今、世界に可能性を拡げるために必要なこと eBay×DHLトップ対談

野中 真規子 [PR]

コロナパンデミックによるインバウンド顧客の減少、店舗の縮小閉鎖などをきっかけに、海外に販路を求める企業は増えている。協業しながら日本企業の越境ECをサポートするイーベイ・ジャパン株式会社(以下、イーベイ・ジャパン)の代表取締役、岡田雅之氏と、DHLジャパン株式会社(以下、DHLジャパン)の代表取締役社長、トニー カーン氏に、越境EC市場や国際物流の現況、今、日本企業にもたらされているチャンス、海外販売で成功するためのポイントを伺った。

グローバルプラットフォームとエクスプレスのリーディングカンパニー

――まずは両社様の事業概要について教えてください。

岡田 イーベイ・ジャパン株式会社はグローバルプラットフォーム「eBay」を運営するeBay Inc.の日本法人です。

2000年代に一度参入して一旦撤退しましたが2009年に再上陸し、現在に至ります。海外への販路拡大や売り上げ増加を目指す日本企業をサポートする越境ECプラットフォームとしてeBayの活用を提案しています。

カーン DHLジャパン株式会社は、DHL Expressの日本法人です。グローバルで1969年に事業をスタートし、その後1972年、日本で国際エクスプレスサービスを開始し、今年でちょうど50周年を迎えます。当初はたった10人からのスタートでしたが、今はグローバルで業界トップのシェアを誇り、日本でもマーケットリーダーです。国内直轄の集配拠点は27箇所あり、国内では唯一、東京、大阪、名古屋の3空港を基点とした充実したインフラを擁しており、最短24~72時間で海外主要都市へお届けするドア・ツー・ドアの輸送サービスを提供しています。

イーベイ・ジャパンさんが越境ECを展開するなかで、7年ほど前から配送部分を当社が担う形で協業しています。

コロナパンデミックで越境ECのマーケットが拡大した要因とは?

コロナパンデミックで越境ECのマーケットが拡大した要因とは?イーベイ・ジャパン株式会社 代表取締役 岡田雅之氏

――コロナ前後での越境EC市場の変化について、どのように感じておられますか。

岡田 イーベイ・ジャパンでは流通取引総額が昨年40 %増をマークし、その前年も19%増とパンデミックが始まって以降、より加速しています。その要因はいくつかあり、まず前提としてはインバウンド顧客が来日できなくなり越境で物を買う人が増えたことです。

もうひとつは配送の変化により、世界に向けて売れる商品の幅が広がったこと。これはDHLジャパンさんのご協力なしにはなし得なかったことです。

もともとeBayの日本セラー(販売者)の配送手段は国際郵便が中心でした。取引される商材もハンドバッグやトレーディングカードなど小さくて高額なものが中心でした。コロナ前からDHLジャパンさんとお話しする中で、今後はより大きいものが動くと予測していましたが、コロナ禍では実際にカーパーツやゴルフクラブ、楽器など大きなものが動くようになり、DHLさんの迅速な対応のおかげでスムーズに配送できています。

もうひとつの要因は決済手段の変化です。ペイパルからManaged Payments(eBayペイメントサービス)に変わり、金額の上限がなくなったことで、100万円超の商品、例えば1万ドルのギターや6万ドルのロレックスなど高額なものも売れるようになりました。

カーン 昨年4月にコロナで郵便がストップした際には、家族にマスクや薬を送りたい人が、当社の本社を始め各拠点に並びました。そうした方々が初めてDHLで荷物を送り、今まで郵便では1週間かかっていた海外配送が翌日など早くに届くと知ったわけです。中には「サブスク商品が使い終わっていないのに届いてしまうので、もっと遅く配送してほしい」という声もあるほどですが(笑)。

世界のEC市場は2020年に25.7%、2021年も16.8%伸びました。2025年までにさらに50%以上まで伸びる予測もあります。弊社の業績も特にBtoCが順調で、貨物の取扱件数としては2021年で、コロナ前に比べて4倍に成長しました。

日本の常識では思いもよらなかったものが世界で売れている

日本の常識では思いもよらなかったものが世界で売れているDHLジャパン株式会社 代表取締役社長 トニー カーン氏

――ユーザーからの問い合わせ内容にはどのような変化がありましたか?

