ダンボール通販のパイオニアが明かす“ECに効くダンボール”とリピーター獲得の仕組み 【アースダンボール セミナーレポート】
大切な商品を包むダンボールはEC事業において欠かせない資材。そのダンボールのインターネット販売を1996年、日本で初めて開始したのが株式会社アースダンボールだ。自社による製造・販売を強みに時代を切り開いてきた同社が考える“ECに効くダンボール”とは? ECのミカタ主催のカンファレンスで「ECに効くダンボール2.0! ダンボール通販パイオニアのBtoB-ECへの挑戦」と題して行われた同社 代表取締役社長 奥田敏光氏と、ECのミカタ 吉見紳太郎とのパネルディスカッションをレポートする。
創業70年、日本で初めてダンボールのWeb通販を開始
1953年に奥田製作所として創業した株式会社アースダンボールが、ダンボールのWeb通販用サイトを立ち上げたのは1996年。それ以降も同社は、欲しい箱のサイズを入力するだけで最適な材質などが選べる「全自動見積り」や超高速フルカラーインクジェット印刷「ミラプリ」サービスを日本で初めてスタートするなど、豊富な実績と高い技術力に裏打ちされたソリューションを数多く実現してきた。2024年9月26日、BtoB-ECをテーマにECのミカタが開催したカンファレンスでは、同社 代表取締役社長の奥田敏光氏がEC売上アップに貢献するダンボールの可能性、そしてリピーターを獲得し続ける仕組みを語った。
MIKATA株式会社 事業本部 情報システム開発部 リーダー 吉見紳太朗(以下、ECのミカタ 吉見) まず、ダンボールのECサイトを始めた経緯について教えてください。
株式会社アースダンボール 代表取締役社長 奥田敏光氏(以下、アースダンボール 奥田) 自分でWebページを作ることができましたので、社内にあった無地の在庫品を売るためのごく簡単なサイトをとしてスタートしました。1996年はEC自体がまだそれほど普及していなかったので、本当に実験的に始めたというのが実際のところですね。
ECのミカタ 吉見 楽天市場のオープンが1997年ですから、本当に早い時期に始められたんですね。2000年には、早くも独自の「自動見積り」のWebサービスをスタートしています。
アースダンボール 奥田 2000年くらいからインターネットの普及に伴ってEC事業者様が増えてきたという背景があります。元々社内で使っていた原価計算システムがありましたので、それをやや簡略化し、お客様がWebで寸法を入れるだけで簡単に値段が出せるシステムを作ったんです。ただ開始当初は反応が少なくて、時々注文が入るという程度のスタートでした。
その後もWebサイトの使いやすさや製造技術を進歩させつつ、2011年に新型アニロックスロール(※1)を使った「GTTテクノロジー」を導入、2018年には日本初の「ミラプリ」サービス(※2)も開始しました。お客様の要望を高いレベルでかなえるために、より美しい、こだわりの印刷ができるようにしましたね。
受け取り手の“感動体験”でダンボールをマーケティングツールに
ECのミカタ 吉見 さまざまな技術を生み出してきたわけですが、次はそれを活かした商品開発についてお伺いします。ダンボールの印刷というと以前は単色でシンプルなデザインというイメージでしたが、アースダンボール様では、非常に多彩なデザインのダンボールを数多く商品化されていますね。
アースダンボール 奥田 ECが広まるにつれて事業者間の競争が激しくなり、Webにおける広告費も高騰しています。そうした中で「ダンボールがマーケティングツールとしても役立つのではないか」と考え、当社では2023年に独自のアンケートを行ったんです(※3)。その結果、受け取った人を感動させる“特別なダンボール”を活用している業者は16%ほどだったものの、特別なダンボールに感動した方の約85%が「その商品・ショップから再購入したい」と回答しているんです。つまり、ダンボールはただ荷物を運ぶためのものではなく、お客様からのリピート注文を増やすツールにもなりえることがわかったんです。製造・印刷技術の進歩によって、受け取ったお客様の感動体験になるような箱が作れるようになりました。届いたときに感動するパッケージを使うことで、消費者の方がSNSで発信してくれて、それが売上向上につながることもありますね。
ECのミカタ 吉見 こうした技術的に高度な印刷への取り組みも、社内で行われているんですか?
