楽天がホームセンターやDIY関係者との会談開催 EC化率拡大、顧客体験向上へ
「楽天市場」を運営する楽天グループ(本社:東京都世田谷区)では、食品、生活用品、ファッション、家電、インテリアなど様々なジャンルの商材が販売されているが、それぞれのジャンルにおけるユーザーの購買体験を向上することを目的に、ジャンル別の売り場の改善を重ねている。そのアクションは、「楽天市場」のみならず、商材を取り巻く業界や市場そのものにインパクトを与えるケースも少なくない。今回はその一つとして、ホームセンター・DIYジャンルの強化に向けた取り組みを紹介する。
コロナ禍の影響もあり「おうち時間」の充実や働き方の変化を受けて、需要が高まるDIY関連の商材。一方、国内のEC化率は約9%(2022年8月経済産業省発表)であることに対し、ホームセンター・DIYカテゴリーにおけるEC化率はさらに低いとされている。その要因となる課題を解決して市場を底上げすべく、同社では「Rakuten DIY Summit(楽天ディー・アイ・ワイ・サミット)」の開催をはじめとした、さまざまな施策を展開している。ECコンサルティング部 ホームライフ事業課 シニアマネージャー大原麻奈実氏、同課マネージャー塚本愛彩氏に「Rakuten DIY Summit」の開催意図や今後の取り組みについて、話を聞いた。
DIYカテゴリーの課題はEC化率の低さ
──「楽天市場」では、各ジャンルの強化に取り組んでいるそうですね。
楽天グループ株式会社 ECコンサルティング部 ホームライフ事業課 大原麻奈実氏(以下、大原) 「楽天市場」では、現在約5万6千店舗が出店しており、約3.7億点(2022年11月末時点の登録商品数)が販売されています。個性豊かな店舗さんと数多くの商品があるなかで、ユーザー体験を一層向上し、お買い物をより楽しんでいただくために、楽天グループでは商品ジャンルごとに、商品ラインナップの強化や、売り場や売り方の改善に取り組むようになりました。現在は商品の拡充はもちろんのこと、新しいニーズの創出や購買プロセスのアップデートなどを含めた、広い視座のもと“ジャンルの深堀り”を行っています。
──ホームセンター・DIYカテゴリーも強化していらっしゃるそうですが、どのような背景があるのでしょうか。
大原 コロナ禍でECは全体的に定着傾向にありますが、ホームセンター・DIY関連商品においても、おうち関連需要の高まりとともに需要が高まっています。その一方で、人口減少に伴う市場全体の停滞や縮小予測については、業界における懸念として掲げられています。コロナ禍を経てユーザーの購買行動や手段が多様化するなかで、DIY・ホームセンターカテゴリーのEC化率向上については、業界全体における共通課題として認識されてきましたが、当カテゴリーのメーカー、卸業者、小売業者が顔をつきあわせて話し合う機会はありませんでした。業界全体を盛り上げるためには、横断的に課題を共有し合い、解決策を見出すことが必要不可欠と考え、2022年に立ち上げたのが、「Rakuten DIY Summit」です。ホームセンター・DIYカテゴリーにおけるさまざまな業態の事業者が一堂に会する場を設け、業界全体を盛り上げるきっかけづくりを提供することが最大の目的で、2022年10月20日に第1回を開催しました。
コーナン商事、コメリ、パナソニック、ボッシュ…一堂に会し業界の現状と課題共有
──「Rakuten DIY Summit」の概要について教えてください。
楽天グループ株式会社 ECコンサルティング部 ホームライフ事業課 塚本愛彩氏(以下、塚本) 小売企業やメーカー、ベンダーなどのホームセンター・DIY業界の関連企業と、有識者、楽天の3者で集まり、ECを中心としたテーマについて議論しました。「Rakuten DIY Summit」は1年間で計4回の開催を予定しており、第1回には「楽天市場」の出店企業8社、未出店企業5社、有識者2名に参加いただきました。
当日はまず、2023年にドイツで開催される「Global-DIY-Summit」(※1)における、アジア窓口の代表である後藤章夫氏(グローバル・ホーム・インプルーブメント・ネットワークアジア事務所代表)をゲストにお呼びし、「国内DIY市場の課題と海外成功事例から見た課題検討」をテーマにお話しいただきました。
アメリカやヨーロッパではDIYが文化として定着しており、ECの利用や店頭受け取りが普及しているとのお話は、改めて非常に興味深いものでした。「Rakuten DIY Summit」参加企業にとっても、日本におけるEC化率の低さや、DIY業界におけるデジタル変革(DX)の必要性を改めて認識する機会となり、続いて行われたパネルディスカッションとグループディスカッションでも、各業態の参加企業が現状の課題に対する認識を共有する良い機会となったのではないかと思います。参加された企業様からは、「各社のECに対する取り組みについて知る良い機会となった」、「共通の課題があったことがわかった」といった声をいただくなど、ホームセンター・DIY業界が抱える課題を解決できるよう連携し取り組んでいくことの重要性を感じていただけたと思っております。
具体的なアクションプランの策定は2023年1月18日開催の第2回のテーマに設定しています。国内企業の方にゲストとして登壇いただき、DXの具体的な施策と成功事例についてお話しいただく予定です。
※1:「Global-DIY-Summit(グローバル DIY サミット)は、ホームセンターおよび園芸用品業界の小売業者、メーカーを中心に、世界市場における現在および将来の発展について意見を交換する機会を持つグローバルイベント。2023年6月に第9回がドイツで開催される予定。
──参加企業はどのように募りましたか?
