購入履歴などから、お客様一人一人に寄り添った売り場づくり Salesforce Commerce CloudとService Cloudで実現
カタログ通販からスタートしたノース・モールは、ECサイト「Northmall」とカタログ通販を利用する客層はそれぞれ違い、電話、書面、ECと受注チャネルも違う。これまではシステムが一元化されていなかったため、顧客情報などが分断され、顧客対応に苦労していた。そこでお客様との最適なコミュニケーションの確立を目指し、Salesforce が提供しているCommerce CloudとService Cloudを導入し、売上を伸ばしている。その活用法を伺った。
カタログ通販とECサイトの両輪で
――ECサイト「Northmall」について教えてください。
高松 大人の女性に日常的に使っていただける商品を扱っているECモールです。弊社は1986年に、住商オットーという社名でアパレルのカタログ通販会社として創業しました。当時はヨーロピアンファッションを日本で購入できる場が乏しく、通販で手軽に購入できるということで支持を受けました。
2000年からECでの販売を開始し、住友商事の資本が離れたことでオットージャパンという社名に変更しますが、商材は変わらず大人の女性や働く女性向けのアパレルを中心に扱ってきました。その後、ノース・モールに社名を変更する2020年前後から、日用品や食品、電化製品なども扱い始めました。ご愛顧いただいているお客様にアパレル以外の商品も幅広くご提案することで、お買い物をさらに楽しんでいただこうと考えたのです。
山崎 2020年3月から雑貨、2021年3月に入ってから食品とマルチテナント化を進めた結果、この1年で商品が一気に増えました。アパレルでは、働く女性をターゲットにした「FABIA」や、40~50代の女性をターゲットにした「pittock style」など自社ブランドを展開してきましたが、他社アパレルも扱い始めたこともあり、ECサイトは40~50代が客層の中心になってきています。
カタログ通販をご利用いただいているお客様は、創業時からのお付き合いで60代以上の女性が中心です。ECサイトに移行された方もいらっしゃいますが、カタログ通販における主要なコンタクト窓口は電話です。コールセンターを内製化し、オペレーターが対応しています。
お客様一人一人と、適切なコミュニケーション
――Service CloudとCommerce Cloudを導入した理由を教えてください。
高松 2019年8月に導入をしました。顧客対応履歴をService Cloudに、電話やECサイトで受けた受注と購入履歴をCommerce Cloudに集約させながら、二つのシステムを連携させて、Service Cloudでどちらの情報も閲覧できるようにしました。二つのシステムを導入することで実現したかったのはCRMで、お客様一人一人と向き合って、丁寧なコミュニケーションを図ることで、お客様に満足してお買い物いただくことが目的です。
お客様と電話でお話しする際に、お客様のプロファイルや購入履歴などを見ながらコミュニケーションのきっかけを増やしていきたい。これまで長くお付き合いしてきたお客様との関係を維持していくため、さらに気に入っていただける商品をご提案していくために、二つのシステムを導入することが最適だと考えました。
――導入以前は、どのようにECサイトを運用していたのでしょうか。
高松 Salesforceのシステムを導入する前は、電話受注用のシステムとは別にECサイトの運用システムがあって連携できていませんでした。お客様から購入商品についてお問い合わせがあった場合、オペレーターは電話受注用のシステムとECサイトの管理画面を行ったり来たりしながら、お客様の情報を確認する必要がありました。
電話受注用のシステムはテキストのみで、商品写真すら見ることができません。お客様の質問にお答えするためには、カタログを開いて該当商品をチェックする必要がありました。そのためお客様をお待たせすることも多く、不便さを感じていました。
山崎 購入履歴を確認することで、例えばここ1年以上購入のなかったお客様に対して、社名が変更になったことをアナウンスしようといった機転をきかせることができるようになりました。オペレーターもお客様一人一人と、適切なコミュニケーションを保ちたいと思っているので、システムの導入を喜んでいます。
また繁忙期は、オペレーター以外の社員も電話対応にあたりますが、1時間程度のトレーニングを受けておけば、誰でもストレスなく操作できます。管理画面を見るだけで直感的に扱える使いやすさはSalesforceの特徴だと実感しています。
カテゴリーの移動や付け替えもスムーズ
