AIによる自動化で、EC事業者の費用を削減する。未来型コールセンター
注目のコールセンター企業である株式会社U-NEXTマーケティング。言わずと知れたUSEN-NEXTホールディングスのグループ会社で、コールセンター受託業務とAIコンシェルジュの開発・サービス提供を行なっている。オペレーターの仕事が今後AIに奪われていくことは、EC事業者にとって有益なのか否か。「インバウンドコールの8割は削減できる可能性がある」と話す同社の代表取締役 溝辺和広氏に話を聞いた。
AI化で少なくなるはずのコールセンター業界がまさかの成長
EC市場拡大の恩恵を受けて成長を続けるコールセンター業界。その市場規模は約1兆700億円で、国内ゲームアプリ市場にも匹敵する巨大マーケットだということはあまり知られていない。しかもこの5年で2,500億円もの伸びを示しているというのだ。AIに仕事を奪われる職業と言われ、チャットボットなどのツールも普及する中、なぜコールセンター業界は成長しているのだろうか。
「コールセンターにかかってくる問い合わせ電話のおよそ8割は、ホームページのFAQに載っている。それは電話をかけてくるユーザーが自分で調べれば分かることで、インバウンドの8割は自分で解決できる、企業としては対応時間を減らすことのできる電話ということです」自身が身を置くコールセンター業界に対して、溝辺氏の言葉はシビアだ。
ホームページのUIに問題があるのか、ユーザーのITリテラシーの問題かはさて置き、8割が減らすことが出来るという衝撃的な数字。コールセンター市場の何千億円かは削減が可能といえる。
「働き方改革や業務の自動化・効率化が盛んに叫ばれている昨今、これは異常な状態です。チャットボットも導入されていますが、その利用者はそもそもwebで自己完結できるユーザー。コールセンターに電話をかけてくる層には響いておらず費用対効果が薄いのです」と溝辺氏は語る。
限りある経営資源をどこに投入すべきか。消耗されていく現状に疑問を持たないまま、コールセンター業界の肥大化に貢献し続けていいのか。溝辺氏はそんな疑問をEC事業者に投げかけているのだ。
コールセンターを自動化できない企業に未来はない
「人口が減って人材確保が難しくなると考え、今後を見据えてAIコンシェルジュサービスの開発構想を始めたのが3年前。ところがEC化という部分において日本より進んでいる中国では、14億人に迫る人口がいながらどんどん自動化している。それは人口にかかわらず、自動化しないと企業が生きていけないからです。CSにコストをかけるのならば、サービスのコストを下げるかバリューを上げることに注力すべきです」そう溝辺氏は力を込める。
AIコンシェルジュは音声認識や音声合成を駆使し、ユーザーからのよくある質問に自動で答え、会員からの注文・申込も受け付ける次世代コールセンターだ。人と違って休憩や夜間・休日手当も必要なく、生産性は大幅に向上する。
「チャットボットと違い、AIコンシェルジュは電話で受けて電話で自動回答する。さらに、電話では説明が難しい情報はSMSやメールにURLを貼り動画で見ていただくなど、ITリテラシーの低いユーザーにもわかりやすい案内が可能です。10年後には、これがコールセンターの標準になっていく可能性があります」。
AIで自動化することにより顧客の待ち時間や繋がりにくさを回避でき、夜間の稼働も可能になるため、コア業務への人材集約と人件費の削減が実現する。複雑な質問やイレギュラーのケースでは有人スタッフへ電話を転送し対応を交代させることも可能だ。
「レガシーなコールセンター業務をテクノロジーで効率化させるのが我々のミッション。AIコンシェルジュの導入で、3〜4割の省人化に成功したクライアントの事例もあります。クライアントはコールセンターに費やすコストを圧縮できれば、経営資源を本来の事業に投下できる。ECショップで利益率が1%変わればどうなりますか?自動化しているショップとしていないショップでは、やがて大きな差がつくでしょう。自動化で企業の体力をつけ、競争力を高めていただきたいのです」。
コールセンターの業務改善にコンサル料はもったいない!
すでにコールセンターの業務改善や自動化に乗り出している、問題意識の高いECショップもあるだろう。しかし溝辺氏は、コールセンター業務の改善コンサルタントに高いフィーを払う必要はないと言う。
「当社のコールセンターに委託していただければ、まずは実際に有人で運用し、それから数カ月かけて10%、20%とフェーズに分けながら段階的に自動化していきます。特別なアセスメント費用をかけずとも効率的に業務改善し、自動化を進めることが可能です」と溝辺氏。
さらにインバウンドとAIは親和性が高く、AIに学習させていくことで対応の精度も上がっていくと言うのだ。
同社がクライアントとして抱えるのは、ほとんどが上場企業。その質の高さは充分に担保されていると言っていいだろう。そして東京・福岡・沖縄にある3拠点の中でも、福岡の拠点に特に力を入れているそうだ。
「政令指定都市で若年層の人口増加数・増加率ともにトップを走る福岡市のスタッフはITリテラシーが高く、コミュニケーションが活発で活気がある。社内はカフェのようにおしゃれで快適な空間に設え、優秀な人材がプライドを持って働けるように務めています」。
オペレーターの仕事がAIに取って代わられることは必然で、むしろそれに対応できないコールセンターは淘汰されていくのかもしれない。そしてコールセンターを自動化できないECショップにもまた、未来はない。
業務改善とスムーズな自動化のためには、今こそ動き始めるべきときだ。AIが対応するコールセンターは近未来の話ではなく、既に目の前にあるのだから。