カーン 今まで越境どころかECも未経験だった方からのお問い合わせが増えました。当社の福岡拠点を訪れた際、年配のお客様がお孫さんと一緒に「荷物をカナダに送りたい」と来られました。その方が製作した能面を、お孫さんが構築したECサイトで販売したところ、カナダの方に65万円で売れたとのことでした。またあるお客様は日本製のカラフルなけん玉が海外向けにおよそ2万円で売れているとのことで、事業として成功されています。

食品の売上も堅調なようで、さくらや抹茶味のキットカットがアメリカ向けだけで1日に3000件〜5000件発送されています。また最近聞いたのは日本酒の販売です。国内の消費量が減っている中で、海外向けに販売して成功している事例も多くあります。

岡田 およそ国内1億対世界80億と人口規模が違いますから、越境ECはまだまだマーケットが面白い。変わったところでは寿司を握る機械や甲冑、鎧など思ってもみなかったものが海外でよく売れている印象です。

eBayの大きなミッションの一つとして、「Economic Opportunity for All(すべての人の生活を豊かにする機会の創造)」があります。とくにコロナ初期、インバウンド顧客が見込めない、お店を閉じるなど販路が閉じられたセラー(販売者)も、eBayによって生活を支え、さらに飛躍することもできました。また、もともとハンドバッグや時計など資本力のいるものは強かったのですが、一方で能面など誰でも取り扱えるものや、最近流行っているフィルムカメラの販売も新たに増えている。eBayは国内外で在庫を一元管理できるため中古、一点ものなど希少価値の高いものを世界に販路を広げられる強みもあります。

今は全国どこから送っても早く届けられるので、セラー、バイヤー(購買者)ともに、こんなものも売れる・買えるといった意識の変化が起こり、日本のものをどんどん海外で売るポジティブサイクルが回っています。

言語や物流の課題をクリアにし、成功ノウハウも伝授

言語や物流の課題をクリアにし、成功ノウハウも伝授

――越境ECに興味はあっても、なかなか踏み切れない事業者も多いと思います。

カーン DHLではコロナパンデミックの前から中小の事業規模のお客様にフォーカスし、越境EC向けの相談センターを設けています。各国の市況や送れるもの送れないもの、税金の事情など何でもアドバイスさせていただき、小規模からでもチャレンジできるようサポートしており、すでに当社のサポートで越境ECに成功している事例も多数出ています。

岡田 日本からの商品が世界で売れる理由の一つは「信頼できる」という点です。たとえばブランドのハンドバッグや時計は、海外の人からしたら、日本から買えば偽物ではないという信頼がある。トレーディングカードもそう。中古でも新品でも、品質が高く信頼できるところがポイントだと思います。

世界に目を向けると、今まで気づかなかったところにも需要があるかもしれません。今海外で売れているものを見ていると、一度廃盤となった日本製品をリバイバルしてもよいのではないかと感じます。日本にはナガオカというレコード針のメーカーがありますが、今は世界的にアナログレコードが注目されているので、そういう企業が今のテイストを取り入れたアナログコードプレーヤーを作れば海外で受けるのではないと。そうした感覚を含めて売れそうなもののデータを蓄積し、製造業者の方にフィードバックしたいという個人的な夢もあります。

越境ECのノウハウに関しては、当社もまだ十分に情報発信しきれていない部分もありますので、日本のセラー向けに立ち上げたセラーポータルなどを通じて、ベーシックなノウハウを発信し、DHLさんとも協力しながら後押していきたいですね。

――越境ECでは言語や物流面での不安もあるかもしれません。

岡田 実はeBayのセラーのうちネイティブレベルの英語ができる方は2%程度。ほとんどが高校卒業程度の基礎英語レベルでした。eBayはテキストベースでやりとりするため、Google翻訳などのマシン翻訳にかけてコピー&ペーストすれば成立してしまいます。さらに世界の英語の話者は40%程度しかいませんので、英語が完璧にできないといって臆せず、1歩でも前に進んでいただきたいですね。

