日本人は美味しいコーヒーを飲んでいない?PostCoffeeが業界を、消費者意識を変える。
日本人にとって身近な飲み物であるコーヒー。その中でも最も美味しいとされているコーヒーはスペシャルティコーヒーと総称される。しかし、このスペシャルティコーヒーは国内流通の8%しか普及していないという。
そんな8%しか流通していない希少なコーヒーの中でもさらに高品質なものを30種類厳選し、さらにはAIを活用して好みをパーソナライズし、ユーザーの好みに合うコーヒーを提供するサービスをPOST COFFEE株式会社がこの度ローンチする。
今回はPostCoffee代表の下村氏と、おやつのD2C・サブスクリプションビジネスを展開しているスナックミー代表でありながら、コーヒーを愛してやまない服部氏の対談をお送りする。
コーヒー業界の課題にECで立ち向かう
下村:私は15年ほどWebクリエイティブ関連の会社を経営すると同時に3年ほど渋谷でコーヒー屋を営んでいました。そして、徐々に見えてきたのが日本のコーヒー業界の大きな課題です。
それは美味しいコーヒーとされる【スペシャルティコーヒー】の流通がとても少ないこと。国内全体のコーヒー消費のうち、約8%しかスペシャルティコーヒーは市場に出回っていません。日本人が飲んでいるコーヒーのほとんどが美味しいコーヒーではないんです。
理由としては、そもそもコーヒーを美味しく飲もうと考える日本人が海外に比べると少ないことと、コーヒー業界自体が大手企業による寡占状態であることが挙げられます。
特に大手の広告でよく見る「深煎り」や「炭火焼」といったワードに対して良いコーヒーという勘違いをされてしまうケースを多々見かけます。
しかし、実際コーヒーは深煎りや炭火焼が良いという概念はなく、浅煎りから深煎りまでそれぞれに特徴があり、それを楽しむことができます。最近のスペシャルティコーヒーでは浅煎りが主流ですね。
もちろん大手はコーヒー豆を大量に流通させる必要があります。日本国内のコーヒー需要を見たときに、わざわざスペシャルティコーヒーを仕入れることにはあまり魅力を感じていないんだと思います。
逆に大手ほど流通させる必要がないスタートアップの私たちであれば、8%の市場に参入できるのです。
さらに、スペシャルティコーヒーの仕入れは難しいことではありません。私達は生産農家をまとめている商社的存在のキーマンとコーヒー屋を営んでいる時から交流があります。そのような方々と繋がっていれば、スペシャルティコーヒーの仕入れ自体にハードルはありません。
実際、海外ではスペシャルティコーヒーの方が飲まれているくらいです。
ちなみに服部さんは美味しいコーヒーを求めている側の消費者ですよね。
服部:そうですね。僕は飲みすぎないように、コーヒーは1日3杯までと決めるくらいコーヒーは大好きです(笑)。ですので、3杯しか飲めないからこそ、飲むコーヒーは全て美味しいものを選んでいます。そのためレストランとかでは注文せず、専門店で豆を買って飲んだりすることが多いです。
下村:コーヒーにはまったきっかけは何だったんですか?
服部:海外のサードウェーブ系の喫茶店でコーヒーを飲んだ時に日本と違って美味しいなと感じたのが、最初のきっかけです。そこから徐々にハマっていきました。
アメリカとか、喫茶店の多くに焙煎機があり、焙煎士がいわば職人気質を持っています。きっと訪れるお客さんのこだわりも同様に高いと思います。
僕も美味しいと思う前までは、気合いを入れる際に飲んでいたりと、味を純粋に楽しむ飲み方はできていなかったので、気づけてよかったです(笑)。
顧客ターゲットを見据え、正式版をリリース
下村:PostCoffeeは2月6日に正式版をリリースします。正式版では、ベータ版で収集したあらゆる情報をもとにサービスリニューアルをしていきます。正式版で意識している展開としては、ベータ版を運用していく中でお客様からいただいた実際の体験談やご要望を体現できているかどうかです。
例えば種類が多く、自身に合うコーヒーがわかりにくいという意見。そのソリューションのとして開発したのが、コーヒー診断機能です。様々な質問を行うことで、その人のコーヒーの好みをAIが判断します。
例えば、好きなスイーツや海外に行くならどこの国かなど、人の好みの傾向を分析することでコーヒーをレコメンドしていきます。さらに実際に届いた商品へのフィードバックを含めたパーソナライゼーションを行うことで、豊かなコーヒーライフの提供ができると考えています。
実はこの機能はスナックミーさんの機能をかなり参考にさせていただいておりまして。実際にオフィスにお伺いして直接アドバイスもいただきました。
服部:スナックミーでもおやつの好みを伺いつつ、毎月のフィードバックを参考に中身を刷新していっています。ただデータがない最初の半年くらいは人の手で好みを試行錯誤しながらピッキングしていました。
