花王が新たな顧客接点の場に選んだ「b8ta」 最先端技術を披露するプラットフォームに

ECのミカタ編集部

花王株式会社のプレステージブランド「est(エスト)」は、最先端技術を活用したスキンケア商品「バイオミメシス ヴェール」をシリコンバレー発の体験型ストア「b8ta(ベータ)」でデモ展示している。商品を気軽に手に取って効果を実感してもらうことが狙いで、感度の高い消費者に最新のテクノロジーを披露する意味合いもある。百貨店や自社ECサイトで販売するのとは異なる新しいアプローチは、次世代のビジネスモデルになり得るのか──。花王の大倉 誠一氏とb8ta Japanの西島 和茂氏に、「バイオミメシス ヴェール」の販売施策やb8taの上手な活用法などについて話を聞いた。

最先端スキンケア商品の新しい売り方

――まずは「バイオミメシス ヴェール」について教えてください。

大倉:花王の最先端技術「ファインファイバーテクノロジー」を応用したスキンケア商品です。肌に美容液をなじませた後、ディフューザーにポーション(化粧液)をセットして吹きつけると、極細の繊維が肌上に積層膜を作ります。繊維が折り重なるように肌に密着するため通湿性・通気性に優れ、肌の湿潤環境を保ちます。2020年3月に全国販売した商品です。

――販売面における課題はありますか。

大倉:新しい技術を応用した商品なので、どのように正しい機能や使い方を伝えるかが課題です。実際に商品を手に取ってもらい、効果を実感してもらうことも重要でしょう。高価格帯の商品ですが、効果さえ実感してもらえれば一定の需要はあるはずです。

――販売チャネルと顧客接点の作り方が重要ですね。

大倉:そうですね。正しい使い方をレクチャーする必要があるので、現在は百貨店や直営店での販売が中心です。直販サイトではオンラインカウンセリングを行い、ウェブ上でも使い方を理解してもらえるよう工夫しています。機能を十分に説明できないという理由から、Amazonや楽天市場などのECモールでは取り扱っていません。

――購入者とのコミュニケーションが大切ということでしょうか。

大倉:「バイオミメシス ヴェール」は、これまでにない新しい製品で、使い方が特殊です。オンラインのみで製品価値を正しく伝えることは困難でしょう。こうした難しさを感じたからこそ、b8taへの出品を決めました。b8taは革新的な商品の“体験の場”として最適なプラットフォームだと思います。

消費者に新たな発見をもたらす体験型ストア

――b8taの概要を教えてください。

西島:b8taは販売を目的としない体験型ストアです。2015年に米国・サンフランシスコで設立され、日本では2020年8月に2店舗(有楽町・新宿)がオープンしました。「リテールを通じて人々に"新たな発見"をもたらす」をミッションに、ストア内には最先端の情報・通信機器や生活家電、美容・コスメ製品などが展示されています。もちろん商品はすべて手に取ってお試しいただけます。気に入った商品は配置されたタブレットからQRコードを読み取り、オンライン購入することも可能ですし、商品よってはストアで購入もできます。

――どのような特徴があるのでしょうか。

西島:ストア内には最新ガジェットや流通量の少ないプロダクトなどが並んでいます。一定期間で商品が入れ替わるため、いつ来店しても新しい発見があるはずです。取り扱うブランドも多種多様で、百貨店やECショップだけで販売するより幅広い客層にリーチできる点が強みです。

あくまでも“体験の場”であるため、販売を目的とした接客ではありません。消費者の心理的圧迫が少ない点も特徴です。商品に詳しい「テスター」と呼ばれるスタッフが常駐していますし、気になる商品をゆっくり体験できる環境が整っています。

――出品するブランド側にはどのようなメリットがありますか。

西島:b8taに出品すれば、情報感度の高い消費者と簡単にオフラインでのタッチポイントを作れます。認知拡大という意味でも有効でしょう。ストア内のAIカメラやセンサーで取得した消費者のトラッキングデータをフィードバックしますので、商品開発やプロモーションにご活用いただけます。

