自社ECが成長する企業の共通点 急成長しているブランドが実践する顧客コミュニケーション
EC市場の拡大による競争の激化やCookieの規制強化により、ECサイトの集客は難化の一途をたどっている。EC事業者に求められるのは、顧客と向き合い、顧客のことをより深く知り、顧客中心で施策を考えるカスタマードリブン戦略だ。実際に成長をしている企業の多くは顧客のことを深く理解している。ではEC企業はどのようなコミュニケーションを行なっているのか。
熱狂的なファンをつくるCRM・接客チャット「チャネルトーク」を運営する株式会社Channel Corporation、CBOのSimon氏に話を伺った。
成長しているブランドは顧客中心の企業文化を築いている
ーECサイトでの「接客」に力を入れる背景として、現在のEC業界にはどのような課題があるのでしょうか。
EC市場は成長していますが、広告の獲得単価も上昇しているのがEC業界の現状です。また、サードパーティーCookieの規制により、これまで盛んだったアフィリエイトやリターゲティング広告の運用も難しくなっていくでしょう。ただでさえ、難易度が上がっている集客施策ですが、今度も課題は増えていくのではないでしょうか。
この集客課題を打破するために、多くの企業が自社ECで接客を行うことに注力しています。従来のECサイトは、メールでもチャットでも、「〇〇事務局」というような、スタッフの顔や名前を出さず、ECとして買っていただくものでした。
しかし、最近ではSNSによるDMやLINE公式アカウントなど日常生活で使うツール上でのコミュニケーションが可能になりました。さらにはサイト上に設置したチャットツールでもラフな質問ができる体験を提供しているブランドが増えています。メールや電話とは違い、ストレスのない顧客体験の提供が可能です。
実店舗でスタッフと顧客がやり取りをしているような自然な接客がスタンダードになりつつあります。
ーECサイトでも接客の質を上げることが大切なのは、なぜでしょうか。
私達はカスタマーサポートを「ブランディングのための投資」と捉えています。「お客様中心の企業文化」をEC事業者さんに根付かせることによって、事業の持続的な成長を支援させていただいてます。
どの企業でもはじめは、顧客中心の文化を持っていると思います。なぜならスタッフが少数でお客様との距離が近いからです。しかし、規模が大きくなるにつれて、スタッフが増え、仕事が細分化されると、数字を追うことに集中してしまいがちです。こういう状態だと、CVRを上げるためのテクニック論に陥ってしまいます。
ですが、企業が成長する上で欠かせないものはお客様の満足度です。
友達とLINEするようなフレンドリーな対応を意識
実際に顧客と仲良くなり、事業を伸ばしているEC企業さんを紹介します。
アパレルやiPhoneケースなどを取り扱うファクトリーブランドのKIBACOWORKSさんは、従来は問い合わせをメールで行なっていました。その当時は、メールの返信対応に時間を取られてしまい、伝えたいことをメールの固い文章では伝えられずに苦労しているという状況でした。
ですが、自社ECに設置したチャットでのコミュニケーションに切り替えたことで、店舗に友達が遊びに来てくれたような感覚で、やり取りできるようになったといいます。今ではメールをやめて、問い合わせ・質問はチャットと電話で対応しています。また、問い合わせが来ているということは、まさにその瞬間にお客様が購入を検討していると思うので、チャットにはなるべく早く返信することを心がけているそうです。
KIBACOWORKSさんは、接客の内容も参考になる点が多いです。チャットでは「友達とLINEをする感覚」を意識して、絵文字を使用しフランクな対応をすることで会話が弾み、質問だけでなく他にも抱えていた悩みを引き出しやすくなったそうです。顔の見えないECでも「中の人」との距離感を近く感じてもらうことにより、口コミやファンづくりにつなげたいということです。
さらに、問い合わせがきっかけになって商品化したアイテムが人気商品になることも多く、お客様のニーズを掴むためにも、コミュニケーションを取ることはサービス改善にとても役立っているといいます。チャネルトークの導入により、リピート率が従来から2倍になるなど、着実にファンづくりにつながっているとのことでした。
bot機能とスタッフの使い分けでパーソナルな質問に集中
韓国インテリアを取り扱うLittle Roomsさんでは、お客様ごとの疑問やお悩みが解消されるように、寄り添う姿勢を意識しているといいます。例えば商品に関するお問い合わせでは、チャット上で写真や動画を撮影し添付することで、文言だけではわからないような細かい情報を伝えられる工夫をしているそうです。
また、「私の部屋にはどんなアイテムが合うか」というような、コーディネートの相談も多く、お部屋の要素も伺いながら、理想を叶える提案をされています。こうした部屋作りのお悩みは、CS担当からコンテンツチームに共有し、部屋コーディネートコンテンツの作成に役立てています。チャット接客を始めたことで新たに需要を見出してスタートしたコンテンツだそうです。商品の詳細のお問い合わせには、同じ問い合わせが来ないようにするため、プロダクトチームと連携して商品ページのリライトや商品画像の追加などを行っているそうです。
さらに、bot機能でできる返答はbotに任せ、スタッフにしか答えられないパーソナルな質問に注力して、スタッフの存在価値を発揮できるように心がけているとのことでした。
購入後アンケートから顧客体験の向上につなげる
アパレルブランドを展開しているUNION TOKYOさんでは、ECサイトでお買い上げのお客様にチャネルトークの機能を活用し、数日後にアンケートを送っています。すると、あるお客様からネガティブなご意見をいただきました。「店舗を訪れた際に、売り切れの商品の在庫を聞いたところ、店舗での在庫のみ案内されたため、ECサイトでの在庫も案内してほしかった」という内容でした。