大原 業界においてマーケットシェアや認知度の高い企業を中心に、幅広くお声がけしました。広く名前の知られた大手ホームセンターや電動工具などの著名メーカーに参加いただき、課題を共有する有意義な時間となりました。
塚本 弊社がお声がけした企業から、問題意識を持つ他の企業にさらに声をかけていただき、輪が広がったことにも意義を感じています。最終的にはコーナン商事株式会社様や株式会社コメリ様、パナソニック株式会社様、ボッシュ株式会社様など名だたる企業様が集まり、参加された皆様に「よくこれだけの顔ぶれがそろった」との驚かれたほどです。
大原 国内のDIY市場の規模は約20年間横ばいを続けており、各業態の事業者は同じ悩みを抱えています。こうした現状を打破するカギこそ、ECを基軸としたDXであることを改めて確認し合う機会になったのではないでしょうか。サミットの目的であるビジネスアウトプットに向けて、これからも建設的な対話の場を提供していければと思っています。
to Bへの対応も拡充し、より良い購買体験を実現したい
──ホームセンター・DIYカテゴリーへの取り組みを、今後どのように充実させていきたいですか。
大原 楽天としてお手伝いできることのひとつとして、to Cだけでなくto Bの需要に対してもお応えしていきたいと考えています。そのためには現状の「楽天市場」のUIだけでは不充分です。支払い方法や物流面など、プロが購入しやすいスキームを整えていく必要があると感じています。
また、アメリカでは2018年時点で16%を超える消費者がECを利用している一方、先ほど申し上げたとおり、日本のEC化率は非常に低い現状があります。「楽天市場」におけるホームセンター・DIYカテゴリーでの販売を促進していくことは、この数字を引き上げることに貢献すると考えております。実店舗や自社サイトのみで売上に苦戦している事業者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ「楽天市場」への出店をご検討いただき、ともによりよいホームセンター・DIYカテゴリーの未来を作っていければと思います。
塚本 中でも特に、木材をはじめとする資材類は、ECの仕組み上、出品の難易度が高く、大きな需要があるもののEC化が進んでいません。こういったニーズに応えるための環境づくりも積極的に行っていきたいですね。
大原 ホームセンター・DIYカテゴリーのEC化率を引き上げることが、私たちの目下のミッションです。引き上げの結果として、充実した購買体験を実現していきたいと思います。2023年1月19日開催の第2回「Rakuten DIY Summit」では、ゲスト講演の部分をウェビナー配信していますので、ご興味のある方はぜひご視聴ください。
【第2回 Rakuten DIY Summit(楽天グループ株式会社主催 全4回)】
「DIY市場創造サミット-Do Innovate yourself-」
~DIY市場の活性化に向けた施策検討ディスカッション~
開催日時:2023年1月19日(木)13:00~14:30
第2回テーマ:「DIY/ホームセンター業界のデジタル施策(DX)の取り組み事例」
<登壇予定>
株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア ダイヤモンド・ホームセンター編集長 髙浦 佑介 様
株式会社大都 代表取締役 山田 岳人 様
株式会社グッデイ 代表取締役社長 柳瀬 隆志 様
トラスコ中山株式会社 取締役 経営管理本部長 兼 デジタル戦略本部長 数見 篤 様