海外EC市場は今どうなっている?海外市場・海外Amazonの実績多数のグローバルブランド山田氏に直撃
越境EC市場が拡大するなかで、新規参入企業は増えているが、継続して成長している企業はどのくらいいるのだろうか。また、海外進出をサポートするサービスも多いが、意外と現地のリアルな状況を知る機会は少ない。そんななか、スタートアップから中小企業、大企業まで、日本の企業が海外進出できるよう、ECとオフラインの両方でトータルサポートを提供しているのが、先日、日本経済新聞朝刊一面でも取り上げられた「株式会社グローバルブランド」だ。代表取締役 山田貴弘氏に、海外市場のリアルな状況と、日本の企業のチャンス、それをどうサポートしていくのかを伺った。
現地情報を得ることの重要性
「越境EC市場の成長が続き、新規参入する企業も増え続けています。そんな中で、新規参入企業がつまずきやすい点として、大きく4つの点があげられます。
1) 効率的なプロモーション
まず、日本人が陥りやすい海外進出の考え方として、マーケティングの4P戦略に+ONEとし、5P(Peopleを追加)で考える必要性があります。
日本国内向けに商品を開発すると、多くの商品が無意識に日本人を対象に製品を作り上げてしまいます。日本製品に合う人種、日本フリークであれば購入に繋がりますが、海外全体をターゲットにして、ロードマップ通りに売上を伸ばすことは難しいです。
日本の技術は素晴らしいものがたくさんあります。その技術を存分に生かすために、人種別エリア別でのマーケティングを行いパッケージ、サイズ、フレーバー、カラーなどに反映させていくと、スムーズな積み上げ型の海外進出が叶いやすいです。これは越境ECでも同様に言える事と言えます。
2) 海外モールのルール把握
これは、越境ECモールに出店する場合に非常に重要な点です。Amazonでも、日本とアメリカではルールが若干異なります。各モールのルールやその国独自規定を把握しておかないと、アカウントがうまく機能しなかったり、得られるはずの利益が減ってしまったり、いきなり売れなくなったりということが起こり得ます。
3) 最適な物流の選択
日本国内とは違い、海外ではいくつかの物流会社から状況に応じた会社を選択する必要があります。海外では商品や送る量、国によって配送会社を変えるべきですね。そうでないと、遅延や破損、商品が届かないなどのトラブルが起きる原因になりますし、コストが膨大になることもあります。
4) 法律面への対応
この点をクリアしないと、そもそも輸入できないこともあります。特に、化粧品や食品など、輸入の際の規律が厳しい商品や、Amazonへの登録に手間がかかる商品を扱う企業からの相談が多いですね」。(山田氏)
いずれの点も、現地情報をしっかりとキャッチしているかが重要になる。できれば参入前に、専門家に相談したいところだ。特に売上が伸びているときは、それまで気づかなかった問題が現れやすいため、要注意だ。
海外Amazonのトレンド情報
海外EC市場のなかでグローバルブランドが重視しているのが、海外Amazon、特にアメリカのAmazon.comだ。アメリカで起きたことは、遅かれ早かれ日本でも同様の対応策が必要になるからだ。そして今、Amazon.comでは、『ブランディング』を重視する傾向があるという。
たとえば、商品ページよりも自由度の高い特設ページや、ブランド登録された商品のためのスポンサープロダクト広告、アメリカでは商品ページに簡単に動画を組み込めるようになるなど、ブランディングのためのマーケティングができるプロモーションやプログラム、機能が拡充しつつあるそうだ。
「各種権利問題、偽物対策の一環もあるものの、昨今ミレニアル世代やZ世代といわれる、自分の趣味や目的には惜しみなくお金を使う世代が米国商品の主人公になってきております。ニッチな趣味や目的の商品が日々需要の高まりを見せている中で、そのブランディング施策が求められています。Amazonというとマス商品を売りやすいイメージが強いかと思いますが、Amazonの真骨頂であるロングテールのブランド構築を行いやすい市場構築をしつつあるのではないかと思います」。(山田氏)
そういったAmazon.comの動きは、今まで海外進出をためらっていた企業にも大きなチャンスとなる。Amazon.com(米国市場)は従来の海外進出と違い、売上が上がるまでの期間が短く、とりあえず始めてみて続けられる「継続性が高い」ところが良い点だという。ただ、そのチャンスを活かすには、気をつけるべき点もある。
「まず、Amazon.comでは先ほども述べたように『販売ルールの把握』が重要です。越境ECが盛んになり、2~3年前と比較しても状況が変わっているなかで、どれだけしっかりとルールを把握しているかによって利益率も大きく増減し、継続性に顕著に影響します。ルールを知っていれば予期せぬ自体で撤退せずに済んだ、という方も少なくありません。たとえば、Amazonの物流サービスであるFBAでは、商品が一定の大きさで特定の重量以下だと手数料が格段に下がるプログラムがあります。商品ごとにそういったプログラムを活用することで、売れる可能性や利益を上げることができます」。(山田氏)
グローバルブランドの事業
前述のような状況があるなかで、グローバルブランドでは、中小企業から大企業まで、企業ごとの状況に合わせた海外進出のサポートを行っており、大きく3つのパターンでサービスを提供しているという。
