D2Cブランド17kgに優秀な若者が集う理由
前年比売上高500%で成長しているD2Cアパレルブランド「17kg」を運営している株式会社イチナナキログラム。
売上に直結しないと言われることも多いインスタグラムを活用して売上を伸ばし、今年の4月にはラ・フォーレ原宿に実店舗も立ち上げた。さらに特徴的なのが従業員80名の平均年齢が22歳と、若く優秀な人材が集まっていることだ。
常識を疑い続けたイチナナキログラムの戦略をCOOの秋山氏と、24歳ながら30名の部下を抱えているブランドマネージャーの伊藤氏に伺った。
ーー17kgを立ち上げたきっかけを教えてください。男性が立ち上げるにはかなり可愛らしいブランドのように思います。
秋山:代表の塚原がインスタグラムの盛り上がりに注目し、「インスタ×コマース」という文脈の中で事業を検討していました。
試験的にアカウントを動かす中で、インスタと相性のいい商材を探しました。その結果、ユーザーのエンゲージメントが高かった「韓国レディース服」をテーマに17kgを立ち上げました。ブランドのターゲット層も10代女子とかなり若くなっています。
ーーブランド名も17kg(イチナナキログラム)とかなり特徴的で覚えやすいですよね。
秋山:これは創業年である2017年の「17」とテーマの”Korean Girl”のイニシャルの「kg」を合わせた造語です。重さではありません笑。
会社の成長=市場選択×優秀なチーム
ーーイチナナキログラムは従業員が毎月5名増え、平均年齢も22歳ととても若いですよね。
秋山:あくまで個人的な意見ですが、会社の成長の8割は「市場選択(市場選定、参入タイミング、参入アングル)×優秀なチーム」の組み合わせによって決まると考えています。当時の弊社は伸びている市場に良いタイミング・アングルで参入できていたので、あとは事業を任せられる優秀な人材さえ獲得できれば、会社は自然に成長していくと考えていました。
ーー優秀な人材の基準はあるのでしょうか。
秋山:私たちが求める人材は「好奇心旺盛で、素直さを持ち、口より先に手が動く方」です。
イチナナキログラムは数値ドリブンの意思決定を重視し、事業を展開しています。そのため、「なぜインスタのいいね数が変化しているのか」など、常に好奇心を持って事業に接する姿勢が重要だと考えています。
また0ベース思考で施策を考えていく会社なので、既存の枠組に囚われず、変化を受け入れてくれる素直さも重視しています。現状意識的に若い方を採用しているので、皆さんとても柔軟な思考をお持ちですね。
あと弊社はベンチャーなので、大手と比較してリソースは限られています。その為批評家は必要なく、誰よりも行動量を多くし、仮説検証・PDCAを回せる方を優秀な人材と定義しています。
ーー働き方はフルリモート・フルフレックス制を導入されています。管理のしにくさなどはなかったのでしょうか
秋山:基本的には性善説で運用しています。人間誰しも気分が乗らなかったり、サボりたい日ってありますよね。正直な話、月単位で見てやるべきことをやっていれば、そういう日は休憩しながらダラダラ働いても良いと思ってます。自分自身も社員として雇われていた経験があるので、管理されることのストレスはよく理解できますし、自分の仕事を減らす意味でも極力管理しない方針です。自分たちで採用した社員なので、信じて任せています。
また各ブランドオーナーを信頼しているので、メンバーレイヤーの採用に関しては、経営層は原則関わりません。例えば17kgのメンバー採用をする場合、伊藤に全て任せています。
ーー伊藤さんは、採用軸などを経営層から共有を受けているんですか?
伊藤:そのような共有や指導は実際全くないです。弊社はブランドのマネージャーに与えられている裁量権がとても大きいんです。採用に関しても最終面接は私が行いますし、採用軸も、実際に活躍している人を参考にしながら決めています。
ーー採用以外でも現場業務で悩むことや相談したいことなどはないんですか?
伊藤:最初はたくさんありました。その時は代表や秋山さんに相談して、どのような軸で判断しているのかを教えてもらいました。実際、特段難しいことはしていませんでした。数字を見て、仮説を立て、判断しているだけです。そのことが自分でも実践できるようになるとあまり悩まなくなりました。ブランドの数字も伸び、自然と自分の判断軸も経営層と似た形になっていると思います。
ーー実際に経営層に言わずにどのような施策を行いましたか?
伊藤:17kgの前に担当していたBEEPというメンズブランドを運営していた時、ブランドの世界観を作ることにすごく意識を向けたことがあります。撮影工数にものすごく手間をかけたりしました。
でもブランドリニューアルしたら売上がガタンっと落ちてしまいました。
ーー原因は?
