パーソナライズ×D2C。消費者一人ひとりと向き合う時代

ECのミカタ編集部

パーソナライズ×D2C。消費者一人ひとりと向き合う時代 株式会社Sparty
取締役
榊原 幸佑
Kosuke Sakakibara

2022年はパーソナライズ元年になる――。「MEDULLA(メデュラ)」などD2Cブランドを展開する株式会社Spartyの榊原幸佑取締役は、今後EC業界で起こり得るパラダイムシフトについてそう明言する。D2C事業をけん引する同氏に、高精度なパーソナライズを可能にするノウハウやWeb上での接客、コミュニケーション方法などについて話を聞いた。

これまでの「当たり前」が 通用しなくなる

―急拡大しているEC市場の現状を踏まえ、今後マーケットはどのように推移していくとお考えですか。

コロナ禍をきっかけに、新たにネット通販を利用する人が増えました。顧客獲得コスト(CPA)が下がったことで、利益を得た事業者も多いと思います。しかし、その分市場に参入するプレイヤーの数も増えたため、今後は中長期的にCPAが上昇していくと思われます。そうなると、利益を確保できる企業とそうでない企業の二極化が進むでしょう。もちろん集客や接客面の難易度も高まり、これまでの「当たり前」が通用しにくくなるかもしれませんね。

―こうした状況下、御社は『色気のある時代を創ろう』をミッションに掲げ、大きく業績を伸ばしています。どのような事業を展開されているのでしょうか。

当社はパーソナライズを基軸としたD2Cプロダクトの企画・販売を行う会社です。パーソナライズヘアケアサービスの『MEDULLA(メデュラ)』を中心に、スキンケアの『HOTARU PERSONALIZED』、ボディメイクの『Waitless』の3ブランドを展開しています。

―主力サービスであるMEDULLAについて教えてください。

MEDULLAは2018年5月にスタートしたサブスク型のパーソナライズヘアケアサービスです。オンライン上で髪や頭皮に関するカウンセリングを行い、その回答に応じて一人ひとりのお悩みに適した成分を配合したシャンプーやリペア(コンディショナー)、ヘアケアアイテムをご自宅にお届けします。
使用後の感想を専任のスタイリストにフィードバックすれば、その意見が翌月以降に送られてくる商品に反映され、よりご自身のニーズにあった成分にチューニングされていく仕組みです。テーマに合わせて選べる7種の香りも好評です。実店舗もありますが、ここは専門スタッフによる診断が受けられるほか、テクスチャーや香りを確認できる「体験の場」という位置付けで、多くのお客様がオンライン経由で商品をご購入いただいております。

“いいもの”ではなく 自分に“合うもの”を

“いいもの”ではなく 自分に“合うもの”を

―具体的にどのような方法でパーソナライズしているのですか。

まずはWeb上で髪の長さやボリューム、なりたい髪質などに関する10個の質問にお答えいただきます。この髪質診断データをもとに、50万人(3ブランド累計数/2022年2月時点)を超える会員情報とこれまで蓄積してきたヘアケアの知見から、お客様一人ひとりに最適な商品をご提案しています。

―顧客とのコミュニケーションで工夫している点はありますか

当社のバリューのひとつに「きゃーっ♡にかける」という言葉があります。ロジカルな思考はもちろんですが、ワクワクするようなときめきを大切にしようという意味で、この想いはサイトのUI/UXにも活かされています。オフラインで買い物する時に感じるときめきを、オンライン上でも感じられるように工夫しています。

正確なデータを収集することが、パーソナライズの精度を高めているのですね。

お客様に定期的なフィードバックをお願いする理由もここにあります。髪の状態は髪型や季節などさまざまな要因で変化するので、お客様の“今”の状態にあった成分にチューニングし続けることが重要です。こうして集められた高精度なデータをもとにPDCAを高速で回し、お客様のご要望にあったヘアケア商品を提案できることが当社の強みです。

―世の中に“いいもの”はたくさんありますが、自分に“合うもの”を助言してくれるオンラインサービスは決して多くないですよね。

そうですね。例えばワインの場合、産地や年代で価格は大きく異なりますが、高価なワインが必ずしも美味しいわけではないですよね。やはり自分の舌に合うワインが美味しいと感じるはずです。例えば保険なども同じように、高ければいいわけではありません。
大切なのは、いかに個々に“合うもの”を提案できるかです。“いいもの”は高価でターゲットも狭くなりがちですが、顧客に“合うもの”を提供できる仕組み、つまりパーソナライズできる仕組みさえ整えれば、小規模事業者でも大手と十分勝負できると思います。

マスからブランド、 そして“個”へのシフト

―今後のEC市場の展望についてお聞かせください。

当社は2022年を『パーソナライズ元年』と位置付け、パーソナライズという手法をビジネスの常識にしていきたいと考えています。
これまでの日本は大量生産・大量消費で、みんなが同じ情報に接し、同じものを選ぶ“マスの時代”でした。バブル期を経てインターネットが普及すると、他者の評判が商品選択を左右する“ブランドの時代”にシフトしました。そしてこれからは自分に合ったもの、自分にとって価値があるものを選ぶという“パーソナライズの時代”がやってきます。
当社もパーソナライズ化の仕組みをさらにブラッシュアップし、新しい時代のトップランナーであり続けたいと思います。

―パーソナライズ化を推し進めるために、何か計画していることはありますか。

現在はさまざまなメーカーとの協業を考えています。当社のコアバリューは、各種データを活かして一人ひとりに“合うもの”を提案できるノウハウです。日本には優れたものづくり企業がたくさんあるので、そういった企業とタッグを組み、消費者一人ひとりに合った商品をお届けすることで加速度的にパーソナライズの世界を構築できるのではないかと考えています。

ECのミカタ通信vol.23 ~変化を遂げたEC市場!今後の”あるべき姿”とは~

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本記事は、2022年3月31日に発行された冊子「ECのミカタ通信vol.23」に収録されています。
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