UNION TOKYOさんはこのようなご意見を活かし、店舗でのオペレーションの改善や、顧客体験の向上につなげることができたといいます。アンケートの送付という、お客様への積極的なアプローチがなければ、こうしたフィードバックや顧客体験の改善にはつながらなかったでしょう。
UNION TOKYOさんは、商品を買う前も買った後も感動してもらえることを大切にし、友達に紹介したくなるような体験を与えたいと考えています。そのために短期的な取り組みだけではなく、長期目線で顧客と関係を築くこと・実店舗のみならずオンラインの顧客体験にも注力をされています。
顧客の声が何よりも重要
ー改めて「チャネルトーク」はどのような理念を持ったサービスなのでしょうか。
チャネルトークはビジネスには顧客の声が最も重要だと気づいた代表が開発しました。チャネルトークの代表は4度の起業を行ってきました。仮想通貨関連のサービスや実店舗のデータ取得サービスなど非常にアイデアとして斬新でユニークなビジネスでした。
しかし、それらのビジネスは顧客から求められていたものではなく、自らのアイデアで先行してのサービス展開だったため、大きな成功を収めることはできていません。
このような過去の失敗から顧客の声を聞くためのツールとしてチャネルトークは生まれています。
顧客の声を社内が知ることこそ成長の要因
電話でもなくメールでもなく、チャットでのコミュニケーションが今の時代では一般的ですが、ビジネスにおいてはまだまだメール・電話でのコミュニケーションが多いです。しかし、LINE公式アカウントの活用、SNSのDMなどチャットで日常で活用するツールを通してお客様と会話する機会が増えてきています。顧客目線でも、ちょっとした質問をするのにわざわざ電話やメールをするのは億劫です。
ビジネスでもチャットコミュニケーションが当たり前になっていくでしょう。
顧客とラフにコミュニケーションを取ることができれば、次にその声を社内全体が認知することが大事になってきます。カスタマーサポート担当者だけが顧客の意見を知っているだけではサービス改善に活かすことはできません。
そのためチャネルトークは、社内で利用できるチャットを無料プラン・アカウント無制限で利用できます。SlackやChatworkのような社内チャットは毎日使うツールです。そこからワンクリックで顧客とコミュニケーションができれば、カスタマーサポートだけではなく、社長も商品担当も顧客の意見を聞くことができます。
顧客の声を聞く文化が根付いた企業こそ成長すると考えているので、社内チャットは重要な機能の一つなんです。
Simon氏のモチベーションは顧客中心のサービスを増やすこと
ーSimonさんはチャネルトークを通してどのような価値提供を行なっていこうと考えていますか?
前職では、スタートアップの事業開発支援などを行っていたのですが、クライアントのチャット導入を進めていく中でチャネルトークを知り、気づいたら中の人間になっていました。
スタートアップは他社と比べても特に事業成長をすることが重要です。そのため大胆な投資を行う必要がありますが、投資インパクトが大きい場所を見極める必要があります。その時に顧客の課題を理解できていないと成果が残せません。そのため顧客の声を聞くことのできるチャネルトークは、ECだけではなく、あらゆる企業に必要なツールだと感じています。
チャネルトークをより多くの企業が活用していただければ、社会にいい体験ができるサービスが増えると思います。顧客中心の企業が増えていくよう、今後も尽力していきたいですね。
ーそのために今はどのような施策を展開されているのでしょうか。
チャネルトークでできることもありますが、やはり1社だけではできないことも多いと考えています。そのため、チャネルトークの理念に共感してくれる企業とサービス連携をすることでコミュニティの輪を広げています。
最近では自社アプリを最短2週間で立ち上げることのできるAppifyと技術連携を行いました。17kg、UNION TOKYO、Ankerといった業界でも成長しているブランドのアプリへチャネルトークの導入も進んでいます。このような連携事例は今後も増やしていく予定です。
ー今後のサービスの展望について教えてください。
さらに深いコミュニケーションを実現できる機能を追加していく予定です。具体的には、ビデオ通話の導入やLINEなどのSNSとの連携、電話の対応などを検討しています。また、引き続き多くのECシステムと連携を強化することで、お客様のニーズが分かる状態を実現していきます。
どんなツールを活用するのか、ということは事業全体の中では小さいことだと思われるかもしれません。ですが、ツールの活用は、企業の文化を変える重要なものだと考えています。
チャネルトークを利用してもらうことで、お客様とのやり取りを手軽に綿密に行うことが可能です。お客様との距離が近づけば、お客様の悩みもわかってくる。そうすると、次に何をすればいいのかということがわかるようになります。
お客様との密接なコミュニケーションこそが、事業が成長していく一番重要なところだと捉え、チャネルトークの運用を行っています。ぜひEC事業者のみなさまにも、お客様との距離を近づけることで、お客様との親密な関係性を築いていただきたいです。
また、僕達と同じような考え方の方々ともっと仲良くなりたいなと思っています。顧客中心文化を構築していくためには考えに共感してくれる業界の方々、全員で行動する必要があります。
僕達やチャネルトークを導入した企業が急成長できたのは顧客中心文化に根付いた施策を行なっているからです。そこで培った考え方やノウハウは全てお話できます。
顧客中心文化が当たり前の考え方にするために、皆様の協力は欠かせません。
ぜひこの記事を読んでくれて、共感してくれた方はぜひSNSなどで感想を投稿してくれると嬉しいです。私たちと一緒に顧客中心文化を創り上げていきましょう!
ありがとうございました。