伊藤:自分の価値観を押し付けすぎてしまったのが一番の原因でした。お客様を正しく見られていなくて、共感を得るどころか締め出してしまいました。その後に軌道修正し、今までのお客様を取り戻すのと同時に、メンズブランドとインスタの相性にも疑問を感じて、レディースも取り扱い始めました。ユニセックスブランドとして再リニューアルです。
そうしたら売上は2倍くらいになって。次はレディース2、メンズ1くらいの比率で施策を回したところ売上は3倍になりました。この話は数字以外、特別経営層には報告とかはしてないですね。
秋山:初めて知りました笑。
伊藤:企画書も出したことはないですね。もちろん費用が発生することに関しては会社のお金を使うので、費用対効果を検証した上で稟議は出しますが、それ以外はほとんど自分自身の裁量で施策を回せています。
ーー若いうちから裁量権を渡すと謳う企業は多いですが、御社はその中でもすごい量を渡していますね。
伊藤:裁量があることは、働いていて一番のやりがいになります。社会人3年目の人間に30人の部下とブランド全体のマネージメントを任せる企業ってそうそうないですよね。僕の他にも、20歳大学生マネージャーの人もいますし、新卒入社1ヶ月で本部長になった女性もいます。
ーーそのような方向性になった理由をお伺いしてもいいですか?
秋山:イチナナキログラムは「学生時代の自分が入りたい会社」を目指しています。具体的には、若者が最大限に活躍できるよう、自由に働ける環境を整え、圧倒的な裁量権を渡すことを心がけています。
せっかく優秀な若手を採用しても、年功序列が邪魔をしてほとんど裁量権渡さないのはとても勿体無いじゃないですか。
年功序列が生まれないよう採用も振り切っており、新卒や社会人3年目くらいまでの中途を中心に採用してきました。結果、従業員80人・平均年齢22歳の会社になりました。メンバー全員が意思決定の経験を積める職場にすることで、会社全体が強くなっていくのだと思います。
ーーフルリモートを懐疑的に感じる人も多いと思いますが、17kgを運営している社員同士はどのように連絡を取り合っているんでしょうか。
伊藤:基本はチャットですね。もちろんミーティングも定期的に開いていますが、若い世代はチャットでしっかりとしたコミュニケーションが取れます。意思疎通がしにくいことはないです。
ーー社員の年齢が近いメリットの一つですよね。メールは遅いですし、コミュニケーションを取るにはかなり不便です。
伊藤:実際にスピードはかなり早い職場だと思います。何か企画を考え付いたら、想定効果を見積もり、その日に始まったりします。口より先に手が動く人が集まっているから当然といえばと当然なんですけど。
弊社では
— あっきー / 17kg, Inc. (@akky0429) 2019年2月19日
「結果を残した人」→「挑戦した人」→「挑戦しなかった人」という順序で評価のポイントを付けています。
この評価制度の目的は、結果が出るかどうかに関わらず「挑戦した方が得」とメンバーに感じてもらうことにあり、社内から絶えず新規事業・新施策が生まれる要因の一つとなっています。
エージェント経由で年収600万の中途を採用する場合1名あたり約200万、5名採用する場合は約1000万が手数料としてかかる。
— あっきー / 17kg, Inc. (@akky0429) 2019年5月14日
つまり年5名Twitter経由で採用できれば、Twitterには1000万円分の広告価値が存在することになる。
Tweetに要する時間を考えても、ベンチャー経営者がTwitterをやらない手はない。
ーー評価基準や採用の考え方もツイッターで積極的に情報発信をしています。かなり作り込まれている評価資料も公開しています。
秋山:はい。やはり結果にこだわって欲しいという想いがあるので、結果を出す人には歩合で給料をお渡しします。初任給でも結果を出している人であれば30~40万円とか。同期入社でも給料差が倍違うということも普通にあります。
ーーメンバーの皆さん前のめりで働いているからこそ、前年売上高比500%を達成されているのかなと。
秋山:それは本当にそうですね。ブランドの成長は、メンバー達が頑張った証です。実際にイチナナキログラムで働いている社員ってすごく楽しそうに働いてくれています。
まだまだ先を目指す。
ーー17kgはどんな目標を掲げていますか?
伊藤:今まではいかにコストを使わずに売上を向上させるかを中心に施策を行ってきました。これからは面を広げていきたいと考えています。
例えば、YouTubeチャンネルを開設したり、実店舗展開を増やしたり、OEM商品を増やしてもいい、海外進出してもいいですよね。
最終的な目標は世界に通用するブランドに成長することです。そのために必要なコスト投資や新しい施策は今後どんどんやっていきたいですね。
ーーそうなると社員も増えると思います。部下が増える際に気をつけていることは何ですか?
伊藤:先ずはその世代・その人の価値観を知ることです。TikTokや新しいコンテンツを一緒に楽しむことも大事だと思います。私は好奇心が強いので若い社員に教えてもらって以来、TikTokはずっと見てますね。笑
あとは裁量権を部下にも渡せるようにしていくことも意識していきたいと思います。自分自身、17kgのブランドマネージャーという大きな裁量権を与えてもらっていて、成長できた実感もありますし、経営の目線がわかるようになってきました。自分の部下にも同じような経験をどんどんさせてあげられるように、挑戦の機会を増やせていければと思います。
秋山:会社として、「Create and lead the world trend / 世界のトレンドを創造し牽引する」というミッションを掲げているのですが、お客様に価値あるサービスを提供していきたいという想いはもちろんのこと、それ以上に「メンバーに楽しく働いてほしい」と考えています。ES(Employee Satisfaction)無くして、会社の成長はないと考えているからです。
「会社=給料をもらう場」という価値観を変えていかないと、いつまでたっても会社は「嫌々行く場所」になってしまいます。
「好きなことを、好きな時間に、好きな場所でやる」方がシンプルにみんな幸せだと思うので、こういった価値観をもっと世の中に広めていきたいと思っています。