台湾越境ECのエキスパートに訊く!日本企業に有利な市場、成功のポイントとは?
越境ECというとまず中国がイメージされがちだが、中国以外にも越境ECの可能性は広がっている。今、日本企業の参入が増えているのが、台湾越境EC市場だ。それはなぜなのか。台湾市場の特徴から中国市場との違い、日本企業が成功するためのポイントなど、台湾越境ECへの参入支援を行うアジアンブリッジ株式会社 代表 阪根嘉苗氏に伺った。
越境EC市場、台湾に注目する理由
越境ECの進出先として、現在、多くの企業が台湾を選んでいる。その理由は何なのだろうか。
まず、台湾EC市場が成長市場であることがあげられる。台湾のEC市場規模(2015年)は1兆台湾元で、成長率は長らく15%程と2桁台を保っている。この市場の成長を支えているのが「女性の購買力の高さ」だと、阪根氏は説明する。
「台湾の女性は日本などの他のアジアの国の女性と比べると基本的に、貯金をあまりしません。欲しいものはすぐに買います。さらに、未婚率が高く、たとえ結婚していても親と同居している世帯が多いので、自由に使えるお金が多く、それが台湾の女性の購買力の高さとなっています」。
日本と比べてみると、女性の生涯未婚率は、日本の12%に対し台湾は32%、25歳~39歳までで親と同居している世帯は、日本の43%に対し台湾は60%となっている。
さらに、日本企業が台湾EC市場に進出する理由として「圧倒的な親日的国民性」があるという。台湾の人々の「最も好きな国や地域」を訊いたある調査では、43%が日本と回答した。
この親日性は、日本のお店や商品を好むことにつながっている。特に、化粧品や健康食品など、女性のニーズが高い、リピート通販系の商材が強いそうだ。
阪根氏いわく、「たとえば、日本のファーストフードの新店舗がオープンしただけで、行列ができる程です。日本の商品に対しては、特に化粧品や健康食品など、安全で品質が良く、効果が高いというイメージがあります。そのため、日本に関係ない商品でも、パッケージに必ず日本語を入れる程です」とのこと。
中国より台湾を選ぶべきなのか
越境ECというと必ず話題になるのが「中国」だ。
しかし、中国越境EC市場では、基本的に、Tmall やJDなど大手企業が用意したプラットフォームの枠内で、そのルールに従った運営を行わなければならない。顧客の個人情報も自社のものとはならない。
税制や商習慣も独特で、日本での成功ノウハウが通用しにくく、日本のEC市場で成功している企業でも、中国のEC市場では苦戦するということが少なくない。
一方の台湾は、商習慣など市場の状況が日本と似ているそうだ。そのため、「日本での成功ノウハウを活かすことができます」と、阪根氏。
中国では反日感情が妨げになることもあるが、前述の通り、台湾は親日性が高いこともメリットだ。越境ECを行うにあたり、台湾は、比較的ハードルの低い場所と言えるだろう。
台湾越境ECの注意点
越境ECの進出先として、台湾を選ぶメリットが大きいことは分かってきた。とはいえ、当たり前のことだが、全ての企業が成功できるわけではない。日本と違うところもある。
商品の売り方について、法律面で注意すべき点がまず「薬事法」だ。ハードルの低い台湾市場だが、薬事法を正確に理解して対応することは、日本企業にとって高いハードルとなっている。アジアンブリッジは、台湾越境ECを支援する企業の中でも、薬事法を正確に理解して売り方に反映できる、数少ない企業だ。
また、「景品表示法」に関する注意点も。「過剰広告だとニュース番組で批判される」ことがあるそうだ。この背景には、台湾ではほとんどの家庭がケーブルTVを契約しており、チャンネル数・番組数が非常に多いという事情がある。
台湾ではニュース番組だけでも数十番組あるそうだ。そのため、どこの番組もネタを探しており、ちょっとしたことが大きく取り上げられてしまう。また、消費者がTV局にネタをリークすることも多く、過剰広告が批判されるというケースにつながりやすい。
法律以外にも、注意点はある。台湾越境EC市場で強い日本の商材としては、すでに述べた通り、化粧品や健康食品などリピート通販向きの商材があげられる。
ただ、阪根氏いわく、「台湾では『定期購入』という方法はまだ新しく、なじみがない人も多いです」とのこと。そのため、一度注文しただけなのに毎月勝手に商品が届く、クレジットカードの不正利用だと、クレームになってしまうこともあるのだ。
逆に台湾で一般的なのが「まとめ売り」で安くなるという売り方だという。「会社の人と一緒に買ったり、LINEでグループを作って一緒に買ったりするケースが多いです」と阪根氏。
越境ECでは、現地のルールを踏まえて商品を販売することが重要であり、それは台湾においても同様だ。だからこそ、アジアンブリッジのように、現地のことを理解し、実績やナレッジを持っている企業の支援が必要になる。
アジアンブリッジの成功ノウハウ
アジアンブリッジでは、これまで数多くの日本企業の台湾越境EC進出を支援し、成功に導いてきた。
商材はリピート通販系の化粧品や健康食品が多いが、その中でもその時々によってブームの商品というものがある。阪根氏によると、「日本より少し遅れたぐらいのタイミングでブームが来ます」とのこと。成功する企業は、単品商品で1年以内に月3,000万円以上を売り上げている。
アジアンブリッジの越境EC支援は、まず、クライアント企業の年間の事業計画を立てるところから始まる。「どの商品をいくらで売るのか、どのように売るのか、広告費はどのぐらいかけるのかといった、コストを明確に出し、売上の見込みも出します」。これにより、スタート前の段階で、売上と利益の見込みが明確になるのだ。
また、台湾越境ECスタートまでには、準備しなければいけないこと、タスクが膨大にある。これらをガントチャートにまとめたタスクシートも用意する。クライアント企業は、まとめてもらったシート通りに準備を進めるだけで良い。スタート後は、フルフィルメントもワンストップでサポートを行う。
こういった支援ができるのは、アジアンブリッジに、台湾EC市場での実績やナレッジが十分にあるからこそ。国際税務・貿易法・薬事法・現地での広告表現など各専門分野の専門家を社内に抱えているのも心強い。
熱意あるEC事業者と共に
ここまでの話を踏まえて、台湾越境EC市場で成功するのは、どのような企業なのだろうか。阪根氏は、「商品よりも担当者の熱意」だという。
アジアンブリッジの知見やノウハウをもってすれば、企業は手間を最小限にして台湾越境EC市場に参入することができる。けれども、いくら商品が良くても、成功するまでやり続ける熱意がない担当者や丸任せの企業の場合、うまくいかないことが多いそうだ。
台湾越境EC市場にいくら可能性があっても、全ての企業が最初から成功するわけではない。阪根氏いわく、「たとえるなら、ホームラン級の成功が20%ぐらい、ヒット級の成功が50~60%ぐらい、最初はかなり苦戦する場合も20%ぐらいはあります。けれど、苦戦してもテストを重ねてコツコツ続けていればいずれは売れるようになります。そこまで踏ん張れるかがとても重要です」とのこと。
「自分達の事業だという意識をもって熱意を持って推進できる」担当者やEC企業であれば、購買力が高く親日的な台湾においてアジアンブリッジの支援を最大限活かし、成功できる可能性が高い。そういった想いのあるEC企業や担当者は、ぜひ、台湾越境EC市場を目指してみてほしい。