インドに続くIT人材の宝庫“スリランカ”との連携による オフショアのシステム開発で、低コスト&高品質を実現
リーマンショック以来のIT人材不足を背景に、タイやベトナムといった東南アジア諸国でのオフショアによるシステム開発が長らく注目されてきた。しかし、こうしたオフショア拠点として注目され続けてきたタイやベトナムでも、人件費の高騰が見られるようになり、ここ最近、コストパフォーマンスは厳しくなっている。
そうした中で熱視線を注がれているのがスリランカだ。スリランカにある500人規模でエンジニアを擁するシステム開発会社と連携し、サービス提供を展開する株式会社エンヤー(以下、エンヤー)の取締役 高橋 勉氏に、詳しくお話を伺った。
今後ますます深刻化するIT人材不足の実態
経済産業省が2016年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」によれば、2008年のリーマンショック以降、IT人材の量的不足傾向が加速し、2014年時点では、調査対象となったIT企業の「人材不足感」は87.4%(「大幅に不足している」22.7%、「やや不足している」64.7%)にも達している。
「さらに同調査によれば、将来推計としては、2020年時点で約29万3千人超の不足となり、さらに2030年時点では約58万6千人超の不足になると予測されています。昨今何かと話題になるIoTの進展や、ECビジネスの市場規模拡大を例に挙げるまでもなく、今日の企業活動においては、多くの企業がITと無縁ではいられないという状況にあり、IT人材不足は、企業の存続すら左右する大きな問題として顕在化しつつあるというのが実情だといえるでしょう。」と、高橋氏は今後ますます深刻化するIT人材不足を懸念する。
勢い、多くの企業において、システム開発等を国内のSIerを軸とした発注で賄おうとしても、もはや間に合わないという状況がすでに発生している。早くからこうした状況を見極めていた企業では、かなり以前から、いわゆるオフショアによるシステム開発を導入していたが、その対象となっていたのはタイやベトナムなどである。比較的優秀なエンジニアが多く、人件費も日本国内に比べて圧倒的に安いということもあり、活用されるシーンは多く見受けられた。
しかし、ここ最近の傾向としては、これらの国々でも需要が供給を上回る傾向が出始め、人件費も高騰を続け、今日では、十分なコストパフォーマンスを発揮しにくい状況に陥り始めている。
技術力が高く、人材が豊富なスリランカが、いま注目のオフショア拠点となっている
そうした状況の中で、いま注目を高めているのがスリランカである。インドに隣接するこの国は、インドの影響を強く受ける中で、IT系産業の成長が著しい。
「日本企業などのオフショア開発については、伝統的にタイが強かったという事実はありますし、ベトナムも注目されていましたが、今日では、タイもベトナムも非常にコストパフォーマンスが悪化してきています。一方で欧米企業がインドを積極的に活用しているという実態にけん引される形で、スリランカも技術力を高めてきたという事実があります。そこで、弊社としてもスリランカに注目し、JETRO(日本貿易振興機構)のサポートを受けながら、約500名のスタッフを擁するスリランカのシステム開発会社との連携を強めることができました。」と高橋氏。
スリランカを軸としたオフショア開発事業については数年前からスタートさせており、すでに多くのノウハウの蓄積もあるという。
「現時点で、IT系人材が豊富なスリランカではありますが、さらに技術者の育成にも積極的です。また歴史的な経緯もあって、親日家が多いという点でも、日本企業のオフショア開発の拠点としては、非常に優位性があります。コスト面でいえば、日本国内のSIerなどと比較すると、案件によっては、半額近い開発コストで実施できるケースもあります。」と高橋氏は、コストパフォーマンスの高さを強調する。
もちろん、オフショア開発という特殊性から、発注において注意すべき点がないわけではない。
「オフショア開発を成功させる上で重要なのは、きちんとした情報開示と情報の共有です。“知っているはずだ”、“こんなことは常識だ”という意識で、丁寧な情報開示を怠ってしまうことが、オフショア開発でつまづく原因にもなりかねません。現場とのコミュニケーションはとても重要になるのですが、そうした点については、弊社スタッフがきちんとコーディネートしますので、クライアント企業に必要以上の負荷がかかることもありません。そのため、日本国内のSIerと変わらないレベルでの高い提案力と、スピーディーな納品も可能です。」と高橋氏は言う。
システム開発はもちろん、Webサイトの構築から運営まで幅広く対応するエンヤー
フルスタックの開発技術を擁し、低コストで高品質なシステム開発やアプリケーションを手掛けるエンヤーの業務内容は、それだけにとどまらず、モバイルアプリケーション開発、ビッグデータ解析、さらにはWebサイトの構築と運営についてもスリランカとの連携を強みとして、低コスト・高品質のサービスを提供している。
もちろんECにも対応しており、特にECに関していえば、オフショア開発の強みを生かして、ECサイトの多言語化も得意としている。
「スリランカの拠点には、システムエンジニアだけでなく、Web技術者やWebデザイナーなどのスタッフも擁しているため、企業のコーポレートサイトのようなものはもちろん、ECサイトの構築や運営なども日本のデザインに精通する日本人スタッフと連携しつつサポートできます。連携しているスリランカの開発会社には、独自の専門学校などもあり、さらなる有為な人材育成にも余念がありません。若い人材がどんどん育っているのです。ですから、ITシステムに関することであれば、どのような課題に対しても、最善のソリューションを提案し、遂行することが可能です。」と高橋氏は自信をみせる。
システム開発は急務なのだが、コスト高でなかなか実行を決断できない、という企業にとって、エンヤーは強力なパートナーになり得るポテンシャルを持っているということができるだろう。