1ラインで80~140サイズを自動梱包!機械化で変わったハピネットの物流現場
テクノロジーによって、物流の効率は劇的に変わる。玩具卸業の大手・ハピネットグループの物流業務を手がける株式会社ハピネット・ロジスティクスサービスは、2020年9月に箱シュリンク梱包システム「BOS-Line」を導入。多岐に渡る商品サイズや、季節ごとの大きな繁閑差といった同社ならではの課題を、オートメーション化によって解決したという。
梱包業務の最適化が、物流の現場にもたらす変化とは? 同社の取締役 今井純平氏と、「BOS-Line」を提供する株式会社ダイワハイテックス 通販支援部 芝田心平氏に話を伺った。
玩具の物流は、クリスマスのボリューム増が大きな課題
――ハピネット・ロジスティクスサービスの事業内容を教えてください。
今井氏: 当社はハピネットグループの物流業務を担っており、玩具やエンタテインメント商材を日本中にお届けしています。今回ご紹介する千葉県の船橋ロジスティクスセンターでは、玩具、ビデオゲーム、映像/音楽のDVD、雑貨類など非常に幅広い商品を取り扱っていて、販売店向けのBtoB出荷だけでなく、自社ECサイト「ハピネット・オンライン」のBtoC出荷も行っています。
――自社の物流において、どのような課題を抱えていましたか?
今井氏: 玩具を扱っている関係で、毎年12月のクリスマスシーズンに大きな繁忙期を迎えるのですが、年々EC出荷の物量が増えてきていて、人の手による作業では追いつかなくなってきていました。
11月~12月の出荷数とそれ以外の時期を比べると、数倍もの差がある一方で、その期間だけ人を採用するのが年々難しくなっています。そのため、生産性のベースを上げる機械の導入は必須だと考えていました。
――「BOS-Line」を導入する以前にも、機械化は検討していましたか?
今井氏: 仕分けや梱包など多くの工程がありますが、中でも特に作業負荷が高いのが梱包業務で、その効率化が当社の長年の課題でした。ただ、梱包を自動化するとしても、当社の場合は、商品のサイズが小さいものから大きなものまで幅広くあり、業務の難易度は高いです。このニーズを満たしてくれる機械はなかなか見つかりませんでした。
4つの箱サイズを自動で判別する梱包機
――「BOS-Line」とはどのようなシステムですか?
芝田氏: 「BOS-Line」はシュリンク包装、製函、封函、ラベル貼りなどの業務を自動化できる梱包ラインです。今回ハピネット・ロジスティクスサービス様には、梱包する物ごとに最適な箱サイズを自動で選択できるタイプを採用いただきました。手作業に比べて処理速度が圧倒的に早くなるメリットに加えて、配送料の最適化や、シュリンク梱包により緩衝材の使用量を抑えることも可能になります。
――導入に至った決め手は何でしたか?
今井氏: ひとつめは「4サイズの段ボールを使用できること」です。サイズや包装がバラバラな事業者のために、近年では3辺可変型の自動梱包機もリリースされていますが、当社のように繁忙期と閑散期の差が激しい事業者にとってはコストが高すぎるため、導入できませんでした。その点「BOS-Line」は、実現できることとコスト感がマッチしていました。
芝田氏: もともとダイワハイテックスでは、複数の箱種を自動選択するラインナップを用意していましたが、今回のハピネット・ロジスティクスサービス様のオーダーで特殊だったのは、箱のサイズが大きい点です。80・100・120・140サイズの4種に対応する必要があったため、ライン全体を大型化するように設計しました。
今井氏: もうひとつの決め手はダイワハイテックス様の「現場目線の提案力」です。マテハン機器は往々にして機械スペックばかりに目がいきがちで、導入してみたら「思いのほか生産性が悪い」ということはよくあります。ですがダイワハイテックス様の梱包機は作業者の動線をよく考えられた設計になっており、導入後にはご提案通りのパフォーマンスを発揮して、目標としていた生産性を挙げることができました。
――物流事業者の抱える状況に応じて、柔軟なカスタマイズが可能なのですね。
芝田氏: カスタマイズは各社様に合わせて行っています。今回はサイズアップの要件にプラスして、今井様から「もっとチャレンジしてほしい」というご要望があり、基本のご提案よりもさらに高度なシステムを構築しました。国内の導入事例が当時ほとんどなかった、最新鋭のキーエンス社製オートフォーカスリーダーを採用するなど、当社にとっても新しいことに挑戦する機会をいただき、レベルが上がったと実感しています。ちなみにハピネット・ロジスティクスサービス様に納入したラインは、当社がこれまでに扱った中で最も大きいサイズになりました。
「BOS-Line」がもたらした、生産性とスタッフ満足度の向上
――実際に「BOS-Line」を導入してみて、効果はありましたか?