下村:僕達も最初は人の手を入れて、ミスマッチをなるべく減らすつもりです。システムやテクノロジーに依存しすぎず、泥臭くやるのも大事だと思うので。
また新たな味に出会えるように、スペシャルティコーヒーは30種類ほど取り揃えます。PostCoffeeブレンド1種を除きすべてシングルオリジン(単一農園)で、世界中のスペシャルティコーヒーから厳選しています。30種類というのは国内のコーヒーショップでもなかなか目にしないと思います。
服部:30種類ものスペシャルティコーヒーってかなり多いですね。
下村:結構チャレンジングな数です。ただ勘違いして欲しくないのは、僕達はお客様のコーヒーライフを支配しようとは思っていません。ただ家で毎日飲むコーヒーがなくなっちゃうと悲しいじゃないですか(笑)。そのようなことが起きないよう常に補充できている状態を保ってあげたい。また、コーヒー好きになってもらえるようコンスタントに付き合っていきたいと考えています。
他にもベータ版時と商品サイズなども変えています。ベータ版では豆がなくなったら注文し、翌日に150gの豆をお届けする、いわばオンデマンドで販売をしていました。
しかし、人によっては150gの消費スピードが遅く、飲みきるまでに時間がかかってしまう人や、そもそも注文するのを忘れ実店舗で買い物を行う人が非常に多かった。
その反省を生かし正式版では、一度にあらゆる種類を楽しめるように3種類のスペシャルティコーヒーを3杯分ずつお送りするサブスクリプションに変更しました。また人によって飲む量が異なるので、毎月の豆の量は調整ができるようにも変えてあります。
この辺りもミートアップやアンケートから抽出した上で、お客様からいただいた要望をもとに改善していきます。
服部:スナックミーでは逆にオンデマンドの発想がなかったですね。他のプロジェクトではオンデマンドやろうかなと思ってましたけど、サブスクをスキップするかどうかの事前確認くらいがちょうどいいのかもしれないですね。仰る通り、ECでの注文を忘れたユーザーは実店舗で買ってしまうと思いますし。
下村:もう一つ、大きなチャレンジが、サービス提供をアプリからWebに移行をします。そもそも、ベータ版がなぜアプリだったのかという理由ですが、UXなどが自分たちの思い描く形で提供できると考えていたからです。
ただ、思ってた以上にコストや、PDCAのスピードの部分でつまづくことが多かったです。
服部:プッシュ通知の機能とかもあまり効果は見れなかったんですか?
下村:いえ、コアユーザーにはかなりのリアクションがありました。ただ私たちのコアユーザーは先ほども述べたように、スペシャルティコーヒーを好まれるような方々です。そもそも人数があまり多くなかったので、より多くの人と接点を作れる可能性の高いWebへ移行しようという判断です。
PostCoffeeが目指すコーヒーライフ
下村:スターバックスやドトールや喫茶店と違って、PostCoffeeは自宅でコーヒーを飲むことに特化しているサービスです。
この自宅でスペシャルティコーヒーを飲む世界に憧れや共感を抱いてほしいと考えています。
少し前ですとサードウェーブ系のコーヒーショップは似たような世界観を目指していたのかなと思うのですが、ここ最近ではコモディティ化していると感じます。このような状況を打破し、よりカルチャーを持った世界観を目指してサービス展開は行なっていきます。
ターゲットとしてはミレニアル世代が中心になると思っています。お客様のヒアリングを進めていくと若い方の方が美味しいコーヒーを求め、年配の方の方が深煎りなどを求める傾向があることがわかりました。
特にミレニアル世代の中でも、多趣味な方がPostCoffeeのロイヤル顧客になっています。
服部:日本だと喫茶店は非常に多いですが、利用者・利用目的では年配の方がタバコを吸いながらコーヒー片手に仕事や休憩、という形態が目立ちます。ただアメリカでは、若者向けに喫茶店が普及しています。非常にカジュアルに楽しめることを知って、コーヒーによりハマったというのはありますね。
なのでPostCoffeeもスペシャルティコーヒーを知らない若者にも新しい出会いの創出のきっかけになると思います。
下村:ありがとうございます。確かにコアなファンは以前からコーヒーが好きな方々ですが、コーヒーにそこまで詳しくない人でも利用いただいている方は多いです。継続率で見るとどうしてもコアな方々との差が生じてしまいますが、正式版の運用を行っていく中で顧客満足度はより改善していければと思います。
服部:正式版ローンチのタイミングでは実店舗もオープンしますよね。やはり顧客接点を意識してのオープンなんですか?