アプローチの幅を広げてタッチポイントを増やす

――花王がb8taに出品した理由を教えてください。

大倉:幅広い顧客層にリーチできる点が大きな理由です。既存の販売チャネルでは美容に関心のある女性にしかアプローチできませんでしたが、b8taには性別を問わず幅広い年齢層の集客があるので、マーケットの広がりを感じます。

――いつ頃から出品されているのですか。

西島:2020年10月に有楽町店、程なくして新宿店にもご出品いただき、今まで継続的に商品を展示させていただいています。今年5月に期間限定で福岡にオープンしたポップアップストアにもご参加いただきました。

――オフライン店舗やECと比較すると、顧客接点・顧客体験の面では具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

大倉:百貨店の化粧品売場で美容部員から説明を受け、購入を勧められることが苦手な方もいらっしゃいます。一方ECだけでは機能を実感してもらいにくいのも事実です。b8taに出品すると消費者と商品が接するハードルが下がるので、誰でも気軽に機能を試せる点は大きな違いだと思います。

──消費者へのアプローチ方法はいかがでしょう。

西島:我々の接客は購入を勧めるためのものではありません。展示している商品を楽しみながら理解してもらうという点では、百貨店やECのそれとはスタンスが異なるかもしれませんね。

大倉:“体験の場”としてはもちろんですが、b8taは花王の持つ先端技術を披露する場としても捉えています。新しいビジネスにチャレンジする姿勢を示すことで、企業価値の向上やリクルーティングにポジティブな影響が出ることも期待しています。

日本の技術力やテクノロジーを国内外に発信

──b8taに出品したことで得られた知見や気付きはありますか。

大倉:b8taのお客様は決して化粧品に詳しい方ばかりではありません。一般の方や男性客など、オフラインではなかなか接点を持てない方々のリアクションは新鮮ですし、メーカー側が普段気づけないことが顕在化する点は非常に面白いと感じました。

「バイオミメシス ヴェール」の場合は、実際のお客さまのフィードバックというより、立ち寄り客のプロファイルがマーケティング活動に役立っております。実際、触ってみたい人が多いこと(化粧品売場には行きにくい)、年代を問わず興味を持ってもらえるところ、最先端機器が好きな方には、とても受けることなどから、これらをもとに、新しいタッチポイント(別の企業様とのコラボ)を探したり中期的な計画においてターゲットの拡大プラン役立ってます。

──出品ブランドの中で、効果測定データを上手に活用している事例などはありますか。

西島:ある日用品メーカー様は、発売前の商品のテストマーケティングにb8taをご活用いただきました。消費者の生の声を集め、販路やプロモーションの方向性を決める参考にされています。また、大手ホームセンター様では、トラッキングデータをもとに商品のマイナーチェンジを繰り返し、ブランドのブラッシュアップに使われています。

──「バイオミメシス ヴェール」の今後の展開についてお聞かせください。

大倉:この商品は花王にとって大きなチャレンジです。最先端技術を使ったまったく新しい商品だからこそ、b8taのようなプラットフォームでさまざまな消費者とタッチポイントを持つことがブランドの成長につながると思います。b8taでは今後も商品そのものはもちろん、花王の技術力を伝えていければと思っています。

──小規模事業者でもb8taは活用できますか。

西島:もちろんです。日本には素晴らしい技術力があるのに、それをうまくアウトプットできていない企業がたくさんあります。そういった企業の商品やブランドを、b8taを通して消費者に体験としてしっかり届けていくのが我々のミッションです。b8taに出品すれば、オフラインで消費者と接点を持つ術のない企業でもデモ展示ができるので、こだわりのある商品を取り扱うEC事業者様にはぜひ活用をご検討いただきたいですね。


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