海外と日本でビジネスを展開する社長に聞いた!“越境EC市場での成功秘訣”
越境ECが注目される中、海外進出を成功させるためにはどんな心構えで、どう対応していくべきか。現在、アメリカ・イギリス・日本を拠点に越境EC支援サービスを展開するアラウンド・ザ・ワールド株式会社(以下、アラウンド・ザ・ワールド)代表取締役 永井あき氏に、お話を伺うことができた。長年の海外生活・ビジネス経験から培ったノウハウとともに、自社サービスにかける想いを探っていく。
文化?それともシステム?日本と海外のECの違い
越境ECが何かと話題に上る昨今、日本と海外のECでは具体的にどのような違いがあるのだろうか。「日本のECには楽天、Yahoo!、ZOZOTOWNなど複数のサイトがあるため、消費者がまず商品を検索するときにはGoogleを利用すると思います。一方、アメリカやイギリスではモール数が少ないため、最初からAmazonで検索します」。
また、サイトのイメージについても違いがあるという。「日本では出品を避けがちなオークションサイトにも、海外では大手企業が当たり前のように出品しています。例えばAmazonとeBayのイメージについても、扱う商品が違うというレベルの認識です」。アメリカでは副業が一般的であるため、多くの人が気軽にECサイトに出品をしている。またリサイクルに対しても抵抗感が少ないのだという。
さらに永井氏は「日本は“買い物後”に溜まるポイント制が多いですが、アメリカでは“その場の買い物”から使えるクーポンコード制がメイン。ハンバーガーを買うときですら、クーポンコードサイトを確認するくらいですから!」と語る。
関税・送料・配送・返品・言語。越境ECで注意すること
では実際に出店を考える場合、どんなところに注意すべきだろうか。「一番は、関税と送料です。ここを考慮しないと予期せぬ費用が発生します。また、アメリカはカード優位社会のため、PayPalやSquareなど様々な決済方法があります。日本ではようやくApple Payが導入されましたが、アメリカでは数年前から普及していますね。振込の場合はいまだに25ドルほど手数料がかかるため注意が必要です」。
いま日本のEC業界では課題を抱えている配送方法についても違いがある。「アメリカでは基本的に集荷は有料です。時間帯指定、着払い・代引きも存在しません。Amazonプライム会員であっても3、4日後の到着が普通。デリバリーよりも、コンビニなどに設置された宅配ロッカーでの受け取りが主流です」。永井氏は続けてトレンドにも言及する。「近年では『ストア・ピックアップ』が人気ですね。例えば大手デパートのオンラインで購入した場合に、最寄りの店舗で好きな時間帯(営業時間内)に商品を受け取ることができるシステムです。世界最大のスーパーマーケットチェーンのウォルマートは、大型商品をストアピックアップすると割引が適用される仕組みも導入しています。これにより、送料も必要なく物流問題も回避できます」。
そして留意すべき点に、永井氏は「返品」を挙げる。「アメリカは返品大国です。そこをクリアできなければ、アメリカでの商売は難しいといっても過言ではありません。返品対応に不慣れな日本の企業様は心構えが必要です」。
最後は語学。しかしこの問題は一工夫で大きなメリットに転換できるという。アラウンド・ザ・ワールドが推奨するのは、パッケージや説明書に日本語と英語を併記すること。それができれば、Amazonの北米枠(アメリカ・カナダ・メキシコ)をはじめ、ヨーロッパやオーストラリアなどへの展開が可能だ。
日本人スタッフによるきめ細やかなサービスを重視
そもそも永井氏がサービスを始めたきっかけは、個人的な輸入だったという。やがてそのホスピタリティが口コミで広がり、起業に至った。そして今では関税などの支払代行サービス、カスタマーサービス代行、翻訳サービスなど様々な事業に発展。3年ほど前からはアメリカ・イギリス・日本へのFBA納品代行サービスもスタートし、関税や送料を抑える提案なども行っている。
「弊社の強みは、日本人スタッフをメインに配していること。お客様との窓口になるカスタマーサービスにも日本人を起用し、きめ細かい対応にこだわっています」。
また何か問題が発生したときにも、現地に動ける人間がいる安心感は大きい。「例えば税関で問題が起きたとしても、正確な理解をもってお客様にお伝えすることができます。FBAの返品時にも、パッケージの痛み具合を撮影してお送りすることで、再販か、アウトレットか、滅却かを現物を見ずとも判断いただくことが可能になります」。その他にも、直接受け渡しができる信頼感をエンドユーザーに提供することもできる。
現地のニーズを汲み取り、越境ECの可能性を広げる
昨今では越境ECの注目度アップに伴い、Amazon.comにも日本の商品が多数ヒットするようになったという。しかし永井氏は「ただヒットするだけでは販売につながりません。例えば、和の商材。近年のアメリカでは日本の食や物への関心が高く、『メイド・イン・ジャパンの商品はどれ?』というお問い合わせも多くいただきますが、実際に手にとってみたい方へのアプローチが不十分です。越境ECだけでは売り手の一方通行になってしまうので、ゆくゆくはECとリアル店舗の二本立てが必要。目につくところに露出できれば、海外進出はもっと面白くなります」と語る。
「ただし一昔前のように巨額の投資は必要なく、いまの時代に合った合理的なやり方があります。費用を抑えて小規模から始められる代行サービスやサポートにも尽力していますので、ぜひご利用ください。お客様の海外進出の橋渡しができれば本望です」。事実、同社のサポートを通じて大きく躍進した企業がある。一つの商品が世界でヒットする越境ECの可能性を、永井氏は数多く目の当たりにしてきた。
「ここ数年で、商品開発から関わらせていただく企業様が増えてきています。ネットでは分からない現地のニーズ、アメリカ人好みのカラーやキャッチフレーズなどをご提案できるのは、弊社ならではの強みです。越境ECをお考えであればぜひ一度ご相談ください。身近なことからお手伝いができればと思います」。
今回永井氏にお話を伺い驚いたのは、終始「ウチは海外進出企業の便利やさんですから。」と笑顔で語っていたことだった。これだけの現地ノウハウと知見がありながらも、黒子として長年にわたり多くの企業をサポートしてきた彼女だからこその魅力が、最大のサービス価値だと思う。
越境ECを始めてみたい方、まずは一度アラウンド・ザ・ワールドに相談をしてみてはいかがだろうか。