今井氏: 楽天市場や自社ECサイトの販売が伸びていたこともあり、2020年はEC出荷量が過去最高になりましたが、クリスマスのピーク時に想定していたボリュームを遅延なく対応することができました。
――生産性への影響はありましたか?
今井氏: 1時間あたり400個以上の梱包を行うことができており、生産性も著しく向上しました。もちろん人間が作業したら、ここまで早くはできません。特に大サイズの梱包には時間がかかりがちですが、自動梱包機なら素早く処理することができます。「BOS-Line」は操作性にも優れていて、社員1名とアルバイトさん数名で安定稼働が可能です。24時間体制で処理できるようになり、トータルな物量のアップにつながりました。
――現場のスタッフの反応はいかがですか?
今井氏: 「単純に作業が楽になった」「能率が安定する事で先の作業が読みやすくなった」などプラスの声が挙がっています。繁忙期でも自動梱包機が安定稼働してくれることで、安心感をもって作業計画を立てることができました。
また、ライン上で人が行う業務もあり、その工程についてスタッフ間でアイデアを出し合って改善するアクションも見られました。例年では処理できなかったボリュームに対応できたことで、これまでにない達成感を味わうことができました。
芝田氏: 当社は「スタッフさんをうまく使いながら機械化を進めましょう」というスタンスで提案させていただいています。私たちの視点で見れば「人」はとても自由度が高くて、いろいろなことができます。フルオートメーションにするのではなく、あえて機械化しない部分も残しておくべきだと考えています。そういう意味で、現場の方に「楽になった」と言ってもらえるのは一番うれしいですね。
――ダイワハイテックスのサポート体制についてはいかがですか?
今井氏: 導入直後のシステム設定や調整を付きっきりで対応してくれましたし、運用開始後も何かあった時にすぐ来てもらえるのは大きいですね。動作不良やトラブルがあった際の対応スピードは、運用フェーズに入ってからは特に重要なポイントだと思います。
芝田氏: 当社は全ての事業者様に対して、定期メンテナンスを実施していません。それよりも、本当に必要な時にできるだけ早く対応する、この方が両者にとって良いことだと考えています。例えばハピネット・ロジスティクスサービス様の場合なら、12月の繁忙期の前に点検を実施するなど、事業者様の状況に合わせて柔軟に対応させていただきます。
機械化で見えた課題。さらなる業務効率化に向けて
――ダイワハイテックスにとって、ハピネット・ロジスティクスサービスの導入事例で見えたメリットや課題について教えてください。
芝田氏: 今回のお取り組みは、当社にとって初の機器を採り入れるなど、とても大きなチャレンジでした。そこで課題になったのは、安全性・安定性の部分です。スペックや利便性を高めることで、それらが損なわれてしまってはいけません。問題を起こさないようにどうするか、起こってしまった時のリカバリー策は何か。「システムを使う側から見た」運用面を意識した改善の必要性を感じました。
――ハピネット・ロジスティクスサービスとして、新たに挑戦したいことはありますか?
今井氏: 「BOS-Line」を導入したことで、オートメーション化の素晴らしさをあらためて実感しました。当社としては、他の領域についても機械化を推進していきたいと考えています。直近では仕分け用ロボットの導入が決まっていて、現在そのための準備を進めています。今後はギフトラッピング作業をはじめ、あらゆる業務の効率アップを目指していきたいですね。