「お客様へのこだわり」がAmazonをつくる

ECのミカタ編集部

アマゾンジャパン合同会社
セラーサービス事業本部FBA事業部シニアマネージャー
桑原 智彦 Tomohiko Kuwahara

「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」はAmazonのミッションとして、事業を開始した当時から守られてきた。Amazon.co.jpでの年間売上高(税込)が初めて1億円を超えた日本の中小規模の出品者数は、2020年には500社以上となった。変わらない理念をどのように体現するのか、アマゾンジャパン合同会社の桑原智彦氏に伺った。

16の「リーダーシップ・プリンシプル」

Amazonには、「全員がリーダーである」との考えの下、リーダーシップ・プリンシプルと呼ばれる世界共通の行動規範が16あります。中でも一番目に据えられているのが「お客様へのこだわり(Customer Obsession)」です。

私は入社して10年になりますが、Amazonは「お客様の声を聞く」ということを実直に徹底していると感じています。私が担当しているフルフィルメント by Amazon(FBA)では、出品者様の声を営業担当者やメールなどを通じてよくお聞きしています。より良いサービスを提供するためにどうすればいいか、さまざまな要素を検討しなければいけない中、判断の軸になるのが「お客様が何を求めているか」です。

FBAは「お客様へのこだわりが詰まったサービス」

2020年には全国7万社超の中小企業様にご利用いただいているFBAは、出品者様のご事情に合わせて出品できるようになるための、まさに「お客様である出品者様へのこだわりが詰まったサービス」だと考えています。

FBAでは、Amazonの物流拠点であるフルフィルメントセンターに商品を送るだけで、商品の保管から注文処理、配送、返品に関するカスタマーサービスまで、Amazonが行います。

日本の99%以上を占める中小企業様の、「売れるのはうれしいけれどリソースがない」という課題に応えるサービスです。出品者様が考えるカスタマーレビューをたくさん見て、より良い商品を作って、マーケティングに時間を使いたいという思いをかなえることができます。

今なお収束しない新型コロナウイルス感染症の影響で、ECを始めようとする出品者様も増えています。FBAでは2020年4月から、初めてFBAで出品された商品を対象に、在庫保管手数料が一定期間無料になる「FBA新商品特典プログラム」を始めています。「EC経験もないし、物流に投資する余裕もない」「Amazonに商品を預けて本当に売れるのか心配。まずはお試しでやってみたい」といったお悩みを持つ出品者様のお役に立てると考えています。実際に出品いただいた後、「これだけ売れるならもっと商品を増やしてみよう」という出品者様がより増えることを願っています。

出品者様の声が変えた

2021年4月からは、FBA新商品特典プログラムの対象商品を大型サイズ(3辺合計200センチ)へ拡大しました。これは、「うちは大型商品を扱っているから対象を拡大してほしい。プログラムは魅力的だけどうちは対象外なんだよね」という出品者様の声を受けて始まったものです。この対象商品の拡大は日本で始まり、世界中に広がりました。「日本の出品者様にこういう声がある」というのが世界に広がって受け入れられたという結果です。

リーダーシップ・プリンシプルの一つに、「先ず行動する」というものがあります。先ほどのプログラムが始まった時も、最初は一番ご利用が多かった小型・標準サイズ(3辺合計100センチ以下)の商品からでした。サービス全体に通じるのですが、まず求められているサービスからスタートさせ、徐々に拡大していくことがあります。

改善していくプロセスで、出品者様の声を聞くことは欠かせません。たくさんある声のうち、どれから応えられるのかを考えます。「これが正解」という軸はなく、状況によってそれは変わります。

ビジネスにおいてはもちろん、出品者様と個人のお客様の双方の満足度が重要です。その中で私が重視するのは、「より出品者様が売りやすいのはどういう場合か」です。それがかえって個人のお客様にもハッピーになるはずだと考えています。

メイドインジャパンが世界に届く

日本に拠点を置きながら世界に商品を売ることができるのは、Amazonを選んでいただけるメリットの一つです。

例えば株式会社猫壱様は、当時、社員4名の猫向け日用品を企画・販売するメーカーで、グローバルセリングを通じて米国のFBAをご利用いただいています。この猫グッズが米国で大ヒット。米国での販売は、倍々のペースで拡大していきました。

こうしたメイドインジャパンを提供する中小企業様が海外に進出したい際にもFBAがお役に立てると思います。

創業時から続く「Day 1」精神

創業者であるジェフ・ベゾスがよく言う言葉に「毎日が『Day 1』(毎日がはじまりの日)だ」というのがあります。

Amazonが国内外で展開するサービスは多岐にわたっていますが、常に創業時の考え方を忘れず、基本としての「リーダーシップ・プリンシプル」に立ち返ることが重要だと考えています。私の場合では「お客様へのこだわり」=出品者様へのこだわりを常に持ち続けることです。

日々のディスカッションの中でも、「これが大事だ」「こういう意見もある」という議論が活発に行われています。ビジネスを通して「Amazonらしさ」をいかに出すか、その起点はお客様の声です。

さらに、お客様の声を出発地点として、行動を起こすということまで結び付けること。こうしたカルチャーを続けることが大事で、日々サービスを提供する社員が意識し続けることがポイントだと考えています。これらのリーダーシップ・プリンシプルの体現は、360°評価である、社員同士が評価をし合う際の評価基準にもなります。現場でお客様の声を聞いてスピーディーに対応する、Amazonならではの強みは、「Day 1」が浸透しているからこそできるものだと考えています。

先のプログラムでも、当初立ち上げた頃にご好評を頂いて、「これで成功だ」と思った瞬間もありました。ただ、さまざまな出品者様の声を聞くことで、すぐ「もっと改善できることがある」と思い直しました。サービスの改善はまだまだ続きます。

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