「A!SMART」が不正対策強化、アミューズが守るブランド価値

福島 れい

アミューズ 株式会社アミューズ MD事業部 渡辺 太さん

 最近、EC業界ではクレジットカードを不正に利用した悪意ある注文が増加し、経済産業省がEC事業者向けに対策を打ち出すなど、不正注文対策に注目が集まっている。今回、サザンオールスターズや福山雅治さん、星野源さんなど多数のアーティストが所属する株式会社アミューズの公式オンラインショップ「A!SMART」が不正検知サービス「O-PLUX(オープラックス)」を導入したと聞き、取材に伺った。お話いただいたのは、株式会社アミューズ MD事業部 渡辺 太さん。導入の背景には「ユーザーを、商品を、自社のブランドを守りたい。」という強い想いがあった。

有事に対応では遅い。自社を守る予防策を

 そもそも「A!SMART」は、アーティスト公式グッズやライブグッズ、Tシャツやタオルなどの雑貨、CDやDVDなどの音楽パッケージを販売するECサイトだ。海外からの注文も多く、国内向けサイトと海外向けサイトの双方を展開している。

 不正検知サービスを導入するということは、不正注文の被害が多発していたのだろうと思ったのだが、被害はそう多くないのだという。ではなぜ導入を?と問うと「アーティストやブランドの価値を守りたいという意識が強いためです。期間限定販売などを行う商材の性質上、転売されやすいことや海外展開も進めていることを考えると、不正被害に遭うリスクは高い。有事に対応するのでは遅く、ブランド価値を守ることができないのではないかと考え、予防の意味を込めて導入に踏み切りました。」と渡辺さんは語る。

↑ 「A!SMART」のトップページ

 不正検知サービスの導入以前より、「A!SMART」の決済を支えているQCS株式会社(NTTデータ社のCAFIS BlueGateを活用したクレジットカード決済代行サービスを提供している)の協力のもと、クレジットカード情報の非保持化対応をし、安全性を高めていた。また、チャージバックなどが発生した際にも注文データの分析や、怪しい注文をピックアップするロジックを組んでいたというが、どれだけ対策を組んでもいたちごっことなってしまい、限界を感じたのだという。

 そこで、かっこ株式会社が提供する不正検知サービス「O-PLUX」を導入。O-PLUXは注文データを自動で審査し、独自のルールに従って、OK・保留・NGの結果を返すというものだ。ビッグデータを活用し、不正注文の傾向をつかんでいるため、自社でロジックを組むのに比べ高い審査精度が実現する。ロジックを組む際には、過去の注文データやチャージバックデータなども活用することでより精度が高まるため、ここでもQCSの力が加わっている。現状、導入から2か月と短期間であることもあって、目に見える導入効果は出ていないというが、アーティストの動きと合わせて海外展開を進める流れのなか、必要な対策だと捉えているという。

 渡辺さんが強調する「アーティストやブランド価値を守る」というのは、アミューズに限った話ではない。特に自社商品を持つECサイトや商品価値の高いECサイトにとっては非常に重要だ。現状、被害が出ていないECサイトにとっては、不正対策のために費用がかかってしまうのは納得がいかない気もするだろう。しかも悪いのは不正を働くユーザーだ。しかし、不正注文によって商品が不当な価格で売買されたり、反対に商品価値が下がってしまったりすることで、ブランドイメージは棄損しかねない。自社を守るためには必要な対策なのだ。

 ぜひ早めの予防、対策に取り組んでほしい。不正対策の方法は不正検知サービスの他に、「社内で専用システムを持つ」、「チャージバック保障をつけリスクヘッジをする」など様々な方法が考えられる。各方法の特徴やメリット・デメリットは下記にまとめた。まずは対策方法を知ることから。ぜひご活用いただきたい。

あなたのサイトを守る対策法まとめ

※QCS株式会社は、2015年11月よりマザーズ上場のビリングシステム株式会社の100%子会社


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記者プロフィール

福島 れい

ECのミカタ編集部に所属するバドミントンと和服、旅好きの記者、通称れーちゃん。ミニ特集「アパレルECの未来(https://goo.gl/uFvr2C)」等、これからEC業界がどんな風に発展していくのか。に注目しながら執筆しています。2017年の執筆テーマは、”私にしか書けない記事をタイムリーに”。

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