下村:PostCoffeeをリリースした際に考えていたサービス一番の肝は「ユーザー体験をどこまで向上させられることができるか」でした。そしてその向上に寄与するのにリアルはとても効果が高いと、お客様とのミートアップなどで実感しました。
写真を撮影していただいて、SNSに投稿されて反響があるコミュニティって、ありきたりかもしれませんが、コーヒー業界では見ることがあまりない景色なので、すごく価値を感じています。
なので、実店舗があればいつでもこの体験を提供できるじゃないかと(笑)。最初は喫茶店という構想も考えていたのですが、実際にお店ではコーヒーをドリンクとして買うことはできません。
服部:あっそうなんですか?
下村:サービス体験の場に特化したお店になります。
普通の店舗は以前営んでこともあり、オペーレーションの大変さなども体験していますので、まだスタートアップの段階では時期尚早だと感じています。
お店ではプロのバリスタとともにコーヒー診断をしていただいたり、コーヒーの淹れ方、飲み比べによる試飲などを無料で体験できます。診断結果は保存されるので、いつでも好きなときにスマートフォンからサブスクを開始できます。
試飲では、サービス同様に30種類のスペシャルティコーヒーを用意します。その中には絶対に満足できる1杯があると考えています。またコーヒーの味の違いって意外と意識されたことないと思います。端と端のコーヒーを飲み比べていただけるだけで、ここまで違う味がすると言う体験も、コーヒーに興味を持ってもらうには必要な体験になると思います。
ドリンクとしての提供はしませんが、気に入った豆があったらその場でご購入いただくことは可能です。
スナックミーさんもポップアップイベントなど開催されていますよね。
服部:そうですね。もちろんリアル展開はしていきたいです。ただやるなら僕達もオフィス一体型が理想なのですが、オフィス兼倉庫でもあるのでそこまで広い物件がないですね。分けてしまうと下村さんが言うようにオペレーションがかなり大変になってしまいます。
下村:(笑)。確かにスナックミーさんのオフィスはおやつたくさん保存されてますもんね。僕達はまだ30種類のコーヒー豆ということもあり、まだ大丈夫ですね。
日常的な商品をECで購入する世界の実現を目指して
服部:PostCoffeeさんのサービスの面白い点や期待しているところでいうとチャレンジングな点と、シームレスな注文を実現できる利便性の2つのバランスです。
スペシャルティコーヒーを用意している喫茶店でも5〜6種類から選ぶことが多いのですが、PostCoffeeは30種類を用意されている。非常に攻めている印象ですね。実店舗でもなかなかスペシャルティコーヒーで、しかも美味しいものを厳選して、という枠組みを設けた時には中々用意できない量だと思います。
さらにはアプリ時代からUXはかなり高かった。Web版に移行してからも引き続きその辺りの使いやすさ・注文しやすさには期待しています。
下村:ありがとうございます。最近D2Cの文脈は意識をしていますが、まだ喫茶店がただコーヒーを売っている枠以上のことを実現できていないので、【モノ付きのコト】を意識していきたいなと考えています。
コトとしては、コーヒー診断や実店舗でのイベント開催をより充実させていきたいと考えています。またモノとしてはコーヒー以外にも周辺器具などを今後提供するコトでよりライフスタイルに入り込んだサービスに成長させていきたいですね。
服部:スペシャルティコーヒーはまだまだ市場としては小さく、またコーヒーもおやつと同様でECで買われる商材ではないと思います。そういう意味ではPostCoffeeさんとは、日常的な商品がECで買われる世界を一緒に目指していきたいですね。
あとはコーヒー好きとしても新しい出会いが増えるのは非常に楽しみですね。
下村:実店舗は目黒にオープンします。30種類の試飲でぜひ味の違い・コーヒーを飲む楽しさを体験していただければと思いますので、新しい出会いを見つけに是非いらして下さい!
【PostCoffee Offline Store】
住所:〒153-0063 東京都目黒区目黒4-11-7 須田ビル1F
定休日 : 水曜日