1つ目が、中堅以上の企業の利用がメインの、商社機能の提供。グローバルブランドで商品を買い取り、Amazonも含めた海外の各モールに展開していく。同時に、現地の卸や店頭など、オフラインでの販売展開も進めることができるのが、グローバルブランドならではの点だ。
「弊社が一番得意なのが、ローカライズのための戦略を立てることです。ECとオフラインは、商品のパッケージひとつ取っても戦略がまったく違います。そのため、売上やSKU数のゴール設定をしたときに、ECとオフラインの両方からマーケティングをしないと売上が伸びません。そこをトータルでサポートできるというのが、弊社の強みです」。(山田氏)
2つ目が、中小企業の利用が多い、越境ECのサポート。これはAmazon.comが中心だ。中小企業はニッチな商品を扱っていることが多く、それをどうプロモーションすれば良いかで悩んでいるケースが多いという。
「まず、どの人種に売れるのかマーケティングした上で、プロモーションを行うことが大切です。たとえば、この人種はこういうワードを使いやすいとか、あの人種にはこういう商品が流行っているから、その商品と組み合わせた文言で売ろうとか。基本的にはワンストップで弊社にお任せいただければ、1年ほどで明確な方向性はお見せできるかと思います。Amazon.comでは世界中から注文が入るので、どういった人種の方が多く買っているのかがわかりやすく、越境EC参入の際の判断材料にもなります」。(山田氏)
3つ目が、越境向けの物流サービスだ。特に中小企業やスタートアップ企業は、物流の改善により劇的に成長することも少なくないそうだ。
以上3つを中心として、ヒアリングを元に最適な海外進出をご提案させて頂いております。
「物流で大事な点が2つあり、1つ目が『送り先によって準備を変える事』です。Amazon.com倉庫に送る事、インドのエンドユーザーに送る事では、考え方やプロセス、発生するトラブルが異なります。
2つ目が『混載率の考え方』です。海外物流(越境ECで主に利用する航空便)では基本的に、実重量と容積重量といって、大きさと重さのどちらか重いほうを数式に則って料金に適用するという考え方です。だから、軽くて大きい商品を送るときに、少し重い商品を組み合わせて混載することで、輸送費を半額~3分の1にできたりします。こういった海外物流ならではの考え方を知らない方も多いと思います」。(山田氏)
グローバルブランドでは自社で組み上げた物流システムも提供しており、このシステムを使うことで、世界のさまざまな物流会社を利用でき、日本語で2~3クリック操作するだけで英語インボイスが仕上がるなど、越境ECの物流でつまずきやすい点をカバーするようになっている。
になっている。
今後の展望
グローバルブランドの立ち上げには、山田氏がアメリカの野球チームに所属していたときの経験が影響しているという。
「その頃はアメリカの地方にいることが多かったのですが、当時、日本の商品というのはまず見かけませんでした。ごくまれに日本の商品を見つけると、なんだかすごい勇気やエネルギーをもらったんです。それに、コミュニケーションのツールにもなってくれた。英語ができない人間にとってはマストツールでした。その経験があって、将来的に日本の商品を世界中に届ける仕事がしたいと思いました」。(山田氏)
そういった想いから、大学卒業後、山田氏は日本商品・食品を普及営業する商社に入社し、アメリカで仕事をする。ただ当時は、海外進出に膨大な時間とお金がかかり、当初の想いを実現することは難しかった。
「そのときに考えたのが、ITを効率よく使えば、資本は少なくても、簡単に日本の商品を世界中に届けられるのではないかということです。そう考えて、2012年、米国と日本に会社を設立しました。小資本でも海外進出の成功体験を得られること、日本の国際競争力向上のためのインフラ・文化作り、この2つをミッションとしています」。(山田氏)
グローバルブランドでは、海外進出をした後の継続性を重視している。越境EC市場が成長するなかで、今はただ海外に商品を出すだけでは不十分で、どうやって継続して右肩上がりに成長していくのかということが問われるステージに来ているのだという。
「お客さまの状況をお聞きして全体像を教えてもうと、売上・利益を上げるポイントが無数にあることが多いですね。弊社の基本の姿勢は創業当初から変わらず、オフラインとオンラインの両方から施策を行いながら提供していきたいというものです」。(山田氏)
グローバルブランドとしては、今後、メーカーを中心とした海外進出のサポートを増やしていきたいとのこと。日本の商品で成功確度が高いのは、食品や化粧品、自然原料など安全安心を訴求できるものや、意外なところで防災グッズも人気が高いという。
「海外はハードルが高いと思ってあきらめずに、まずは相談していただきたいと思います。日本で成功してからという考えは捨ててほしい。弊社では、国内でやるように海外で売れるプログラムを組んでいます。また、国内で売れなくても海外で売れている商品もありますし、今後の市場においては、国内と海外の販売を並行で考えていただきたいと思っています」。(山田氏)
海外進出やAmazon.comでの販売を検討している事業者は是非、米国現地トレンドに精通しているグローバルブランドに一度相談をしてみて欲しい。