――お客様との接点づくりとして、まず取り組んだことは何ですか。
山崎 お客様がアクセス時に使用されているデバイスを確認してみると、7割以上はスマートフォンからでした。そこでサイト内検索がスマートフォンで見えやすいように工夫したり、レギュレーションを設けて画像の表示を軽くするなど、ユーザビリティーの改善を進めました。
また、2020年3月からマルチテナント化が始まり、取り扱い商品の幅が一気に増えました。商品登録の際のカテゴリー区分や、商品名をどう登録するのか、検索に引っかかりやすいワード選びに力を入れました。
――マルチテナント化を進めるにあたって、苦労されたことはありますか。
山崎 アパレルが中心だった頃は、女性用のトップス、ボトムス、アウターといった大カテゴリーがあって、そこに小カテゴリーがぶら下がるという横並びのメニューで運用できていたのですが、カテゴリーが増えることで、横並びだけでなく深さも出てくるようになり、カテゴリーの構成には今も悩みながら取り組んでいます。
しかし、システム面ではカテゴリーの移動、付け替えなど簡単に行えるので悩むことはありません。初期登録はCSVで一括登録するのですが、一度カテゴリーを登録してしまえば、その後の作業はとてもスムーズで小カテゴリーの分類や重複登録も柔軟に対応できます。
レコメンド経由での売上は約2.5倍に
――顧客対応を強化するにあたって、Commerce Cloudをどのように活用していますか。
山崎 一つはレコメンドです。もともとアパレルサイトだったので、長いお付き合いのあるお客様にとっては、アパレル以外の雑貨商品等が提示されることに拒否反応があるかもしれないと不安がありました。
そこでカートページにレコメンド商品を提示してABテストを重ね、興味を示されたお客様に対して少しずつアパレル以外の商品と紐付けながらレコメンドを継続しました。それぞれのお客様に合ったレコメンドが効果を発揮し、レコメンド経由の売上は約2.5倍に伸びました。
高松 社内では山崎たちとサイト改善の打ち合わせを毎週行っていて、様々な課題に優先度を付けながら解決しています。
こうした課題については、セールスフォースのカスタマーサクセスチームであるCSMと定例で行っているミーティングで、解決方法のレクチャーやアドバイスをもらえます。Commerce Cloudはシステムとしても優れていますが、分析レポートなどを見ながら、運用の深いところのアドバイスをもらえるので心強いですし、Salesforceの製品を導入する大きなメリットだと感じています。
レコメンド以外にも、サイト内検索もCSMと一緒に改善を図っていきました。改善の期間中はほぼ毎週打ち合わせをして、設定と結果の確認を繰り返しながら、二人三脚で改善してきました。
山崎 プロモーションも活用しています。メルマガ会員限定キャンペーンや配送費無料セールなど、何本も並行して実施しています。それらが全て同じ画面で管理できるので便利です。加えてお客様がどのクーポンを使用されているのかも把握できるので、お客様の傾向に合わせてプロモーションの内容を細かく変えています。
フラッシュセールのように短期的なセール時は、メルマガ購読者にのみセール価格で表示することで、ECサイト上の価格は変更せず、セグメントで一気に変更しています。設定が簡単なので、セールの準備は最短1週間程度で行うことが可能になりました。
お買い物の喜びや楽しみを実感できるECサイトに
――今後取り組みたいことを教えてください。
山崎 機能が多くてまだ使いこなせていないところもあるので、さらに使い慣れて、お客様との接点を増やしていけるような施策を打っていきたいです。CSMの方にはいろいろと聞いていきたいですね。
コロナの影響で、生活必需品を中心にECサイトでお買い物する機会は増えたと思います。しかし「Northmall」は、日常というよりも生活をより良くするための商品、近所のスーパーとは少し違うお買い物体験を提案していきたいです。レコメンドやプロモーションを重ねながら、お客様のデータを読み解くことでお客様一人一人に合わせた提案を強化し、「Northmallなら、私の好きなものがある」と思ってもらえるECサイトを目指していきたいです。
高松 ECサイトを誰もが利用するようになり、手軽にお買い物ができるようになりました。しかし、お買い物の根底にあるのは、自分の知らないものに出合う喜びや楽しみだと思います。私たちが大切にしているのは、お買い物の根底にある喜びや楽しみです。お客様と商品の新しい出合いも、Salesforceが提供しているAIを活用するなどして、一つでも多く実現していきたいです。そして、どの注文手段であっても、お客様から「ノースモールで購入して良かった」と感じていただけるよう、これからも改善を図ってまいります。