと併行して、最終的に会長の北村さんの決断で、2012年9月1日にピックオンをキタムラに統合し、キタムラ内に「EC事業部」を発足させる事になりました。各WEBサイトはどうするのか、人員・組織はどうなるのか、既存システムはどうするのか?次回お話させていただきます。
   
(第六回へ続く)