アースダンボール 奥田 弊社では10人ほどいる営業担当が現場と直接つながっていますので、難しい相談でも返信がすぐにできるのが大きな強みです。また弊社ではサイズの異なるいくつかの商品を一つにまとめて同梱で送るカートシステムになっていますので、何個購入されても1個分の送料でお送りできることも強みですね。実はこれ、カートの仕組みとしてはかなり複雑なんです。
リピート注⽂を獲得し続ける仕組みづくり
ECのミカタ 吉見 事業者様からリピートで注文し続けていただくために、独自の数量計算ロジックで価格が表示されるシステムも作られていますね
アースダンボール 奥田 量産することで単価は下がるわけですが、当社ではきちんと原価計算をしたうえで枚数に応じた価格を自動計算したグラフがWebページに表示される仕組みです。商品ごとの適切な価格をユーザー様自身が判断できますので、それがリピート注文につながっていると思います。また、ダンボールは材質によって強度が変わりますが、弊社の「広告入りダンボール」という商品は、同じ厚さ3mmのダンボールでも同業他社の素材よりも3割ほど強度の高いものを使っているため、他と比較して「アースダンボールの箱は強くて良い」という声もいただいています。
ECのミカタ 吉見 強度の違いを実感されてリピート注文されるお客様も多いんですね。技術が進化すると、お客様からデザイン面でも「今度はこうしてみたい」といった要望が多くなると思うのですが、それに応えるためにどのような工夫をされていますか?
アースダンボール 奥田 弊社のサイトのツールを使えば簡単にWeb上でデザインを作っていただけます。Illustratorなど(のソフト)をお持ちでない方でも、写真を貼り付けるなどの方法でお客様のイメージ通りにデザインでき、インクジェットで印刷できるのが特徴です。またダンボールはサイズによって適切な厚みや形があるのですが、希望するサイズや色などを入力することで、人気の9種類の箱形式が価格順に表示され、ぴったりのダンボールがレコメンドされる「ダンボール箱 比較オーダーメイド」という機能もあります。
ECのミカタ 吉見 サイトには「ダンボール箱AI検索」などもあって、配送業者などかなり細かく条件を絞り込んで検索できるようになっていますよね。
アースダンボール 奥田 はい、60サイズだけでも1900種類くらいありますし、実際に在庫品になかったとしてもお客様が希望している箱の見積を自動生成する機能もあります。それ以外にも、お客様の注文履歴から必要と思われるタイミングでお知らせメールを出すなど、リピート注文に関しては非常に多くの仕組みを用意しています。毎週のように買われる方、100回以上買っていただいている方もいらっしゃいますし、1年以上期間をあけて買われる方もいらっしゃいます。購入頻度はさまざまですが、「いつ買いにきても買いやすい」仕組みこだわっています。
ECのミカタ 吉見 ありがとうございます。最後に、今後の展開をお聞かせください。
アースダンボール 奥田 当社の場合、自社の売上アップを目指すというよりも、お客様に喜んでいただくことによって事業の社会的な価値を高めていくことを目指しています。ですからゴールは、お客様の幸せにフォーカスできる会社になること。そのために、ダンボールのレベルをもっともっと高めていきたいと思っています。
※1:「新型アニロックスロール」…細かく繊細な印刷とベタ印刷の盛りという相反する課題を解決した技術。詳しくはアースダンボール公式サイトを参照
※2:「ミラプリ」サービス…フルカラーの印刷を直接ダンボールに格安にデジタル印刷できるシステム。詳しくはアースダンボール公式サイトを参照
※3:「通販商品開梱に関するアンケート調査」/調査方法:インターネット調査/調査期間:2023年8月17日/調査対象者:全国 20代~50代の男女/有効回答数:1000サンプル(性年代別に人口割合を基に均等割付)/モニター提供元:アイブリッジ株式会社