カーン DHLをお使いいただければ、通関手続き、荷物の問い合わせ対応、貨物返送などの課題もクリアできます。システム化も進んでいますので、配達予定日や貿易書類の自動入手も可能。あとは事業者の方には売上を伸ばすためのコア業務にフォーカスしていただけます。

――ほかに越境ECで成功するために必要なことは何でしょうか。

岡田 パッションだと思います。あるセラーさんに聞いたのですが、時々理不尽な返品もあるが、そこは共通の趣味、パッションでつながっている同志なので許せると。その方はお子さんの誕生日に常連さんからメッセージをもらったり、逆にコロナで市場が苦しいときに常連さんにメールを送ったりもされています。ものだけでなく、ものを通じたパッションのやりとりにも面白みを感じられると、ビジネスは長続きすると思います。

日本の売り手と世界の買い手のパッションを、同じ熱量でつなぐ

日本の売り手と世界の買い手のパッションを、同じ熱量でつなぐ

――今後の展望をお聞かせください。

カーン DHLは「Connecting People, Improving Lives(人と人をつなぎ、生活の向上に貢献する)」をパーパス(存在意義)として、お客様を世界へとつなぎ、世界中のエンドユーザーがものを受け取り満足し、そして売る側はビジネスが成長して、両方がハッピーになれる世界を目指しています。

先ほど岡田社長から「パッション」という言葉が出ましたが、私たちを突き動かしているのも荷物を待つお客様へのパッションです。英語で新しいアイデアを考えることを「シンクアウトサイドボックス」といいますが、DHLは「ルックインサイドボックス」を大切にしています。私たちが扱う箱の中には卒業証書やウエディングドレスなど、荷物の1つ1つにストーリーがある。そのストーリーを大切に想うパッションを常に忘れずに仕事をしています。

当社は1972年に日本初の国際エクスプレス輸送を開始して以来、今年で50周年を迎えますが、今まで1日として輸送業務をストップした日はありませんでした。世界的な物流網の混乱を引き起こしたパンデミック危機の最中であっても、自社の輸送ネットワークを使った信頼性の高い優れた品質の輸送サービスを提供し続けました。エクスプレス輸送に対するお客様からのニーズは高まっており、弊社では長期的ビジョンのもとインフラ強化も進めています。2021年に100億円を投資した大阪の新しい物流センターを開設し、また数年前には東京・新木場に2棟目となる新施設をオープンしました。また今年より電気トラックを導入するなど配送車両のEVシフトを加速させており、2024年よりグローバルで燃料の100%を電気で賄う貨物機も飛ばします。グループとして2030年までに、よりクリーンなオペレーションに9000億円を投資。荷物が増えても、何があっても配達を止めない、しかし輸送モードをよりサステナブルに行うことで、お客様が輸送の心配をすることなく、コア業務に集中していただける環境を提供し続けます。

岡田 当社としてはコレクターなどパッションを持つ人=エンスージアスト向けの世界唯一のマーケットプレイスとしてeBayを再定義し、さらに成長させていきます。そのためには売り手と買い手のパッションが必要。フェアでオープンなマーケットプレイスを提供し、ものとパッションのやりとりをサポートしてまいります。

――お互いに今後期待されることはありますか?

岡田 日本から世界に販売されるものの中には、1点数千万円もする高額商品もあります。そういうものに対応していただけるジャパンスペシャルな配送サービスが欲しいですね。また大都市圏だけでなく、北海道などの地方からも翌日配送できるようになるとありがたいです。

カーン 北海道の札幌市、千歳市などの一部エリアからは実は当日輸出が可能です。ただ地方からの配送体制については、今後さらに強化する予定です。コロナ禍が続く中、地方の企業にもチャンスは増えています。5Gが導入され、シニア層がスマホでものを買う流れも広がり、マーケットニーズは今後も増えていくと思います。

DHLジャパンは大都市圏だけでなく地方にも集配拠点がありますので、eBayさんと一緒に、越境ECにチャレンジしたい人を全国的に支援していきたいですね。

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記者プロフィール

野中 真規子

ライター。著書(電子書籍)『片付けられない、という「思い込み」をなくして、今すぐ片付けるための本』(ハウスキーピング協会)が好評発売中。ECのミカタにおいては、ECサービスのお話から伝わる本質的なメッセージを受け取り、拡散することが歓びです。

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